<新型コロナとメディア>現状を「何とか持ちこたえている状況」とする御用機関 -植草一秀

政治経済

植草一秀[経済評論家]

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政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が、「何に関しての専門家」であるのかを知っておく必要がある。コロナウイルスの感染が拡大している。

この専門家会議が2月24日に、「これから1、2週間が(感染が)急速に進むか収束できるかの瀬戸際となる」とした。3月9日で、専門家会議が示した「瀬戸際の1、2週間」が満了になった。「瀬戸際」を通過したのだから、どちらのコースに進んだのか、結論が示されなければおかしい。しかし、結論は示されていない。

3月9日の専門家会議で、「国内での爆発的な感染拡大は進んでおらず、何とか持ちこたえている状況」と報告されたと報じられている。まったく腑に落ちない。

安倍内閣はPCR検査を拡大していない。韓国では1日当たり1万件のペースでPCR検査を実施した。日本では1日当たり1000件のペースだ。つまり、爆発的な感染拡大が生じているのかどうか、判定できないのだ。

「瀬戸際の1、2週間」という言葉だけが広まったが、そもそも、この言葉に科学的な裏付けがあるのか。安倍首相は「これからの1、2週間が瀬戸際」という言葉を2週間にわたって使い続け、2週間が経過しても、この言葉を使っていた。「専門家会議」は、「政府の特殊な事情を忖度する専門家」会議であり、「各種利権を守る専門家」会議ではないか。

安倍内閣は会議を前面に押し立てているが、実際には安倍内閣が、自分の都合に合うことを専門家会議の衣をかぶって言っているだけだ。だから、専門家会議の提示することが支離滅裂なのだ。

政府の諮問会議なるものはすべて同じ構図だ。メンバーには政府がコントロールできる人物しか配置しない。メンバーは政府の命令通りに発言することを求められる。その代わりに、メンバー個人、あるいはメンバーが所属する機関に見返りの財政支援などが行なわれる。

「専門家会議」に与えられた役割=ミッションは次の三つ。

第一は、五輪開催を正当化する流れを創り出すこと。

第二は、PCR検査を徹底して抑制すること。

第三は、メンバーが所属する機関が利益を得ること。

この三つを軸に動いている。「国民の命と健康を守る専門家」会議ではない。安倍内閣の「専門家会議」だから、そもそも信用できる存在でない。PCR検査拡大を訴えてきた上昌弘氏のテレビ出演が減少していることの意味を考えるべきだ。

唯一、正論を堂々と述べていたのが上昌弘氏である。安倍内閣はテレビ各局に、上氏を出演させないように圧力をかけていると推察される。テレビから排除される者こそ、正論を提示する者である。

専門家会議副座長の尾身茂氏(独立行政法人地域医療機能推進機構理事長)がPCR検査を広範に実施しないことについて、次のような弁明を示している。

「国内で感染が進行している現在、感染症を予防する政策の観点からは、すべての人にPCR検査をすることは、このウイルスの対策として有効ではありません。また、既に産官学が懸命に努力していますが、設備や人員の制約のため、すべての人にPCR検査をすることはできません。急激な感染拡大に備え、限られたPCR検査の資源を、重症化のおそれがある方の検査のために集中させる必要があると考えます。」

これはPCR検査を感染研等が独占するための口実にすぎない。メガファーマが提供する資材等を活用すれば韓国並みの検査能力を確保することは直ちに可能なのだ。専門家会議メンバーの利権確保と安倍内閣の感染者数偽装の要請がマッチして、支離滅裂な方針が提示されているのだ。その結果、PCR検査が広範に実施されず、感染の実態を掴めないという最悪の状況が生じている。

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