<朝日新聞が当たり前のことを書き始めた>原発大嫌い!再エネ大好き!の朝日新聞が社説で「再エネ」を直視


石川和男[NPO法人社会保障経済研究所・理事長]

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2014年12月24日の朝日新聞社説は、「再生可能エネルギー」を取り上げている。「原発大っ嫌い!再エネ大好きっ!」の筆頭メディアである朝日新聞にしては、何とも珍しいことに、とても冷静な視点で再エネについて評している。

何を今さら、という気もするが、朝日新聞が脱原発の最右翼として今まで散々礼讃してきた「再エネの雄」こと「太陽光発電」への批判調を醸し出している。

もっとも、朝日新聞や毎日新聞や東京新聞がどんな綺麗事やどんな美辞麗句を並べても、或いは誰に取材してコメントを引き出したとしても、再エネは脱原発の右翼にはなれないし、最右翼にはもっとなれない。

脱原発の最右翼は、CO2問題を度外視した石炭か、燃料コスト問題を度外視した天然ガスか、根拠のない人々の恐怖心を度外視した「新原発」しかない。

2012年7月に施行された再エネの固定価格買取制度(FIT)の発足当初は、太陽光発電の買取価格は世界で類を見ないほど異常に高額だった。それに対して、この朝日社説では、「(FITが)当初想定していた利益率を上回る計画が半数近くある」と、真実を正面から受け止めている。

事業の採算性を示す内部収益率(IRR)は、FIT施行直前の想定では6%だったが、実際にはその倍以上の事業者も相当いる。この朝日社説では、

「資料などから試算すると、制度が当初想定していた利益率を上回る計画が半数近くある」

と書かれている。

代表的な例としては、ソフトバンクの子会社であるSBエナジーと三井物産が50%ずつ出資する「ソフトバンク鳥取米子ソーラーパーク」。

2013年1月20日付け朝日新聞朝刊や、2014年2月2日付け朝日新聞朝刊で報じられているが、約53万2千m²の敷地にシャープ製の太陽光パネル約17万9千枚を設置。建設費は約100億円、出力は3万9500kW、年間の発電量は約4500万kWh。一般家庭1万2千世帯分の消費電力に相当するとの触れ込みで、中国電力への売電収入は年間約19億円を見込む。

売電収入の3.75%を地代として鳥取県、米子市、県住宅供給公社に支払う。 因みに、太陽光は天候不順日や夜間では発電しないので、「一般家庭〇〇世帯分の消費電力に相当する」との言い方は大きな誤解を招くのでよくよく注意されたい。

この朝日社説では更に、

「現行制度では経営情報を公開する義務もなく、事業者や発電所ごとのコストと利益が利用者には見えないままだ」

とある。

つまり、FITによる規制料金で売電できるにもかかわらず、透明性に著しく欠け、行政当局ないし第三者によるチェックが及ばないという“特権”の上にいることもきちんと書いている。

これも本当の話なので、これを記事にすることに驚く必要はないのだが、「朝日社説で書いてあるから驚くべきこと」なのだ。なお、再エネ電気を売る再エネ発電会社のコスト等に関する情報は一切開示する義務がない一方で、再エネ電気を買い取る電力10社は料金規制における総括原価には開示義務がある。

こう書くと、この朝日社説は見識のある論調となっていると思えるのだが、最後に、

「利用者負担を抑えながら再エネを普及させる」

とあっさり書いている。そうであるならば、再エネを普及させることで脱原発だ!などと、技術的に不可能なことを主張していてはいけない。

「安い原子力電気で高い再エネ電気のコスト分を内部補填する」ことでトータルの国産エネルギー発電単価を抑制するといった、技術的に実現可能な新政策を提起していくべきだ。

朝日新聞は、そろそろ「原子力 vs 再エネ」から脱却し、真のエネルギーベストミックスに向けて覚醒していく必要がある。

 

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石川和男

石川和男(いしかわ・かずお)NPO法人社会保障経済研究所・理事長。1965年、福岡県生まれ。東京大学工学部卒業。1989年、通商産業省(現経済産業省)入省。エネルギー政策、産業保安政策、産業金融政策、中小企業政策、消費者政策、物流・流通政策などに従事。2007年3月、経済産業省を退官。2008〜09年、内閣官房・国家公務員制度改革本部、東京財団上席研究員、政策研究大学院大学客員教授、政府の規制改革会議、行政刷新会議WGなどの委員を歴任。