<今すぐやるべきは4つのこと> 専門家会議副座長が国会で新型コロナ緊急提言

両角敏明[元テレビプロデューサー]

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3月10日の参院予算委員会・公聴会で新型コロナウイルス対策専門家会議・尾身茂副座長は居並ぶ国会議員に向かってきわめて異例の呼びかけをしました。それは政府からもメディアからもあまり語られなかった現実であり、緊急かつ全力で実現しなければ怖ろしい災禍が襲いかかってくるというリアルな警告でもありました。

以下は尾身氏の発言をくり返し部分や口語の乱れなどのみを筆者が整理した全文です。さほど長い発言ではありませんので、この部分は是非ともお読み下さい。文字強調は筆者です。

これから長期の見通しの中でオールジャパンとしてやるべき事は4つあると思います。

1つは、クラスター、これは厚労省にクラスター班がありますし、それよりももっと多くの保健所関係の人、自治体の人がクラスターサーべーランスというか、クラスターが起きた時の接触者の追跡とか、これに対してかなりの能力とエネルギーとを使って、ある意味では関係者は夜を日に継いでいるので疲弊をしている状況があります。これは間違いのない事実でありますので、クラスターを早期発見してクラスター感染の連鎖を早く摘むということですけれども、この対応が長期間にわたって持続できる体制の急務、人の補充あるいは財政的な補充が非常に必要だと思います。

2番目は保健所について。やはり保健所の職員はもう目一杯になっておりますので、労務負担を軽減すべく、帰国者接触者相談センターの機能については保健所以外の担い手を求めるなど、早急に人的財政的支援を講ずるべきだと思います。

[参考]<姑息な罠と罪深き罠>2月29日新型コロナ対策記者会見

3番目ですけれど、このコロナとの戦いの主要な戦力は現場であります。現場でありますので、地域公共団体や保健所の広域での連携、時には県の枠を越えての、あるいは市町村の枠を越えての広域での連携、それから情報共有がきわめて重要であります。どういうリンクがあったのか、追えなかったのか、という情報をすぐに、いまもやっていただいてますけど、さらに迅速な情報共有が必要だと思います。

4番目、最後ですけど、これから感染の更なる拡大がおこる可能性が否定できないわけですから、それに準備するためには医療提供体制、今のままではもうすでに感染者でいっぱいになってしまいますので、この状況で対応するためには、一般医療機関や診療所を選定し、すべての診療所でやれば院内感染をおこして患者に感染が来るだけではなくて、医療者に感染を起こすこともありえるので、ここは私は感染の治療にあたる医療機関や診療所を早く選定して、その選定したところにはいろんな支援、財政的、あるいは医療器具、マスク、そういうものをしっかりと供給する必要があると思います。

尾身氏はこう訴えて、居並ぶ国会議員に緊急の対応を訴えたのでした。これをメディアや政治家、関係者がほとんど取り上げないのが不満で寄稿しました。よって、ここまで読んでいただければこの稿の役割は充分ですので、以降の拙稿はどうでも良いのですが、多少の補足を書かせていただきます。

尾身氏は冒頭で『長期の見通しの中でオールジャパンとしてやるべき事は4つ』と言っていますが、これは「4つのやれていない事」の指摘であり、そのうちの2つは保健所をはじめとする現場崩壊への憂慮です。

「疲弊、これは間違いのない事実であります」

「職員はもう目一杯になっております」

この素朴な言葉に強い怖れが滲んでいます。

保健所は健康や病気の指導相談、母子健康、動物、産業廃棄物・水質汚染、感染対策など幅広い職掌を担います。関東圏のある県の保健所の感染症対策部門は100名以下、同県政令指定都市の保健所の感染症担当者は20~30名程度と言います。これに契約スタッフや緊急に他部署からの応援を得てコロナ対応にあたっているようです。平時でも要員不足である保健所への負荷は尋常ではありません。

尾身氏は「クラスターが起きた時の接触者の追跡」をあげていますが、実は膨大な相談に対応する「帰国者・接触者相談センター」の実体は保健所ですし、PCR検査を「帰国者・接触者外来」と調整しているのも保健所です。PCR検査で採取した検体を検査機関へ運搬するのもすべて保健所職員だというのですから驚きです。これでは長期戦は無理です。感染が拡大すれば崩壊することが目に見えています。尾身氏の「疲弊/目一杯」という訴えは、これまで手を打っていない政府への抗議とも受け取れます。

素人の愚案ではありましょうが、クラスターの追跡調査は消防や機動隊を含む警察に、検体運搬は訓練の上、日通やヤマト運輸、あるいは日々病院を回って検体を運んでいる民間検査機関に委託してはどうでしょうか。相談センターの機能移管についても、政府なぜ手を拱いているのか・・・。

尾身氏の訴える3番目、4番目については、こんな事が未だに準備されていないのか、というべき事柄です。

(3)時には県、市町村の枠を越え広域での連携、情報共有

(4)治療にあたる医療機関や診療所を選定し、財政的支援、医療器具を供給

専門家会議から見ても、こんな基本中の基本ですら政府が手を打っていないように見える現状で大丈夫でしょうか。後手後手が過去ではなく現在進行形ならば、いくら抑制的で賢明な日本人でもやがてパニックが起きます。

これまで政府方針と政府の専門家会議の主張には一定のズレがあるとお感じになりませんか。安倍総理は専門家会議を無視してエイ!ヤー!と重大決定をしているように見えます。

総理が全国規模のイベントなどの自粛を求めたころ、専門家会議はライブハウスなどの人の集まりについて要請してました。総理が一斉休校を要請したころ、一斉休校には反対しなかったものの専門家会議が強調していたのは若者、成人層へ「換気が悪く、人が密集し、近距離で発声や会話をする」場所を避けて欲しいというお願いでした。これはいまも変わりません。

政府の意志決定プロセス、指示系統ははっきりせず、国民への要請内容も曖昧、PCR検査体制の拡大や実施数もいつまで経っても伸びません。病床確保も心もとなく、マスクは不十分、マスクの転売禁止ですら今週になってからというのですから・・・。

万が一、感染拡大で混乱した時に政府への信頼がないと混乱が爆発し、大きな混乱は甚大な二次被害を呼びます。政権に対する国民の信頼こそ重要な新コロナ対策です。もう、安倍さんにとっては政権の最終章に入っている事は間違いないのですから、この国難に全智全能をかたむけて取り組み、結果として多くの国民の命を守った宰相として歴史に名を残すべきです。

その信頼を得るためには、検察庁人事を取り下げ、桜を見る会問題についてホテル明細書や招待者リストを公開して真摯に謝罪し、『責めは負うから、このウイルスとの戦いについては私を信じて欲しい』と訴えれば、誠実な安倍総理を国民は信頼し、一丸となってこの国難に立ち向かうに違いありません。そして安倍総理は未知のウイルスと果敢に戦った宰相として近代史に名が残るはずです。もはや人柄が信頼できない総理の「やったふり」ではあなたの美しい国は壊れかねません。(3/13記)

 

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