<都内最大級の若者スポット「靖国神社」>なぜメディアは靖国神社の盛り上がりを報道しないのか?

政治経済

藤本貴之[東洋大学 准教授・博士(学術)]
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芸能人がプライベートで訪れる場所、というのは昔からある。レストランだったり、カフェだったり、アミューズメントパークだったり、それは様々だ。どんな場所であれ、それを目撃するために、ファンや野次馬、場合によってはメディアまでもが集まってくることも珍しくない。
夏のイベントと言えば、「花火」や「お祭り」であるが、芸能人がお忍び(?)で訪問する場所としてもメッカだ。例年、芸能人がプライベートで訪れる「お祭り」の代表格と言えば8月に開催される「麻布十番納涼祭」(2014年8月23日、24日)などがある。六本木からほど近い、いかにも芸能人が出没しそうな立地から、毎年多くの芸能人とそれを撮影するためのメディアもおしかける。ジャニーズ事務所のタレントが数多く訪れることでも有名なお祭りである。
そんな「麻布十番納涼祭」に負けず劣らず、というよりも、盛り上がりではそれを近年凌駕しているお祭りがある。靖国神社の「みたままつり」(2014年7月13〜16日)だ。今年も「みたままつり」での芸能人の目撃報告が多数なされた。
いづれも都内最大級の動員を誇る夏祭りではあるが、「みたままつり」が日本古来の盆行事に因んだ伝統的なイベントであるにも関わらず、他の「夏祭り」よりも圧倒的な動員数、特に高校生・大学生をはじめとした若い来場者が多いことに驚かされる。A級戦犯の合祀だ、軍国主義の象徴だ、などと散々騒ぎ立てられているにも関わらず、だ。むしろ、都内で最も若者たちで盛り上がる夏のスポットこそ、靖国神社であり、「みたままつり」であることは間違いないだろう。
しかし、いわゆる「靖国問題」によるメディアの自主規制か偏見のようなものがあるのだろうか、「夏に若者たちが集い、盛り上がる靖国神社」が積極的に報道されたり、肯定的に注目を集めることはあまりないように筆者は思う。30万人とも言われる来場者たちが、「みたままつり」の意味をどれだけ理解しているのかはさておき、夏に若者で盛り上がる最大級のイベントの一つが靖国神社である、という揺るがしがたい現実。これはもう少し肯定的に紹介されても良いはずだ。
例年、「みたままつり」に政治家や大臣が提灯を奉納した・しない、参拝をした・しない、玉串料を納めた・納めない…等々が話題となる。残念ながら、これらはいずれもマイナスの話題であり、ネガティブな報道だ。だからこそ、普段、靖国神社を政治や国際問題の争点としか見ていない人たちが「みたままつり」に来ると、その感覚は一変させられるはずだ。
それは、8月15日の終戦記念日での参拝も同様だ。あたかも厳つい右翼団体や保守政治家たちだけが集まる特殊な空間のように思っている人は多いが、参拝者は実に多様だ。もちろん、厳つい(?)参拝者も少なくはないが、それ以上に若い男女、親子連れなど、ごくごく普通の参拝も多い。昇殿参拝の列にも若い人は多い。
しかし、そういったポジティブなことがメディアに大きく取り上げられること決して多いとは言えない。
戦没者の慰霊に幅広い年齢層の人たちが大勢集まり、夏祭りには都内最大級の若者スポットとなる靖国神社。これはねつ造報道でもなければ、誇大宣伝でもプロパガンダでもない、まぎれもない事実だろう。
だからこそ、我が国は、この場所を政争の具として利用されることを明確に拒否し、むしろこの事実を世界に向けて積極的に発信してゆくことが、効果的な情報発信戦略であり、日本ブランディングにとって重要なのではないだろうか。
 
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