<バブル世代=目の肥えた怖い顧客>英BBCドラマ「ダウトン・アビー」がバブル世代女子にウケる理由

社会・メディア

齋藤祐子[文化施設勤務]

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NHK地上波で放送している外国の連続ドラマのファンは多いが、筆者が知人に勧められて見始めたのは英国BBCテレビ制作の「ダウトン・アビー」である。
ダウトン・アビーとは英国貴族の館そのものを指すが、時代背景はタイタニック号の沈没から第一次世界大戦まで。狩りとパーティに明け暮れる貴族が、その激動の時代に没落し始める「終わりの始まり」を、その館の3姉妹の結婚(相続)と、数多くの使用人の人生をからめて群像劇の体で描きだすものだ。
重厚な人間ドラマもさることながら、40〜50代のお姉さま世代に受ける理由の一つはその時代考証のもと、現代のセンスで作り上げられた衣装=ドレスの数々だろう。
「ドレスに合わせたアクセサリーも素敵」という意見を聞くと、かつて「バブル」という、日本社会全体が浮かれていた時代に「小粋な男女になるためには、若いうちから贅沢が必要」といわれて海外旅行のかたわら法外な値段のブランド物を買いあさり身につけた世代が、いま身の丈にあった消費をしながらも肥えてしまった眼力で、「これは素敵」というものをしっかと見逃さずにいる、ということだろうか。
2015年2月に放映されたそのメイキング番組では、小型のロケハン用のバンいっぱいに積まれた豪奢なドレスの数々が紹介されていた。すべてオリジナルで新規に作成されている様子。さすがBBC、かけるべきところに金をかけている。
そのドレスの数々は若い女性の憧れだって十分にかきたてるだけのクオリティをもっているようで、出演者の若い女性(使用人の役柄なので)などは、素敵なドレスが着られなくて残念、とインタビューに答えている。
今や希少品種となってしまったバブルを知る世代といえば、若いころから高いばかりのブランド物を買い狂い、こんなデフレの世でも贅沢が忘れられない。一方仕事の現場では、価値観や常識が激変する中で、小じっかりした若者の猛追を受けて、ともすればリストラ要員=不良債権のように語られることも多いだろう。そんな彼ら/彼女らこそ、まさに日本社会が「成金から成熟に向かう」際の申し子だったことは間違いないだろう。
高品質なものはすぐにわかる、目の肥えた怖い顧客ともいえるこの世代。ドラマにも一家言ある女性陣に支持される番組には、それ相応の「価値」があるということだろうか。
 
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