<「めちゃイケ」の職人魂が喪失?>「めちゃイケ」の「キレ芸コンテスト」の中途半端さ


高橋維新[弁護士]

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2015年2月7日放送のフジテレビ「めちゃ×2イケてる」は、「若手キレ芸オーディション」という触れ込みで行われた企画であった。表面上は、参加者の若手芸人にキレ芸を披露してもらい、それを加藤浩次・カンニング竹山・テリー伊藤・岡村の4人が審査するという企画だ。

「キレ芸( =いきなり理不尽にキレて笑いを誘う芸)」は、それ自体で笑いがとれるものなので、本当に力のある若手にキレ芸を披露してもらい、本当に真面目に審査をするという企画にすれば、それはそれでまとめることができる。コンセプトこそ違うが、例えば「笑わず嫌い王決定戦」という企画は、基本的には力のあるお笑い芸人にまじめにネタをやってもらい、それをひたすら見るという企画である。

しかし、そういう形でまとめるには、出場者の力量が随分足りないように感じた。キレ芸自体を見ていられたのは、もう中堅からベテランの域に入っているダイアン・津田、アンタッチャブル・柴田、あとは若手の中だとせいぜい、さらば青春の光・森田だけであった。あとの出場者は、大部分がダイジェスト処理されていたことから考えても、単純な力量と経験の不足に緊張が相俟って、ほとんど正視に堪えない状態であった。

では、どうすればおもしろくなったのか。本当にただの「キレ芸コンテスト」をやりたかったのであれば、津田や柴田のような経験も実力もある出場者で固めるべきである。加藤も竹山も出場者の側に回るべきであったはずだ。

それでも、なぜ「若手」という触れ込みで出場者を集めたのか。若手にチャンスを与えたかったのか? 「めちゃイケ」はそういう思想で作品の質自体を貶める番組ではない。若手のキレ芸オーディションということで裏側も含めてドキュメンタリーを作ればそれはそれでひとつの番組になるが、それは最早「めちゃイケ」ではなくて「イカ天」(「三宅裕司のいかすバンド天国」(1989〜1990・TBS)通称「イカ天」。「イカ天バンド」と呼ばれる数々のバンドをデビューさせた伝説のオーディション番組)である。「めちゃイケ」は、そういう番組でもない。

番組は何をやりたかったのか?察するに、「めちゃイケ」が得意とするドキュメンタリーコントだったのではないだろうか?つまり、キレ芸コンテストというのはこの企画の「表の顔」でしかない、ということだ。

キレ芸が得意な芸人にキレ芸を披露してもらうという場なのに、例えば全然違う話をイジられて「やりたいキレ芸ができなくなる」とか、「君は優しい子だからこういう場に来ちゃダメだ」とか言われてキレ芸を披露させてもらえないとか、一生懸命キレ芸をやっても真面目に審査をしてもらえないとか、どうでもいいところでダメ出しを喰らうとか、番組側がそういう無茶苦茶な扱いをすることで笑いを取りたかったのである。

つまり、視聴者に本当に笑いをもたらすのは、キレ芸を披露する出場者ではなく、「キレ芸コンテストなのに無茶苦茶なことを言ってキレ芸をさせない審査員」だったのではないだろうか。口笛なるお(わらふぢなるお)が、「君はおばあちゃん子だから優しい子のはずだ」などと言われたり、森田(さらば青春の光)が相方のスキャンダルを延々いじられていたりしたことにその片鱗が見てとれる。柴田が「おまえはベテランだから来ちゃダメだろ」という扱いを受けていたのもその一つである。

とはいえ、そんな番組ではあったが、その姿勢は不徹底なものであった。

このコントをやりたい場合、標的になる出場者にはちゃんとキレ芸をさせてはいけない。させるにしても途中で止めて番組側が無茶苦茶なことを言いださないといけない。でも、前述の口笛なるおも森田も自分のキレ芸は最後までやった後に、審査の場面で上記のようなイジられ方をされていたので、視聴者としては中途半端なキレ芸を笑えばいいのか審査時のイジりを笑えばいいのかがよく分からなかった。

そもそもトップバッターであった井口浩之(ウエストランド)は普通にキレ芸をやって普通にダメ出しを受けていただけであったため、その意味でも企画のコンセプトはボヤケてしまった。単なるフリだったのかもしれないが、フリは冒頭における(表面上の)企画趣旨の説明だけで十分である。

ナイナイ・岡村隆史の位置付けも中途半端だったように思う。

衣装や髪形も何を意識してああなったのかがよく分からないが、冒頭に矢部から「別にあなたキレ芸をやる人ではないですよね」というツッコミが入ったので、「君は優しい」とか言ってキレ芸を止めさせる側に回るのかとも思ったが、徹底してそういう動きをしているわけでもなかった。

おそらく、番組側も、この企画を単純なキレ芸コンテストでいくのか、それともそれを利用したドキュメンタリーコントをやるのかを詰め切れていなかったのだろう。詰め切れていたとしても、演者や現場のスタッフにまでちゃんと伝わっていなかったのだろう。

だから、キレ芸もやらせて、審査時のイジリもやらせて、その中からおもしろいところだけつなぎ合わせて編集するという「中途半端な形」になったのではないだろうか。

結果オンエアされた映像も純粋なキレ芸の部分とドキュメンタリーコント的な部分との継ぎ接ぎになっており、何とも中途半端な代物が出来上がっていた。コンセプトが中途半端だから、視聴者としても何を笑っていいのかがよく分からないのである。

「ドキュメンタリーコントをやりたかったのだろう」というのも、あくまで筆者の善意の解釈であるため、そこまで詰め切れずになんとなくカメラを回しただけの可能性は大いにある。「めちゃイケ」の職人魂の喪失が危惧される。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。