<西暦と元号の整合性>忠臣蔵・赤穂浪士はいつ「討ち入り」したのか?


藤沢隆[テレビ・プロデューサー/ディレクター

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西暦2014年12月14日は衆議院選挙投票日です。そして、その12月14日は「忠臣蔵」でおなじみの「赤穂浪士の討ち入りの日」でもあります。

さて突然ですが赤穂浪士が吉良邸に討ち入ったのは西暦何年のことだったでしょうか?

自由社版『新編新しい歴史教科書』には「1702(元禄15)年12月14日、赤穂藩(あこうはん)の浪士が江戸の吉良邸(きらてい)に討ち入りし」とあります。さらに赤穂浪士の地元赤穂市の観光案内サイトによると討ち入りは、元禄15年(西暦1702年)12月15日となっています。

14日と15日の違いがありますが、これは14日深夜とするか15日早朝とするかの違いだけで、両者とも1702年12月14日から15日にかけての夜中に討ち入りは行われたとしています。

一方で、討ち入りの元禄15年12月14日は西暦1703年1月30日という記述も多く見られます。この違いはもちろん太陽暦と旧暦(月の満ち欠けを基本にしてひと月が29日ほど)との違いから生じたものです。

単純に合理性だけから言えば、元禄15年12月14日を西暦1702年とするのは疑問です。それにしても討ち入りが年が明けた正月の出来事というのでは気分が出ませんね。「なにもおめでたい月にそんなことしなくても・・・」と言われそうです。

上記の教科書も赤穂市役所も、西暦をうっかり1年間違えたわけではありません。“元禄15年は1702年”、という表記をしているのだと思います。元禄15年の1月1日から11月13日までは西暦1702年ですから元禄15年の大部分が西暦1702年です。大部分が1702年なら、いっそ旧暦のその年の年末までを1702年としてしまった方がわかりやすいだろうという、けっこうゆるい考え方をしているのが日本の教科書なのです。自由社も赤穂市役所もその考え方に従っているのでしょうね。

しかし、科学的合理性にやや問題があるこの西暦表記ですので、お悩みの方も少なくありません。

高知県立・坂本龍馬記念館では、坂本龍馬の生誕日を天保6年(1835年)11月15日と表記していることを「誤りではないか?」と指摘され、サイト上でこう回答しています。

「確かにご指摘の通り、本来は天保6年11月15日(1836年1月3日)と表記する方が正しいと思います。天保6(1835)年11月15日と表記することに違和感も感じておりました。現在の当館の表記は、和暦が西暦でだいたい何年なのかが分かれば良いと捉えており、一般の方が混乱しにくいように天保6年=1835年と表記しています。全ての教科書を見たわけではないですが、歴史の教科書も和暦と西暦は単純な変換になっていると思います。当館も教科書と同じように表記するようにしています。」(筆者要約)

実はこの和暦の西暦表記問題は教科書編集者も、長年続けてきた表記法を変えることは難しく、かと言って教科書が必ずしも正確ではないというのは・・・と忸怩たる思いでいるようなのです。教科書検定ではけっこう口をはさむ文科省もこの問題に関しては学会の判断することとして様子見のようです。(それが、子どもたちに必ずしも正しくないことを教えていることになるんですけどね)

最後に徳川家康の生没年について。

平凡社は『日本人名大辞典』で「1543年〜1616年」、『百科事典マイペデイア』では「1542年〜1616年」と、同じ平凡社でも西暦表記が違っていました。また歴史関係の出版で知られる吉川弘文堂の辞典でも家康の生誕日を、『戦国人名辞典』では「1543年1月31日」とし、『日本近世人名辞典』では「1542年~」と表記していました。

歴史でメシを喰っているような出版社でもこのようなことがおきてしまうほどに、暦の話は一筋縄ではゆきません。そうとうややこしいのです。

さてさて、テレビではどう表記するか・・・。旧暦11月半ばから12月中の歴史上のできごとには要注意ですね。

[メディアゴン主筆・高橋のコメント]

さる有名な歴史学者が「仮名手本忠臣蔵は嘘です」という趣旨の本を書いたことがあります。これが脚色ものであること、脚色しなければならなかった背景などは、昭和30年以前生まれの人でないと知らない時代になったのかもしれません。

それから1958年の大作、大映のオールスター映画「忠臣蔵」(監督・渡辺邦男)、配役は大石内蔵助:長谷川一夫 浅野内匠頭:市川雷蔵 岡野金右衛門:鶴田浩二 赤垣源蔵:勝新太郎 大石主税:川口浩 堀部安兵衛:林成年 吉良上野介:滝沢修というすごいスターばかりなのですが、この中で大石内蔵助の長谷川一夫は「おのおの方、討ち入りでござる」という台詞は言いません。

何度も、何度もDVDを見直しましたが言いません。モノマネでやってるからそう覚えちゃってる人、それも昭和30年以前の生まれの人です。

 

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藤沢隆

藤沢隆(ふじさわ・たかし) テレビディレクター、プロデューサー。 バラエティ、報道、情報、すべての番組を手がけている。 大手制作会社・元取締役。