五輪と共に去りぬ菅内閣の五輪終 -植草一秀

政治経済

植草一秀[経済評論家]

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東京都の新規陽性者数が8日連続で前週比で増加した。コロナ新規陽性者数は明らかに増加に転じている。菅内閣は3月21日に緊急事態宣言を終了させる姿勢を示している。3月25日に五輪聖火リレーが開始されるのに合わせた措置だ。五輪開催を強行して衆院総選挙に臨む。これが菅内閣のプランAである。しかし、このプランAが瓦解する可能性は低くない。筆者のブログ、メルマガで繰り返し指摘しているように、コロナ新規陽性者数変化は人流の変化に連動している。

人流の拡大は会食機会等の増加をもたらす。会食機会等の増加が新規陽性者数を増加させる。1月に感染爆発が生じたのは菅内閣がGoto事業を全面展開したからだ。菅首相は12月28日までGotoトラベルを止めなかった。その結果として順当に新規陽性者数が激増した。感染爆発を引き起こしてしまい、首都1都3県の知事に要請されて緊急事態宣言を発出した。

政策失敗は明らかだ。

この失敗を糊塗するために、姑息な対応が取られているが、肝心の基本的対応で失敗を続けている。

12月に英国で変異株が確認された。この時点での最需要事項は変異株の国内流入を防ぐことだった。ところが、菅首相は水際対策強化を妨害した。12月28日に水際対策を発表したものの内実を伴わぬザル対応を示した。外国人入国の太宗を占めるレジデンストラック、ビジネストラックの入国を止めなければならなかったが、菅首相は1月13日まで停止に反対し続けた。

結果として変異株が日本国内に流入してしまった。

緊急事態宣言発出で12月末から1月末まで国内の人流が低水準で推移した。しかし、緊急事態宣言の解除が取り沙汰されるようになり、2月中旬以降、人流が再拡大した。3月中旬以降、新規陽性者数が再拡大する可能性が高いことを、筆者のブログ、メルマガで警告してきたが、その通りの現実が生じている。

実は厚生労働省は1月22日に自治体に対して発した通達で、コロナ新規陽性者数が少なく発表される小細工を行った。自治体に対して「プール方式」で行うPCR検査を公費負担することを通達したのに合わせて、PCR検査の判定に関わるCt値を引き下げることを通達した。Ct値を引き下げると陽性判定される数が減少する。東京五輪開催に向けて、新規陽性者数が少なく発表されるための小細工を施したと見られる。検査方式を変更すれば統計の連続性を確保することができない。少なくとも数値発表に際して、検査方式変更を公表する必要がある。ところがその説明が行われていない。

それでも、3月中旬から新規陽性者数が増加に転じている。人の移動状況を示す指数は2月20日に急増したあと、3月上旬にかけて横ばい推移を続けている。「緊急事態宣言」延長によって、辛うじて人流の急拡大が防がれているのが現状である。3月下旬を迎えて、人流が季節的に拡大する時期に差し掛かる。このタイミングで緊急事態宣言が解除されれば、人流が急拡大することを避けるのは難しいだろう。

人流拡大が新規陽性者数増加となって表出するのは3週間後。4月中旬に明確な感染第4波確認に至る可能性は低くない。

菅内閣は五輪聖火リレー開始を強行して五輪ムードを煽ろうとしているが、この政策対応が4月、5月の新規感染者数急増をもたらすリスクが高い。菅内閣は有観客で五輪を開催しようとしているが、400万人が2週間の間に東京を目的地とする旅行を行う。Goto感染爆発になることを避けがたい。五輪終了とともに日本が「五輪終」というのでは笑い話にならない。

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