<決定版・欽ちゃんインタビュー>萩本欽一の財産(30)「欽ちゃんが使う笑いの形は5種類」


高橋秀樹[放送作家]

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今まで大将(萩本欽一)が話してくれた「笑いの形」を、僕なりにまとめると5種類ある。これは全部欽ちゃんがテレビや舞台で使いこなしているギャグで、ほかにも笑いの形はいくつかあるだろう。

 

①テレビや映画のギャグ

たとえばこうだ。

◯おでんの屋台

客「がんもちょうだい」

店主「ハイ、たしかあります」

と、アクアラングつけておでんの屋台の中に潜っていく。

「カット変わりで、オチがつけられるギャグ。意外性が強くないと笑えない。

まあ、笑うっていうより、びっくりするだなあ。これと勘違いして作家になったばかりのやつが必ず書いてくるのがある」

 

◯公園、男Aが地面に這いつくばって何かを探している

B「(通りかかって)何かお探しですか」

A「新宿2丁目」

「これはただの『まちがい』で、笑いじゃない。『失敗したい人』をやっちゃってる。『失敗したい人』じゃなくて『失敗しちゃった人』をやらなきゃ笑いにならない。ギャグを置きに行くって言うんだ、そういうの」

「世の中に6人くらいはいるなあ、ていう線を狙わなきゃ」

「テレビのギャグはみんな、こればっかり。成立するときはあるよ、編集で」

 

◯植木等さんの「お呼びでない」谷啓さんの「がちょーん」

「これはわかるよね、ギャクがおもしろいんじゃなくて植木さんや谷さんがおもしろい。演じている人の『可笑しみ』だ。哀愁なんかあると可笑しいよこれは」

 

②しゃべりやセリフのギャグ

「代表的なのはダジャレだなあ、浅草じゃ絶対禁止。でもテレビでは使うときはあるよ。大人には馬鹿にされるけど、子供は受けるよ、子供の視聴率もテレビじゃ大事だからね。大人の笑いに混ぜて使う」

 

③フランスコント

◯公園、ジュース売りがやってくる。

ジュース売り「オレンジジュース、アップルジュース」

と、売っていると、つまづいてジュースが混じってしまう

ジュース売り「ミックスジュース」

と、売りながら去る

「短いコントだ、中幕前なんかでやる。フランス発祥って言われてる、長くはやらない。だから、ストリップ劇場で踊り子さんのショウの間をつなぐのには使えない」

 

④コント55号のギャグ

「動きのギャグだ、徹底的に、浅草三大コントの分類で言うと『天丼』と『◯△(まるさんかく)』が多い。ボケ(こなし)は普通の人、突っ込み(振り)は居なそうで居て、居そうで居ない程度の異常な人。最初二郎さんが突っ込みで。俺がボケだったんだけど、一回だけ演ってすぐ、チェンジした。浅草で修行した人はどっちもできるように鍛えられるから、出来るんだ。」

 

 ⑤浅草軽演劇のギャグ

「ストーリーがある芝居のギャグ、時代劇をベースにしたものが中心だった『国定忠治』『瞼の母』『一本刀土俵入り』明治物では『金色夜叉』時代劇のパターンは全部長谷川伸さんが書いちゃったなあ」

僕「長谷川伸全集持ってます!」

「役に立たなかったねえ」

軽くいなされる。

「さっきも言ったけど、浅草の軽演劇の人はボケもツッコミもできるように修行した。でも受けるのは、人気ものになるのはボケの方だ。だから、みんなボケをやりたがった、最後は年功序列で決まる、若い奴がツッコミで、先輩がボケ」

大将は、少なくても、これら5種類の笑いを臨機応変にテレビに放り込んだのである。明治座で主演・演出を担当した時は[④コント55号のギャグ]と[⑤浅草軽演劇のギャグ]が入った。

「この2つは、明治座みたいな客のたくさん入る大きな舞台では力を発揮するんだよ。1と2と3はテレビだから成立する」

 

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メディアゴン 編集部

メディアゴン編集部(めでぃあごんへんしゅうぶ)2014年5月末日、東京生まれ。メディア批評・メディア評論に特化したメディア専門家によるメディアニュースサイト。キー局プロデューサー、ディレクター、イベントプロデューサー、放送作家、大学教授、評論家、ゲーム作家、弁護士・・・などなど、メディアの第一線で活躍する人材が活動中。