<魂を揺さぶるご当地映画>「平成のヒーロー探し」として位置付けた「地域起こしのための映画作り」プロジェクト


原一男[ドキュメンタリー映画監督]

***

これまでの連載はコチラ

「平成のヒーロー探し」として位置付けた、近江八幡市の「地域起こしのための映画作り」プロジェクトに、話を戻そう。

もう一度「市井の人々」に目を向けてみよう、と考えた。・・・いや、それしか考えようがなかったから、という言い方が当たっているのだが。この広いニッポン、どこかにはいるだろう、いつか出会えるだろう、と希望を捨てずに探してみようと覚悟を決めた。

「平成のヒーロー探し」の一環としての、このプロジェクトという位置づけ。3年半という時間をかけて映画は完成した。タイトルは『結い魂ーゆいごん』、

  • 結い魂ーゆいごん
  • 【上映時間】117分
  • 【製作期間】2008年〜2011年
  • 【企画・監修】原一男(映画監督/大阪芸術大学教授)
  • 【監  督】長岡 野亜(映像作家)

800人入れる市民会館大ホールでお披露目の完成上映会をうったが超満員。好評だった。

これはいける、と地元のワーナーマイカルから上映したいと打診があった。へえ、シネコンなんかで上映して観客は入るのかしら? と不安だったが「メジャーの大作より入りましたよ」とマネージャー氏。

その週の観客動員第3位だったというから立派なもの。本作はまぎれもなく「ご当地映画」だが、近江八幡市の周辺の市町村で、上映会をしたい、という申し込みが相次いだ。そんな空気の中、よし、チャンス到来! と思い、筆者がゲストとして呼ばれた上映会で呼びかけてみた。

「この映画は、地域のお年寄りたちの遺言=結い魂を映像にしました。実は私はもっとムチャクチャにオモシロイ映画を作りたいと願っています。刺激的で、観た人の魂を揺さぶるような、生き方を変えざるを得ないような、そんな映画を。お年寄りと言われる年代の人で、残りの人生を、こういうことをやってから死んで逝きたい、つまり、今までやりたかったことで、どうしてもやり遂げたい、ということはありませんか?

その、やってみたいと思ってらっしゃることが私たちもオモシロイと思えることだったら、そのことを実現するために智恵とお金を最大限集めて、めいっぱい頑張って実現させようじゃありませんか! そしてその過程をドキュメンタリーとして映画を作っちゃえ、と私は考えてます。

もちろん、楽じゃないですよ。だけど映画を見た人が感動してくれるようではないと、映画を作る意味はないですものね。自分の行為、行動を、観た人から感動してもらえることって、楽して感動なんてしてもらえるわけないでしょ? やるとなったら死に物狂いでやってもらわないといけないわけですが。でも、残りの人生ですもの、しゃかりきになってやったって、まあ、『後は野となれ山となれ、で、いいと思いませんか?』どうでしょう、誰か、いませんか?」

・・・と。

 

【あわせて読みたい】

The following two tabs change content below.

原一男

原一男(はら・かずお) ドキュメンタリー映画監督。1945年生まれ。疾走プロダクション所属。1987年の映画「ゆきゆきて、神軍」は、ベルリン映画祭カリガリ映画賞、シネマ・デュ・レェール・グランプリなど、数々の賞を総なめ (奥崎謙三は、かつて自らが所属した独立工兵隊第36連隊のウェワク残留隊で、隊長による部下射殺事件があったことを知り、殺害された二人の兵士の親族とともに、処刑に関与したとされる元隊員たちを訪ねて真相を追い求める。) 小説家・井上光晴の晩年5年間を追いかけたドキュメンタリー映画「全身小説家」は、1994年のキネマ旬報ベストテン1位・日本映画監督賞、毎日映画コンクール日本映画大賞。