<非正規雇用は工場の原材料費と同じ>雇用が100万人増えても、正規雇用が20万人減では本末転倒

政治経済

藤沢隆[テレビ・プロデューサー/ディレクター
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いよいよ選挙ですね。アベノミクスに対する国民の評価を問うのだそうです。
まずは円高誘導など、いろいろな手で企業に競争力をつけて儲けさせ、儲かった企業には雇用増と賃上げを求め、雇用が増えて賃金が上がれば個人消費も伸びて好景気になるのでメデタシメデタシ・・・というのもアベノミクスのひとつの側面だそうです。
安倍首相はドヤ顔で、「今春闘では賃上げ企業も増えたし、最近の統計では雇用も100万人以上増えている」など言っています。でも、消費税UPで増えてしまった家計支出をカバーするほどには賃金は上がっていませんし、雇用が増えたと言っても「いわゆる非正規雇用」が大幅に増え、逆に正規雇用は20万人も減っているのが実態です。
放送業界の現場には、「いわゆる非正規雇用」の方々がたくさんいます。局の正社員の高給と、「いわゆる非正規雇用」スタッフの給与とは「トレードオフの関係」(何かを達成するために別の何かを犠牲にしなければならない関係)にあると言ってもまんざら見当違いでもないでしょう。
一般に、会社にとって正社員の給与は固定費です。固定費は、会社の売上げや利益に関係なく固定的に発生する費用です。業績が悪化しても、正社員の賃金を下げるのは難しいので、賃上げには慎重にならざるをえません。しかし、正社員こそ会社そのものであり、この人たちの給料が上がらなければ幹部や経営陣の給料も上がらないことになりますので、正社員の賃金はできるだけ上を目指します。
一方で、派遣スタッフの費用や契約社員、業務委託の費用は変動費です。変動費は基本的には低ければ低いほど良いということになります。また、変動費は仕事の量に応じて増減します。生産量が多ければ膨らみますが、生産量が減ればその分減らされます。そういう意味では工場に於ける原材料費と同じです。
ですから、こうした「いわゆる非正規雇用」の人たちは、期間を定めた雇用です。生産の見込みのない原材料をいつまでも買い続けるわけにはいきませんから。もちろん正社員は期間を定めない雇用で、労基法などにより事実上65才ぐらいまでは雇用を保障されます。
雇用期間を別としても、放送業界における、正社員と「いわゆる非正規雇用」の人たちの処遇には大きな差があります。以前、ネット上にこんな話が出て注目されたことがありました。
日本テレビ『スッキリ!!』の飲み会で、レギュラーであるテリー伊藤さんがアナウンサーの葉山エレーヌに、

「お前はADの気持ちなんてわからないだろ」

と説教したのです。
この話について、次回の記事で書いてみたいと思います。
 
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