落語で観客から見て右側は上手、左側は下手です。必ず上位者を上手に置いて演じるのでご隠居と与太郎ならば上位者のご隠居が上手、与太郎は隠居の左側、下手にいます。
1月7日緊急事態再宣言記者会見での2ショット、下手・与太郎サイドに菅総理、上手・ご隠居サイドに尾身茂分科会長が立っていました。テレビなどでは上下原則はルーズなので別に気にすることもないのですが、会見が進むにつれて「この二人の関係は与太郎とご隠居じゃないか」と思えるような展開になってきたのでした。
記者の質問にまず菅総理が短く説明をし、「詳しくは尾身さんから」とすぐに尾身会長に話を振るというパターンが繰り返されました。それだけでも、情けねえ、という印象は否めないのですが、お偉方の言いなりだなんて陰口も聞こえるご隠居ポジションの尾身会長は、さすが老獪に菅総理をあしらい、与太郎サイドの菅総理はそのあしらいに気づかない?という、まさに与太郎滑稽噺の一場面を見せられているような気がしてきたのです。もちろん笑えない噺ですが。
それが会見ではっきり見えたのが2月7日までの1ヶ月という緊急事態宣言期間の話です。冒頭発言で菅総理は「1ヶ月後には必ず事態を改善させる」とミエを切ったのですが、記者から宣言解除の条件について問われると「仮定のことについては答えは控えさせていただきたい。何としても1ヶ月でという思いで・・・」とトーンダウンし、すぐに「1ヶ月で収束するかといった見通しなどは尾身会長の方がよろしいと思います」とご隠居ポジションに振って逃げちゃったのです。
しかし、この前々日、尾身氏は「1ヶ月で下火にするのは至難の業、それが3月、4月か分かりませんけど」と語り大きく報道されていました。菅政権はこの発言を無視する形で1ヶ月と決め、菅総理はその上で話を尾身氏に振ったのですから、尾身氏は二日前の発言を修正するものと思われたのですが、そこはご隠居、与太郎にひれ伏したわけではありませんでした。
尾身のご隠居「1ヶ月で感染を下火にして、ステージ3に近づきたいと思ってます。私どもは、その近づくための条件が4つ、私はあると思っています」として以下の4つの条件を挙げました。
1.具体的な、強い効果的な対策を打つこと
2.国と自治体が一体感を持って明確なメッセージを国民に伝える
3.できるだけ早く(特措法の)改正をして経済支援などとひもづける
4.国民のさらなる協力を得る
これは実に奇妙な発言です。この記者会見で菅総理は国民に向かい、効果的な対策?を示し、明確?なメッセージを伝え、法改正を急ぐとし、国民に協力を求めたばかりです。ところが尾身のご隠居の文言は国民に向かってではなく菅・与太郎政権に向かって実現のための条件を突き付けている文言なのです。与太郎さんにもわかるように言い換えれば、尾身のご隠居は与太さんに向かってこう言っています。
「与太さん、お前さんたちは強い手を打ってないし、あんたらお上のご意向は世間に伝わっていないじゃないか。法の改めも遅れてるし、こんな事で世間が動いてくれるのかい?」
そして尾身氏はこう結びました。
「私は、今申し上げた4つの条件を満たすために日本の社会を構成するみんながしっかりと頑張れば、1ヶ月以内でもステージ3に行くことは可能だと思っています」
「日本の社会を構成するみんな」とは一般の国民ばかりでなく、行政のリーダーたちを指していることは2日前の尾身会見で明らかなのです。
「国や自治体のリーダーは選挙で選ばれた人たちですよね。自分らも汗をかく。自分らも難しいことをやる、いろんな措置をやる、経済的支援をやる。自分らも汗をかく、だから一般の人もやってくださいというメッセージがないと…このことが私は極めて重要だと思います」
尾身のご隠居は短い文言中に「自らも汗をかく」を2度くり返し、明らかに菅・与太郎総理に向かって厳しく叱咤激励しているのですが、菅総理は自分への叱咤だと気づいたのかどうか。
これと似たようなことがもうひとつあります。宣言の解除条件です。解除に前のめりな政府はステージ3とか東京の新規感染者数が日に500人とかのきわめてゆるい条件をさかんにアピールしています。尾身氏は2日前の会見ですでにこの点にも触れていました。
「緊急事態宣言によりすみやかにステージ3に下げ、宣言解除後もステージ2までは対策を続けることが重要です」
宣言を解除してもステージ2まで対策を続けなければ意味がないと菅総理に説いているのですが、これも与太さんに届いているのかどうか。落語の世界で粗忽者の象徴が与太郎ですが、じつは与太郎はまるっきりの馬鹿ではありません。正直で隠しごとのできない町内の愛されキャラで、時にはけっこう賢く立ち回る役割なのです。怖れ多くも天下の総理大臣を与太郎に準えてきた非礼をお許し願いたいのですが、そうした与太郎に学ぶところがないわけでもないと感じるのです。
菅総理は言葉が流暢ではありません。論理的な説明や感情表現もお上手とは言えません。時に「何言ってんだかわんない」状態です。だから説得力に欠けます。さらに決定的なのは安倍政権の官房長官だった菅総理に対する国民の信頼が薄いことです。安倍・菅政権は理不尽な無理筋通しを続けました。それを何とか言い逃れても国民は納得したわけではありません。そのたびに信頼は確実に削り取られて来たのです。この不信感の蓄積が二人を襲っています。信頼されない総理に説得力はなく、このままで菅政権のコロナ対策が成功することは困難でしょう。
そこで起死回生、ここは一番、与太郎に倣って「馬鹿正直」でやり直したらどうでしょう。すべての事実をぶっちゃけて、町内の若いもんから「しょうがないね与太は、なんでも洗いざらい言っちゃおしまいだよ」なんてからかわれているうちに、「与太の言うことにウソはないよ、腹に悪い了見なんぞこれっぽっちもねえんだから」てなことになって行きます。
昨春以降のPCR・医療・保健所体制の強化失敗、GoToこだわりの弊害、第3波対応の遅れ、無謀な五輪への固執、ワクチンだって順調に進んでも集団免疫を獲得するには1年2年かかるのがホントの話。国民の多くはそう思っています。もう謝るところは謝り、事実とエビデンスをすべてぶっちゃけて出直したらどうですか。
コロナ対策に成功した台湾のオードリー・タン氏を取り上げたTBS「報道特集」の中で、「徹底した透明性と公開性」により台湾政府が信頼され、市民の強い協力を得てコロナを克服したとしています。信頼とは口先ではなく徹底した透明性と公開性で獲得するものです。その上で、信頼されるリーダーにより人々の気持ちがまとまることがコロナ対策の要諦と尾身のご隠居も多くの方々も言っているのですが、肝心要の与太さんには届かない話なのかもしれません・・・。
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「ちょっと何言ってんのかわかんない」はサンドウィッチマンのネタですが、菅総理の「ちょっと何言ってんのかわかんない」話の数々を聞いているうちに医療ばかりか日本社会が崩壊しそうな気配になってきました。
菅総理の「わかんない話」にはいろいろなパターンがあります。まずは言葉そのものが何言ってるのか聞き取れないパターン。1月10日NHK「日曜討論」での発言。
「政府と与野党の協議会というのがありまして、まあ、キセスベキケントウ、シンチョウスベキ、ケンチョナガアリマス」
なんどもくり返して聞き直しましたが、筆者にはカタカナ部分は理解できませんでした。わかりますか?
次に言葉はわかるものの、その意味がとれないパターン。同じ番組で緊急事態発出後の「人出の状況をどう評価しているか?」と聞かれて、
「まだ始まったばかりでありますから、最初はやはりテレワーク7割減と私もお願いしました。しかし休みの前の打ち合わせ等がありましたのでそこは下がっていますけど、思ったほどではなかったのですが、今はかなり大丈夫だろうと思っています。」
これを何度も何度も聞き直したところ、おそらく以下のような意味の文言ではないかと。
「最初はテレワーク7割減とお願いしました。その時はまだ始まったばかりで休みの前の打ち合わせ等がありましたので、実行割合が低く、期待したほどではなかったのですが、今はかなり実効割合が上がって大丈夫だろうと思っています。」
自民党の方が「菅総理は語彙が少ないので説得力がない」と言ったそうですが、語彙よりも話の構成、ことばの並びがメチャクチャなことがわかりにくい要因でしょう。放送を視ながら素直に理解できた視聴者はほとんどいなかったのではないかと思います。どうしてこの時にこういう趣旨の発言をするのか、という意味で「ちょっと何言ってんのかわかんない」パターンも多々あります。
1月4日年頭記者会見。感染者が激増し、2度目の緊急事態宣言発出について菅総理は江川紹子さんの質問にこう答えました。
「どこが問題かということはかなり明確になっていますので、(飲食に)限定的に、集中的に行うことが効果的だというふうに思っています」
せっかくの緊事宣言という切り札を切って国民の危機感を高めようとするはずが、限定的、集中的にと言葉を弱め、アピール効果を薄めてどうすんの、っていう話です。さらに1月7日再緊急事態宣言発出の記者会見、菅総理の冒頭発言です。
「期間は1か月です。第1に飲食店の20時までの時間短縮、第2にテレワークによる出勤者数7割減、第3に20時以降不要不急の外出の自粛、第4にスポーツ観戦、コンサートなどの入場制限であります。」
この4点を対策パッケージとし、飲食店の営業時間短縮が対策の急所と語りました。4点パッケージには昼間の外出自粛要請4県境を越えての往来の自粛などは含まれていません。なぜこんなにユルーイ対策なのか、何のための宣言で何がしたいのか「ちょっと何言ってんのかわかんない」です。
ところが、菅政府は強い批判を浴びて翌週には、「昼間の外出自粛要請をしていないというのは国民の誤解だ」と言い出しました。「第3に20時以降不要不急の外出の自粛」としか言っていないのでから絶対に国民側の誤解ではありません。誤解だなんて「ちょっと何言ってんのかわかんない」発言です。
さらに県境をまたいでの往来自粛要請についても、分科会の一部の専門家は「今回の宣言の中に含めるよう強く主張し、認めれて宣言に含まれている」とテレビで公言しました。しかしなぜか4点パッケージにはありませんし、政府側から宣言の中にあるという話は聞こえてきません。まったくもう「ちょっと何言ってんのかわかんない」状態がひどすぎます。
とにかく政府と国民の間のコミュニケーションがとれていません。これほど菅政府の言うことが「ちょっと何言ってんのかわかんない」状態では感染抑制が進むはずもありません。いまや菅政権のやることなすことすべて裏目裏目の連続で国民の信頼は地に落ち、医療崩壊とともに政権崩壊状態です。こんな状態に筆者はかなり怖くなってきました。大げさではなく日本社会の崩壊すらも視野に入ってきたのではないかと感じたからです。
若者たちは感染しにくく重症化リスクも低いので医療崩壊など怖くないのかもしれません。しかし、医療崩壊を越えて日本社会が崩壊したら、あるいは日本社会の未来が大きく傷ついたら、その影響を真っ向から受けるのは老人ではなく若者です。
コロナに注ぎ込んだ何十兆円という膨大な予算のツケはいずれ誰かが支払わなければなりません。経済力が落ち込めば様々な社会サービスは低下し、世界とはマイナスハンデの競争を強いられます。コロナ禍が強く長く続けば、その分だけ若者は近い未来に過酷な重荷を背負うことになるのです。
コロナなど自分には関係がないと行動を変えない若者のみなさん、そのことでひどく傷ついているのは実は自分たちの未来だとは思いませんか。しかしそうは言っても、きっと若者にはこう言われるんでしょうね・・・。
このジジイ「ちょっと何言ってんのかわかんない」
老兵は消え去るのみ、傷ついた世の中に残ってツケを払うのはあなた方若者なんですがねぇ。
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「みなさんこんにちは、ガースーです」
番組冒頭、いきなりこんなボケをぶっ込んできたのは菅義偉内閣総理大臣。ビートたけしさんじゃあるまいに。12月11日午後3時、菅総理はインターネットの動画配信サイト「ニコニコ生放送」に出演しました。そこでこのボケです。総理大臣が不様にボケをぶっ込んだちょうどその時、テレビ各局は「東京新規感染者595人!過去2番目!」と特大テロップで伝えていました。
前日が東京初の600人越え、さし迫った医療崩壊が重大関心事となり、多くの人が毎日この時間に発表される数字を注目するその時に、笑いながらボケをかますという気の毒なほどのセンスのなさ。誰が考えてもボケてる場合じゃないでしょう。菅総理が、もしボケ時もわからぬほどボケているなら、これはホンマモンのボケ総理です。
それにしても、メディアを避けているように見える菅総理がなぜネット番組に出演したのでしょうか。就任早々に出演したNHKのツッコミがきつくひどくお怒りだったようですし、かつては「総理と語る」という番組を持ち回りで制作していた民放各局も総理の出演を望んでいるでしょうが、現状で出れば、コロナ、桜、学術会議、河井夫妻、元農相賄賂疑惑と、やはりキビシイ質問や評価が待っています。もはや菅総理が安心して出演できる場は地上波、BSにはなく、一国の総理が思いを語れる場はネット番組だけという状況のようです。では、このネット番組に出てコロナについて何を語ったのか・・・。
司会「GoToトラベルについてどうお考えか?」
菅総理「一時停止については、まだ考えていません。ステージ3の場所についてはしっかりした対応をとらなければいけない!時短などをお願いしている場所を継続していくのかを2~3日中に検証結果をもとに検討する。」
どこから生まれた自信なのか、GoTo を停止することはまったく考えていないようです。しっかり対応するのは「ステージ3の場所」だけのようですが、政府は今のところステージ3地方の存在を認めていません。少し前にステージ3指定を神奈川県の黒岩知事が西村担当相に申し出たところ、承服しがたい、と突っぱねられたと伝えられています。しかも菅総理の言葉どおりなら、対応するとしても「時短などをお願いしている場所を継続していくのか検討」するだけと受け取れます。
菅内閣はGoToだけはきわめて積極的ですが、GoToはコロナ禍の経済対策であっても感染症対策ではありません。GoToをやれば感染が減るなんて事はありませんから。
[参考]矛盾だらけ菅義偉内閣の終焉は近い
菅総理は逆に「GoToが感染を拡大するというエビデンスはない」と言ってGoTo 継続の根拠としています。「エビデンスがない」ということは、GoTo が感染拡大を助長しないというエビデンスもないということです。ようは「わからない」というのが合理的事実です。危険だというエビデンスがないけど、安全だというエビデンスもない飛行機にあなたは乗りますか?
常識的には開始以来5ヶ月も経って政府サイドがGoTo と感染の相関関係を示すデータを持っていないわけがないのですが、未だに「エビデンスがない」にすがっているのを見ると、菅総理にとっては不都合なデータなのかもしれないと疑ってしまいます。そう言えば菅総理はこんなことも言っています。
「以前、移動では感染は増えないと助言をいただいているんです。」
このコメントは現分科会長の尾身茂氏がどこかでおっしゃったと記憶しますが、言葉は続いていて「旅行先はしっかり感染対策をし、その上で旅行される方は感染しない、感染させないように充分に気をつけて欲しい。」といった趣旨のコメントだったと記憶します。
それにしても、一国の政策の安全根拠が、「エビデンスがない」、「以前に移動そのものでは感染は増えないと助言があった」、というだけでは科学的合理性がまったくありません。逆に、現在の分科会のメンバーが断言しています。
「県境をまたぐ移動と感染との関連は明らかに有為性がある。これははっきりと分科会に報告されている。」
菅総理の言葉で少々引っかかる言葉があります。「感染拡大を防ぐ」とは言うものの「感染を減らし無くす」とは言わないのです。屁理屈のようですが、単に「拡大を防ぐ」だけでは感染は増えないだけで減りません。GoToは日常の社会活動レベルに国が大金をぶち込んで膨らませた強制拡大活動です。これをやめたからと言って、世の中は元の社会活動レベルに戻るだけです。GoTo中止ではGoTo膨張分の感染拡大は防げるでしょうが、感染全体がどこまでも減少して行くわけではありません。
今は感染拡大防止策では足りません。根本的な感染防止策が必要なのです。経済対策は知恵を絞り、感染拡大を防ぎつつ必要で有効な手を打つべきです。一方で菅総理にはいま何ひとつない、根本的で具体的で、科学的合理性に基づいた感染撲滅政策こそが必要と考えます。
この非常時に、上記のような素人筆者の思いなどでこの稿を終えるわけにはゆきません。テレビで聴いたある医学者の言葉でこの稿を閉じることとします。
「コロナ対策の要諦は感染者を減らすこと、これに尽きます。感染者が増えても構わない、だけど医療は崩壊させない、経済は活発化させるという、そういうアクロバティックな方法は存在しないと思います。まずは感染者を減らすこと、これが経済を回す条件でもあるし、医療をひっ迫させない条件でもあります。その方法を我々はすでに知っているわけですから、あとはやるか、やらないかです。」
やるか、やらないか、ですよ菅総理。つまらぬボケですべっている場合じゃありません。今日12月12日、東京都の新規感染者発表数は過去最大を更新し、621人です。
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11月8日(月)共同通信などが4つ目となる新たな任命拒否理由を報じました。
「学術会議会員候補6人が安全保障政策などを巡る政府方針への反対運動を先導する事態を懸念し、任命を見送る判断をしていたことが7日、分かった。」「複数の政府関係者が明らかにした」と共同配信にありますから、いい加減な記事ではありますまい。テレビはこれをほぼ無視したため、ネットニュースで知った筆者は全身に悪寒が走りました。とうとう日本は戦前の暗黒時代へ戻ったのかと。
憲法第14条「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」
もし菅政権が「政府方針への反対運動を先導する事態を懸念し任命を見送る判断」をしたなら、これは憲法14条で禁じられた「差別」としか筆者には考えられません。
この記事にある「先導」という言葉も奇妙です。おそらくこれは「政府関係者」が使った言葉で、記者なら「扇動(煽動)」と書くはずですが、煽り立てなくても「先導」、すなわち言論により方向性を示すだけでも駄目で、学術会議会員にはいっさいの政府批判を認めないというきわめて怖ろしい言論統制です。
菅政権は6名を選別して任命を拒否したのですから、選ぶにあたっては学術会議が推薦した学者105名全員について、「政府方針への反対運動を先導する懸念」を含む身辺調査をしたことになります。これでは現代日本に秘密警察が存在するようですが、実は直近で、こうした身辺調査の有無にかかわる発言が続いていました。
11月6日(金)TBS「ニュース23」に出演した「週刊文春」元編集長で現編集局長、文春砲の生みの親と言われる新谷学氏が明快に語っています。新谷氏は、今回のキーマン杉田和博官房副長官について、
「ものすごくオールドスタイルの元公安警察官で、公安警察というのは危険な思想を持っているとか、そういった人たちをあぶりだして事件を起こす前に取り締まってゆくというのが仕事なので、実は今回の6人についてもある情報機関がいわゆる身体検査のようなことをやって、たとえば共産党との関係とか中国との関係とかを調査をしていると、そういう報告をあげているという情報もあって、それが直接的に今回の任命拒否につながるのかどうかさらに深く掘り下げて取材をする必要があると思います。思想信条みたいな、危険思想をもっていないか、公安警察的な観点からすればですねそれはやはり要注意、中国シンパであるとか要注意人物というふうにみられるのかなと思いますね。法案(に反対した)だけというよりはもうちょっと深く調べているのではないかな思っていて、ただこれは絶対に口が裂けてもこ言えないですよね。」(筆者文責で発言趣旨のとおりに編集)
新谷氏は、ある情報機関が学術会議推薦者の思想信条を含めて身辺調査をやったという情報がある、と言うのです。
[参考]<公開処刑された学者6名は生け贄か>中曽根元総理にも無礼!6学者に即刻謝罪を
もうひとり、別の観点から語っている方がいます。11月8日(日)BS朝日「激論!クロスファイヤー」に出演した斎藤健元農林大臣です。自民石破派ではっきり持論を言うタイプの政治家です。
「今回任命された(99)人の中にも安倍政権にたてついた人はたくさんいます。皆さんは6人とおっしゃいますが、私は自分で人事をやっていた人間として、これは6人じゃないんです、ひとりひとりなんです。それぞれに表に出来ない何らかの理由があってね、スキャンダルがあるかもしれないとかね、人事というのはそこをチェックしなけりゃいけない。最後に任命するときにはやっぱりあるわけですよ、ひとりひとりの事情がね。(説明)できないものがあったのかなと推測するだけです。」(筆者文責で趣旨を損ねない範囲で発言を編集)
斎藤氏は自らが人事をやった経験から、学術会議に対しても個人のプライバシーにまで踏み込んだ身辺調査があり、思想信条と言うよりも6名に任命に不適な個人的な事情があって、法に定められた正当な判断基準によらずに、個人的事情により任命不適とされた可能性を推測しています。6名の方には耐えがたいほどの非礼な発言のように聞こえます。
いずれにせよ共同配信、新谷発言、斎藤発言に共通するのは、国の情報機関が学術会議会員推薦者の身辺調査を行ったという指摘です。知らぬ間に犯罪者でもない国民の行動、思想信条、プライバシーが国家によって調べられる。その調査結果が国家権力の意に沿わなければ理由も告げられず問答無用で不利益を被る、たとえば学術会議会員任命拒否のような形で。スターリンをもじってスガーリンと揶揄する方がいますが、このジョーク、笑えません。
2016年12月、当時文科事務次官だった前川喜平氏は杉田和博官房副長官に呼び出され、新宿の風俗店通いを注意されます。翌2017年5月、安倍政権が加計学園問題で連日追及を受ける中で唐突に読売新聞が前川氏のこの風俗店通いを社会面で大きく報じます。しかし記事はいかにも取材不足、前川氏自身に取材してもおらず、天下の読売が記事にするような内容ではありませんでした。事実、前川氏は女性の貧困という社会的関心から店へかよっていたもので、読売の記事から臭ったいかがわしい行動などその後指摘される事はまったくありませんでした。
あのころ文科省と安倍政権は微妙な関係でもあり、当時の菅官房長官が「怪文書のようなもの」と切って捨てた文書が実は文科省の文書だった事で菅官房長官が非難を浴びるという経緯もありました。そうした中で政権にとって目障りな前川喜平氏の身辺情報を杉田官房副長官が握り、これをコネクティングルームでおなじみの和泉洋人総理秘書官を通じて読売に書かせたと前川氏は考えています。もしそうならまさに戦前の秘密警察を彷彿とさせる手口です。
これと同様に、今回の学術会議任命拒否問題は、身辺調査による裏情報により政権の意志を問答無用で強制しようとした疑いが拭えません。
菅総理がしきりにくり返すのは、選挙で選ばれ正当な手続で総理となった最高権力者に官僚は従うべきだと、という意味の発言です。学術会議会員は公務員なのだからと「人事は伝家の宝刀」を振り回したのが今回の任命拒否騒動でしょう。そこには学問の自由の尊重、碩学へのリスペクト、正当な手続、情報公開、正直な説明、のいずれも欠けています。もっとも批難すべきは、憲法14条、学術会議法、国家公務員法、過去の国会議論の積み重ねなどを無視し続ける無法者のごとき強権姿勢です。
さらに安倍政権時代には最高裁判事の人事にまで介入をしているという報道もあります。そう言えば本会議の場で衆院議長に注文を付けるなど、菅総理には三権分立のわきまえもないようです。
もしかしたら「たたき上げの独裁強権政権」というモンスターが出現してしまったのかもしれません。数の力を持つこのモンスターに議会が対抗できないとき、残る頼みはメディアで、いまやメディアがどう対峙するのかが日本の命運を握っているのではないかと思いつつ、総理に「更問い」ひとつできない弱腰を見るにつけ、憂いは深まるばかりです。
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日本学術会議(以下「日学」)が105名の新規会員推薦について、 “所轄”の菅首相はうち6名の任命を拒否しました。菅首相自身が述べたその判断理由は
「総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から判断」「広い視野に立ってバランスのとれた活動を行うことを念頭に判断」
ということは、拒否された高名な学者6名が加わることにより日学の活動に、
「総合的、俯瞰的な活動の確保に支障を来す」「バランスのとれた活動を行うことを阻害する」
と菅首相が判断したことになります。業績どころか6名の名前すら見ていないはずなのに。
これだけでも学者6名をひどく愚弄していますが、きわめて高い独立性を与えられた日学の人事に菅首相が介入する権限があるのかどうかの議論になると、6名の碩学にはより無礼な言葉が浴びせられます。政府は2018年作成の内部文書で「推薦のとおりに任命すべき義務があるとまでは言えないと考えられる」とし、野党ヒアリングで内閣法制局は、
「国民および国会に対して責任を負えないような場合にまで任命する義務はない」
と言い切りました。これが任命拒否権限の根拠なら、学者6名は“国民と国会に対し責任の持てない”学者と国にレッテルを貼られ、これが公表されることにより学者として公開処刑を受けたことになります。しかも「総合的、俯瞰的」「バランス」「国民・国会への責任」のいずれにおいても、6名の「何が、どうだから」任命拒否の事由となったのかも説明されていません。説明出来るはずはありません、断罪したご当人である菅首相は6名の名前すら見ていないのですから。あまりに無茶苦茶です。
菅首相が恥ずかしげもなく「(6名が削られた後の)99名のリストしか見ていない」と言ったのはなぜでしょうか。同時に「学者個々の思想信条が任命に影響したか」と問われて「それはない」と答えてもいます。さらに「(日学は)広い視野、バランスの取れた活動を念頭に(すべきという観点で)判断した」とも言っています。註()は筆者
ということは、菅首相がロックオンした攻撃目標は学者6名ではなく日本学術会議そのものなのです。簡単に言えば、菅首相から見れば日本学術会議の活動は左に偏っており、総合的、俯瞰的に広い視野で見てもっと右寄りに活動してバランスをとりなさい、そうしないとこうやって人事に介入するよ、と日学を脅したのが今回の出来事なのでしょう。なんとも下品で街のゴロツキみたいなやりようですが、筆者ばりでなく、あの誤報でおなじみフジテレビ上席解説委員・平井文夫氏も誤報の一部を弁解した番組でこうおっしゃっておりました。
「保守、リベラルの座標軸は右に動いている。(にもかかわらず日学の左偏向が)あまりにもひどいので政府も口を出さざるを得ない。(日学の提言などは)ぼくもなんだこりゃ、って思いますよ。」
日本が右傾化しているのだから、日学ももっと右傾化すべきだ、という話です。これではまさに思想統制、学問の自由への介入そのものでは。菅政権はさすがにはっきりそうとは言えないので、学者6名の任命を拒否する形で脅しを入れてきたのでしょう。ならば、お気の毒に6名の学者は生け贄に過ぎず、碩学に対しこうした無神経な仕打ができるのが菅政権の正体ということなのです。
[参考]<大学生協が倒産危機に>「コロナ」でなくなるキャンパスライフ
もとより、多少の知性、見識があればこうした介入をするのは学問の自由の侵害、あるいは思想統制でマズイと思うのでしょうが、そう理解しない人も世の中にはいます。ですから、これを怖れた国会議員たちは1983年の日本学術会議法改正時に念には念を入れて法案解釈を確認しています。
時の中曽根首相はくり返し、「形だけの推薦制であって、学術会議の方から推薦をしていただいた者は拒否はしない、そのとおりの形だけの任命をしていく」と断言し、それでも介入を危惧する野党の何回にもわたるしつこいほどの質問に他の閣僚や官僚も同様の国会答弁をくり返しました。
その法解釈に変更が加わることがないまま、安倍政権は国会に諮らず陰でこの法解釈とは180度解釈の違った文書を作成します。日学会員が特別公務員とされることから、
憲法15条「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」
憲法65条「行政権は、内閣に属する」
憲法72条「内閣総理大臣は(中略)行政各部を指揮監督する」
を根拠に、任命拒否の権限が首相にある、とこの文書には書かれています。安倍政権を継承する菅政権はこれを根拠に日学推薦者の任命を拒否する権限が首相にあるとしています。しかし、これは中曽根元総理を愚弄する議論です。中曽根内閣の時も今も憲法は同じですから中曽根総理と当時の閣僚や官僚もこの憲法条項を当然認識しており、その上で「形式的任命」を言明したはずです。これを否定するならば、あの強力な改憲論者である中曽根康弘が憲法を知らず、あるいは憲法を無視して「形式的任命」と認めたと菅政権が言っていることになります。
この論は無理です。やはり1983年、中曽根首相は関係する憲法規定の存在を前提にした上で「形式的任命」と答弁し、その解釈により改正案は法として確定したと考えるほかはありません。蛇足ですが日本学術会議の独立性は特段で、日本学術会議法第1条に「日本学術会議は、内閣総理大臣の所轄とする。」とあり、広辞苑によれば「所轄」とは「人事院等の独立性を有する所轄行政機関が、内閣などの通常の行政機関の下に形式的に属すること」とあります。やはり行政機関の下に「形式的に」属している組織、それが日学なのです。
今回の騒動に巻き込まれた6名の学者さんは実にお気の毒です。4000人ほどの候補者の中から数次の銓衡過程を経て、その業績や学問的価値が評価され、晴れて日本学術会議の会員として推薦されたにもかかわらず、6名は名前も知られず、何の瑕疵も指摘されず、研究成果や業績も問われないまま、菅首相により任命を拒否されました。そこには学問や学者に対する露ほどのリスペクトもなく、菅首相が日学という組織を人事を持って意のままにするために、6名の高名な学者を生け贄として公開処刑したも同然なのです。一片の理由も示さずに。
菅首相には、人事による陰湿、強権、不見識な恐怖支配を慎み、総合的・俯瞰的な観点とやらに公正公平でオープンな対応と、できればおおらかさと多少の見識を加えて、常識ある行政判断をしていただきたいと考えます。
そして重要なことですが、もし菅首相ご自身がおっしゃるように、学者6名の思想信条や業績評価が任命拒否の理由でないのなら、即刻6名にあまりの無礼を謝罪すべきです。6名は菅首相の判断により名誉を大きく毀損され続けているのですから。
日学任命拒否問題に関しては、平井文夫氏なみの誤った言葉、事実誤認の発言が飛び交っています。多くは菅首相の任命拒否問題を日学のあり方問題にすり替えようという意図的発言のようですが、これについてはまた別稿で。
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安倍政権が国会を閉じたのは戦略的大失敗です。国民が感じた「安倍は逃げた!」という印象が強烈だからです。あの時安倍総理が大方の意表を突いて、「コロナ対策のために国会を延長する!」と言明すれば、野党攻撃に曝されるのを厭わずコロナに立ち向かう総理安倍晋三というイメージを押し出せたでしょうに。いまやシッポ丸めた負け犬イメージです。
コロナ対策を、おしゃべりキツネ風西村康稔とご飯論法タヌキ風加藤勝信という、話の長い二人にやらせたのも戦略ミスでしょう。さらに、安倍総理をはじめ官邸幹部はこの二人の陰に隠れ、GoToの前倒しも、再緊急宣言の基準も西村や尾身分科会長が具体的提言をしようとするたびに、陰で横ヤリを入れているのが透けて見えるのは卑怯者の印象マックスです。しかも横ヤリ一本で簡単に発言を変える西村大臣の小物ぶりを世間に曝してもいます。
コロナは地球規模の大災害なのですから、そもそも兼務ではない実力派のコロナ専任大臣を置き、飛び切りの「大物」にまかせるべきでした。政界のことはよく知りませんが、総裁選クラス、例えば岸田政調会長とか野田聖子元総務会長とか、あるいは菅官房長官が陣頭指揮を執るとか。
8月3日になっても「コロナにお気をつけて」が政府方針らしく、安倍総理は自主・自制を求めるほかは『ワクチン・特効薬の開発』などと言うだけです。こんな事実上何もしません宣言では、安倍政権にコロナ感染拡大と戦う気概はまったくなさそうです。
さて、安倍政権がグズグズしている間もコロナに夏休みはないので、状況はどんどん変化しています。春の第1波はなんとなく切り抜けた感じですが、現在の第2波は拡大中、日々の数字にドキドキです。その数字ですが、よく見ると、どうにも不可解な数字もあって、裏にはなにかありそうなのです。
<死亡者数が46分の1に>
8月1日の全国の新規感染者数は1536人、これは1週間前の777人の2倍です。国はこの程度の増え方は「漸増」なので特段の具体的対策は打たないそうです。その根拠は重症者数とか死亡者数が増えていないからです。たしかに8月1日時点の重症者数は全国で80人、東京都は15人まで減っています。これは驚異的な数字なのですが、死亡者数ではいったいどういうこっちゃ?という数字もあります。
東京の死亡者数を比較します。
2月から6月末までの累計陽性者数は6316人で死亡者は325人
7月1ヶ月間の陽性者数はほぼ同数の6847人で死亡者は7人
陽性者数はほぼ同じなのに、死亡者数は325人から7人へ。東京の死亡者は7月になってそれまでの46分の1に激減したというのが単純な計算の結果です。月別死亡者数で見ても5月185人、6月20人、7月7人と激減しています。
理由としては、「37.5℃以上4日間」しばりをはずすなどの検査条件の変化や、若者感染比率の高さ、治療法の進化などが言われ、ある程度死亡率が下がるのは理解できます。しかし特効薬が生まれたわけではなく、ほぼ同じ感染者数あたりの死亡者数が46分の1になるという結果は説明がつきません。
[参考]#臨時国会の即時招集を求めます
唯一想像できる理由として、4月初旬から5月いっぱいまで、東京では医療関係者がどう奮闘しても救えるはずの命が救えない医療崩壊が起きていたのではないかという疑いさえ抱いてしまします。結果には必ず合理的な理由があるはずですが、今のところ専門家から明解な説明はありません。
<重症者の割合が東京と大阪でまったく違う>
次に重症者です。入院者数に占める重症者の割合を7月31日の数字で比較します。
東京都:入院者数1197人、重症者数16人、割合=1.3%
大阪府:入院者数294人、重症者数19人、割合=6.5%
入院者数が大阪より4倍多い東京が重症者数では大阪より少ないのです。東京が大阪と同じ割合で重症者が出ていたら78人となり、都が確保した100床の重症者ベッドは残りわずかです。東京と大阪では何が違うのか、入院の基準や重症の定義が同じなのか疑問です。
<全国入院を要する者数が1ヶ月で9倍!でも・・・>
検査の結果入院を要する者の数が7月1日に全国で約1000人だったものが、7月31日には約9000人になっています。もし重症化率が東京並みの1.3%なら117人、大阪並みの6.5%なら585人が重症ですから大変なことになっているのですが、重症者の実態は8月1日時点で80人です。なんと現実の重症化率は1%にも満たない0.8%です。まさに奇跡のような数字です。この理由も専門家からほとんど説明されていないのですが、一部にタイムラグ説があります。
<感染者数と重症者数のピークはズレる>
春の第1波で1日の新規感染者数ピークは4月10日です。この日重症ベッドにいた人の数は全国で122人でした。この第1波で重症者数が最大の328人を記録したのは4月30日ですから、感染者数のピークと重症者数のピークには20日ほどのタイムラグがあります。その間に重症者数は2.7倍に増加しています。
第2波では今のところ7月31日の1580人が全国新規感染者のピークで、この時点の重症者数は78人です。第1波の「タイムラグ20日、2.7倍」に学べば8月20日ごろには2.7倍の200人が重症者ベッドにいることになります。全国で200人なら医療崩壊までは行かずに済みそうです。ただし7月31日がピークとは限りませんので、今後とんでもないピークが来て、とんでもない倍率で重症化したら、地獄を見る可能性は消えていませんが。
こうして見ると、7月の第2波では極端に重症化と死亡者が激減しています。これは感染拡大防止よりも経済回復を願う安倍政権にとっては格好のデータです。GoToも緊急事態宣言もグダグダ言い訳をしていないで、これらのデータの科学的、合理的な裏付けを専門家にしてもらって実証すれば国民は喜んで旅に出るし、社会活動を活発化します。
ご存じのとおり、データや議論を隠蔽・ねつ造・改ざんせずにフルオープンとし、自由、公平な論議の上で合理的な結論を求めないことが安倍政権の最大の欠点なのです。これをあらため、重症化と死亡者減について、合理的に説明し、どんな質問にも答えられるかどうかが、安倍政権の復活のラストチャンスのように思うのですが。
<オマケにこんなデータを>
5月7日要入院治療者が11286人いたのですが、翌8日には一気に5000人減って6302人になっています。この日の棒グラフはまるでエル・キャピタンの壁のごとく垂直降下です。
実はこの日の記録では一日で約8000人が退院あるいは解放されています。5000人との差、3000人は何なのか?この日、ぜったい何かがあったのです。ナゾです。
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政治ジャーナリスト・田崎史郎氏によれば、GoToトラベル キャンペーンの東京除外は7/15日の夕方に安倍首相、菅官房長官、今井総理秘書官の3人で決めたそうです。結果は大混乱、安倍首相は知らんぷりですが、こんな重大なことを3人で強権発動できるなら1秒でも早くやるべき事があります。PCR検査の「桁違い拡大」です。
ほぼ国民全体が増やせ、増やせと言ってるのに、いつになってもノロノロ。その理由は法律の壁、行政制度の壁などなど言われますが、国民の気持ちは「つべこべ言わずさっさとやれよ!」でしょう。これまで国会軽視、閣議決定、法解釈変更など禁じ手を使いまくってきたのですから、その「バカ力」を「善行」に使うべきです。
いくら大枚の税金をぶち込んで経済を刺激してもコロナは収束しません。でもコロナを収束させれば経済は戻ります。しかしワクチンも特効薬も副作用確認に時間がかかります。いますぐに有効な手立ては徹底的なPCR検査です。PCR検査に副作用はありません。
東北大学の賀来満夫教授や上昌広氏をはじめ、主張する人が増えているのが「経済をまわすための桁違いのPCR検査」です。多くの有識者の声をまとめれば、3つのこと実現して検査を桁違いに増やせば、経済をシュリンクさせずにコロナと戦えるのではないでしょうか。
(1)受け入れ施設の確保
検査数が桁違いに増えれば桁違いの感染者が生まれます。無症・軽症者隔離ホテル、病院ベッド、および要員確保が必要です。これが前提で(2)、(3)に取り組むことが出来ます。
(2)検査数を桁違いに増やす。
ちまちまと1万だ2万だという話ではありません。10万、100万単位でPCRする話です。
7月17日、参院予算委に参考人として東大先端研の児玉龍彦氏が呼ばれ、強烈な危機意識とクラスター論に変わるエピセンター論が話題となりました。この時、ほとんどメディアが取り上げていないものの、とても気になる箇所がありました。(以下は筆者が趣旨を変えずに短文化)
児玉「私もPCR検査を毎週月曜日にやっていますが1人1分、補助がいれば私でも1時間に60人できます。検査は集約的にやれば危険性も減り、コストも10分の1になります。プーリング(複数の検体をまとめて検査)で8検体まとめると1万検体の検査で8万人分を検査できます。ただちに国会を開いて法律を最適化して、これを今日からやらないと、この感染者数を見ましたら、これが2週間前だとしたら本当に大変です。」「東大でも、どこか会社でも5000人を1日でできます。8検体プールですと4万人できます。」
この発言は児玉氏が費用見積もりまで示したことから議場にうす笑いが起きて、深刻さの印象がうすめられてしまいましたが、すでに日本にある自動PCR検査システムを使えばPCRは桁違いに増やせること、また抽出試薬を含む検査キットなどの日本での開発も進化していることを語ったのです。
国立衛生研や保健所の縄張りや権限、疫学調査用検査がどうこうと言っていないで、国会で法律を変えれば、すでに必要なシステムはあります、検査キットもあります、要員もいます、これをすぐにやるかやらないかは国会議員のみなさまの責任ですよ、と児玉氏は提言していたのです。
(3)経済活性化のためのPCR検査システムの緊急開発
[500人が20分間で、だ液検体採取と感染判定ができる移動可能システム]ができたらどうでしょう。おまけにもっと小型で、20人が15分で検査できるとしたら。このシステム1台で8人プーリングなら1回に4000検体、これを1時間で3回転させれば12,000検体をPCRできます。プロ野球やJリーグなどで2~3台あればどの試合も数万の観客が大声出してハグもハイタッチもし放題です。みんなコロナ陰性と証明された人ですから。
空港・バスターミナル・劇場・映画館や音楽イベント、ホテル、旅館などもこれで感染不安は解消です。ホストクラブやキャバクラ、カラオケもに20人15分のより小型システムを用意すれば、お客もキャストもスタッフも全員陰性!シャンパンタワーでも濃厚接触でもどうぞご遠慮なく。企業やスーパー、商店街も規模に合わせたシステムを用意して問題解決です。どうでしょう、こうなったら経済活動はぐんぐんと活性化するのではありませんか。
問題は、それが現実に可能かです。上氏によれば「30分検査」はオランダで実現一歩手前、各国が競争状態だと言うのです。いまこそ世界に冠たる改良技術の王者ニッポンの知恵と技術の出番です。総力を結集すれば出来ないはずはありません。事実としてニッポンの現実も進んでいます。たとえば、
*だ液検体採取
・国は「発症9日経過後」という縛りがあった無症状者のだ液検体採取を許可しました。
・すでに大阪府がバス利用の街頭「だ液検体採取」を開始しています。
*感染判定システム
・神奈川県はスマートアンプ法によるアタッシュケース型で持ち運び可能なPCR検査システムを7月中に100セット供給可能と発表しました。20分~40分で鼻腔採取8検体を判定しプーリングも可能。1台5h稼働で320検体検査可能ですから、100台稼働すれば32,000検体/日、となります。これはすでに実現しています。
これに加えて児玉氏が国会で、タカラバイオの試薬や検査キットなどかなり良いものが日本で出てきていると言っています。タカラバイオばかりか、ちょっと目についただけでも、日本板硝子、日本BD、バイオ・ラッド、東洋紡、島津製作所、クラボウ、杏林製薬、川崎重工、トヨタ、ホンダなどなどズラリ。この他に理研などの研究機関、各大学、製薬会社などが必死に取り組んでいます。こうした日本の総力を結集すれば、『だ液検体、500人(10人プーリング)、20分で現場判定できる移動可能システム』というスペックは実現できそうではありませんか。
テレビでは衝撃度の高い児玉氏の言葉がたびたび流れます。
「今日の勢いで行ったら 来週は大変になります。 来月は目を覆うようなことになります。」
実はこの言葉の先に児玉氏は力強くこんなことを言っています。
「コロナ対策は東アジアの交差免疫のある日本ならば必ずできます。」
もちろん交差免疫にまかせていればコロナを克服できるなどと言っているのではありません。日本の高いポテンシャルを総結集すれば「コロナ対策はできる」と言っているのです。実現の鍵は「技術」ではなく日本の力を総結集するパワーです。明確な達成目標と期限を設定して権限を集中、情報はフルオープン。その中で法規制や組織権益、数々の縄張り意識などをぶち破り、桁違いのPCR検査を実現するブルドーザーが必要です。
安倍総理はオトモダチ加計学園のために「規制の固い岩盤にドリルで穴をあけた」と言って獣医学部をプレゼントしました。ところがPCR検査拡大にはブルドーザーどころかドリルひとつ手にしません。気力喪失の安倍総理こそが一番の障壁岩盤なのかもしれません。
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いやービックリしました。温厚な尾身会長があれほどお怒りになるとは。
7月6日、専門家会議を取りつぶした政府は、新たに新型コロナウイルス感染症対策分科会を立ち上げました。その初会合記者会見で尾身茂会長は明らかに怒っていました。その怒りの内容は3月10日を記憶する者にはさらに驚くものでした。
去る3月10日、国会に参考人招致された尾身氏は極めて強く憂慮すべき事態とその緊急性を訴えました。それから119日たった7月6日、尾身氏は強い怒りとともにあの時とまったく同じことを訴えました。それは4ヶ月という時間が無為に流れたということでした。政府はこの間、有効な手立てを打たなかったのです。では3月10日に尾身氏が訴えたことは具体的に何だったのでしょうか。4つありますが、事実上はひとつのことです。
1、保健所、自治体が疲弊。体制の整備、人的・財政的な補充。
2、保健所の職員は目一杯、負担軽減と人的・財政的支援。
3、自治体や保健所の広域連携、迅速な情報共有を実現。
4、対応医療機関を選定し財政的、医療器具、マスクなどを供給。
7月になった今、どれかひとつでも実現できていますか?
中でも尾身氏が7月6日に西村大臣の眼前で極めて強く主張したのは「保健所の強化と情報共有」の問題でした。その語気の強さに気圧されたのか、西村担当大臣も安倍総理もその後は記者発表に「保健所体制の強化」といった文言を加えるようになりました。しかしこれは言葉に出せば済むような簡単な話ではなく、政府が本腰を入れて取りかからなければ実現できないことです。
保健所というのは国の機関でもなく、東京23区や地方大都市では都や県の機関でもありません。国立・都道府県立・区市町村立と並立する学校・教育委員会と似ているのかもしれませんが、お役人得意の縦割り組織でないために運営責任や権限、指示命令系統が複雑です。だからといってコロナ非常時に肝心な組織の疲弊を傍観していたのは政治の怠慢です。政治は4ヶ月怠慢を続けた上に国会を閉じて長期休暇に入ってしまいました。至急国会を再開し、国会議員は給料分は働くべきですが、尾身氏の怒りにもかかわらず安倍政権にまるでやる気が見えません。
尾身氏の訴える「情報共有」も、保健所の問題とリンクしますが、情報集約のスピードも正確性もいまだにボロボロです。
厚労省は5月29日、新コロナ感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)の運用を開始しました。今時FAXかよと呆れられていた感染者情報などをようやくデータベースシステム化したのです。ところが、運用開始から1ヶ月以上もたった7月の「野党合同ヒアリング」でこれがまるで機能していないことが明らかになりました。国と保健所とはオンラインでつながったものの、各病院と保健所間はいまだにFAXでやり取りしていると厚労省が言い、しかも機能不全の理由さえ答えられない有様だったのです。
[参考]蓮池透氏コメントを脇に追いやる御用メディア -植草一秀
そして、まさか!と思われるでしょうが、いまだにいくつかの自治体については、厚労省職員が各自治体のホームページにアクセスし、そこに上がっている数値を見て国のデータとしているというのです。しかもそのデータにしてからが、必ずしもデータの定義や集計期間の規程などのプロトコルが統一されていないなどメチャクチャ。さらに驚くべき事に、自治体から国に報告されるはずの正式な諸データはリアルタイムどころか、場合によっては数日遅れ、自治体によっては2週間遅れもあると厚労省が認めているのです。
こんな途方もない話、信じられないでしょうが、これがわが日本国政府の実態です。尾身氏がお怒りになるのも当然とは思いませんか。
(上記一連のあまりのことに筆者の言う内容が信じられない方はYouTubeで「7月7日野党合同ヒアリング」を検索し、前半部分をご覧になって下さい。現実を目の当たりにされて呆然とされるはずです)
小池東京都を見ても、なんだかんだとスローガンは猫の目のように変転し、時に目先を変え、データの取り方や処理法まで変えてしまうので数値も変わります。小池知事の発言にしても、その日の感染者数に新宿のホストクラブの方々の検査データが含まれているような言い方をしても、実は新規感染者200余名の中にそれは含まれていないという情報が後から出たりします。以前、NHKの「日曜討論」で小池知事は「都は医療防護具の備蓄は充分」と断言していましたが、そのころ都立病院ではガウンを使い回すなど防護具不足にあえいでいました。先日も小池知事はホテル療養の準備は充分と断言しましたが、その日のニュースでは契約していた5つのホテルのうち3つが契約切れ、ひとつも近々契約が終わり、残りが1つとなるため至急手当が必要と伝えていました。
安倍総理と小池都知事のお二方、ウソは平気で、発言は額面どおりでないことが往々にしてあります。
7月に入って200名を越える新規感染者が出たときに小池都知事は、4月の200名越えの時より3~4倍の検査をしているので感染者が増えるのは当然といったニュアンスを滲ませました。しかしこれも極めて不正確な発言です。ざっくり東京の平均的な数字を見ると、
*5月は約1500/日の検査で新規感染者は数人~30人/日
*6月は約2000/日の検査で新規感染者は約20人~50人/日
*7月は約3000/日の検査で新規感染者は約100人~200人/日
このように検査数と新規感染者数はパラレルな関係ではありません。当たり前です。「37.5度・4日間以上・呼吸症状あり」の人に限って検査した1000人と、まったく症状のない濃厚接触者まで含めた1000人のデータを比較しても意味がありません。それを同等に比較する小池知事の発言はまやかしです。問題はシンプルで、7月に入って新規感染者数が大幅に増加してきたことです。
安倍総理の発言も問題です。『4月に較べ重症者は大きく減っており、感染者の多くは20代30代で医療体制は逼迫した状態ではないと承知している』
まさに希望的楽観論ですが、合理的根拠はありません。
4月は「37.5度・4日間以上・呼吸症状あり」と縛りをかけ、重症化リスクの高い感染者を選び出すのが政府の方針でした。無症状や軽症の可能性が高い20代30代は検査数も少なかったのです。
7月は20代30代も検査対象とされて感染実態が見えてきました。結果、事実として多い若年感染者は感染を拡げ、ほどなく40代50代、高齢者へと拡がり、重症者も増えるであろうことは容易に想像できます。そういう7月危機に向かう医療体制の備えを知りたいのに、今は逼迫していない、としか答えない総理の逃げ腰コメントに心配が募ります。
7月10日、小池都知事と西村大臣が会談、200名越えに対して、お互いに特段の規制処置を執らないことが明らかにし、さらに政府は「GO TOトラベルキャンペーン」の大幅前倒し実施を発表しました。これまた合理的根拠のない希望的楽観論による方針です。
一方で、8割おじさんたる北大・西浦博教授は京大IPS細胞研究所の山中伸弥教授との対談で、「新コロナとの戦いは野球で言えばまだ2回の表、これから何度も攻防をくり返すだろうが、私は必ずしも明るい見通しは持てない」と語っています。
科学者が悲観論を唱える中で政府は無策のまま根拠なしの希望的楽観論で進みます。尾身会長の怒りは、こんな政府の中で老骨に鞭打ちながら奮闘せざるを得ないことへの苛立ちなのかもしれません。もはや我々に残るは神頼み。願わくば、再び日本に元寇をはねのけた神風が吹かんことを。
心ない人へ、ひとこと付言を。
西浦氏が、8割行動抑制など自説を発表するたびに、たくさんの脅迫行為を受けていたことを明らかにしました。中には刃物を送り付けたり、家族を脅かすような脅迫も。それでも西浦氏は科学的結論が脅迫によってねじ曲げられてはならないと、「物理的被害を受けるまではなんとか頑張ろうと決めた」と語っています。
人は弱いものです。まして家族や友人を巻き込むとなれば、人はあなたの脅迫に屈するかもしれません。でも、それはあなたの勝利ではありません。どれほどの暴力で一時人を黙らせようとも、事実を変えることはできません。そして、もし科学者が脅迫に屈し、科学的合理性にもとずいて正しいと信ずることを言わなくなったら、あなたも、あなたの大切な人もすべての人々が大変な被害者になります。
どなたか、あるいはどなたたちか知りませんが、どうか脅迫や恫喝はやめてください。
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安倍政権の術中にはまって、今もって「訓告にしたのは誰か」なんて言ってる方がいます。問題はそこですか?
<「訓告」はまやかし、ゼロ懲戒で「お咎めなし」が真実>
黒川元検事正は内閣が任命し、天皇陛下から直接にその職を認証される「認証官」という超高位の国家公務員でした。国家公務員法第84条では「懲戒処分は任命権者が行う」と明記されていますので、黒川検事正を懲戒処分できるのは任命権者の内閣だけです。さらに「任命権者は非違の程度や情状によって懲戒処分の内容を決定し、処分の選択については任命権者の裁量」ともあります。ですから法の決まりは、
任命権者でない法務省・検事総長に黒川氏への懲戒権はない。任命権者である安倍内閣だけに選択・内容を含む黒川氏への懲戒権がある。では、今回の処分はどうしたのか、
安倍総理 「処分は検事総長が事案などの諸般の事情を考慮して適切に適正に行った」
菅官房長官 「訓告処分は法務省の調査結果に基づいて法務省と検事総長で決定した」
二人とも「処分」という言葉であたかも「懲戒」をしたかのように印象づけていますが、安倍内閣は懲戒処分などしていません。「訓告」は懲戒ではなく、法務省側がひと声注意したフリをする程度の「監督上の措置」にすぎません。ですから羽より軽いと批難される黒川氏への処分ですが、安倍内閣の決定は羽の重さすらない「お咎めなし」です。
<安倍内閣による国民差別!憲法違反・・・>
この「お咎めなし」は差別です。実証は一例で充分でしょう。
自衛隊員9人は黒川氏と同じ点ピンの賭け麻雀をして国家公務員法の懲戒処分である停職処分などを受け、一部は書類送検されました。これらの処分は給与・賞与を含む人事考課に影響し、人事履歴には懲罰の記録が残ります。
一方で高位の認証官である黒川氏は、コロナ自粛のさなかに自衛隊員と同じレートで麻雀賭博をくり返しながら懲戒なし。逮捕、送検はおろか人事考課への影響もいっさいありません。この行政処理の差は憲法14条1項の原則、「行政は、国民を合理的な理由なく、差別してはならない」に反する憲法原則違反でしょう。自衛隊の皆さん怒るべし、これが皆さんが命がけでお守りする安倍政府の事実です。
<調査などしていない、黒川氏の話を少し聞いただけ>
黒川事案の調査はたった1日程度で法務事務次官の面談と電話による聞き取りだけでした。
・賭け麻雀をした新聞社員への調査、新聞社への確認はせず、ただ記事を読んだだけ。
・朝日が日付を公表している4月の2回について日時確定を避けて確認せず。
・3年間に朝日は月2~3回、産経は数回と公表。法務省は一方的に月1~2回と認定。
・産経提供ハイヤーについて便宜供与の調査せず。
・黒川用公用車の不正利用に関する運行履歴調査せず。
・別メンバーとの賭け麻雀に対する調査せず。
・飲食の提供を受けた事実についての調査せず。
・賭け麻雀の他省庁処分事例を調査せず。
・過去3年程度の常習性について日にち特定調査せず、「訓告」評価の対象外。
・定年延長承諾書提出の時点で常習賭け麻雀の不申告を問題とせず。
結局、何も調べていないのです。こんなもの、調査とは言えません。
<産経記者が記事で便宜供与を指摘>
驚くことに事件発覚後に産経新聞の当事者記者自らが記事を書いています。この中で、自分が用意したハイヤーを黒川氏が利用したことについて、5月1日の料金が2万5000~3万円ほどで「便宜供与となる」としたのです。(プレジデントオンライン 5月27日より)
ハイヤーを用意し同乗した当事者が「便宜供与となる」と言っているのに国は調査もせず、「訓告」の評価にも加えていません。
<法務省調査に何の意味もない>
結局、「訓告」と判断した評価対象事実は「5月に2回賭け麻雀をやった」これだけです。ほかはすべて考慮外です。安倍内閣の調査報告はどれもヒドイモノばかりでしたが、今回は調査とは言えない役立たずの鼻くそみたいな代物です。安倍内閣に懲罰する気がないなら、正しい調査は咎の重さが増すだけで余計です。調査に意味はありません、法務省側ができる「措置」は罪が十でも万でも「訓告」が目一杯ですから。
<これほどの暴挙を強行するのはなぜ>
高級官僚の常習賭け麻雀に懲戒処分をしなければ世論が反発し、国会やメディアで追及されることはわかりきっています。それでも安倍政権はよほどのバカでもやらない暴挙を押し通そうとします。
辞職した黒川氏に利用価値はないのですから、コロナ自粛下の賭け麻雀という世間の風当たりが強い今回ぐらいはふつうに調査をし、ふつうに懲戒すれば良かったはずです。定年延長の強引な閣議決定や解釈変更が批難されても、それは「訓告」でも同じです。ふつうの処理の方がよほど政権への打撃は少なかったでしょう。しかし暴挙強行に慣れきった安倍内閣にふつうにやろうと考える頭脳回路はなく、今はネットで一部の方がこういう疑いにふれています。
「安倍が地獄に堕ちるような数々の検察情報を黒川氏は握っている。だから甘い処分は過剰に恩を売って口止めするヤクザ的手法。」
もちろん、なんら証拠のない憶測です。しかしあの相澤冬樹氏がネット番組の対談で、黒川氏は森友の捜査段階で「不起訴」を明言していたと語っているように、「黒川氏に懲戒なしを強行」となれば、なぜそうまで無理するのか黒川氏と安倍政権の関係性に疑問が生まれます。
そしてもうひとつ怖いのは安倍政権が麻薬中毒者のように暴挙中毒になっているのではないかということです。どこかの知事さんは東京アラート、ロードマップ、ステップワンツー、ウィズコロナと相変わらずの英語中毒のようですが、これはいささか不快で済む話。
他方、安倍政権が、ゴマカシ、印象操作、大盛りホラ話、事実隠し、責任転嫁の中毒状態になっているのならリアルな恐怖で、そんな思いさえ抱かせる安倍内閣の最新暴挙が「黒川懲戒ゼロ」です。5月末、共同通信世論調査で黒川処分が甘すぎる=78.5%。すごい数字です。いくらなんでも「懲戒ゼロ」だけはナシでしょ。
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安倍総理大臣は加藤勝信厚生労働大臣を罷免すべきです。加藤厚生労働大臣はこれまでの不作為と能力不足を謝罪し、議員辞職すべきです。
5月5日こどもの日、BS-フジ「プライムニュース」に出演した加藤勝信厚生労働大臣はPCR検査の目詰まりのひとつと言われる「37.5℃/4日以上」の相談ルールについて以下のように弁明しました。加藤トークは冗長ですががまんして読んでいただきたい。
「我々が作ったのは37.5℃を超えて4日間たったら必ず行ってください、そこはカットラインではなくて、例えばこのくらいの風邪なら大丈夫だよと言って3日4日たってしまう。でも今回はコロナウィルス感染がありますから強い倦怠感があれば待たずに行ってください、高齢者はなおさらですと申し上げてきたんですが、それがどこかでカットラインになってしまった。そうじゃないんですとさんざん言ってきたんですけど、なかなか我々の努力不足で浸透していなかったということがあります。」
加藤勝信厚労相の言葉はイリュージョンです。聞いているとふわーっと音が通り過ぎ、語られた内容、その痕跡すらも空中に消えて行きます。もっともらしい長広舌を読み返してみれば、それは出来ないことの言い訳にすぎないことがわかります。そして「どこかでカットラインになってしまった」という言い訳はウソです。3月に50代の父親を失ったご家族の言葉がそれを言い表しています。
『もしあの時すぐに検査をして入院ができていれば・・・どこかの偉い人たちが一生懸命考えた基準によって父や家族は犠牲になっている』 (TBS Nスタより)
2月17日に厚労省は都道府県や保健所に「37.5℃/4日以上」という「相談の目安」を通知します。これにより、基本的にこの条件を満たさなければ相談センター(保健所)へ相談することもできなくなりました。相談センター側は「37.5℃/4日以上」ルールに加え、厚労省通知により基礎疾患や重症化の怖れ、肺炎の兆候などを勘案して相談者を絞ります。結果として厚労省通知によるカットラインをクリア出来るのはきわめてわずかな相談者だけになります。
発熱者のほとんどがはじかれる事態に批判の声が高まり国会も加藤厚労相にせまりました。そのたびに加藤厚労相は長広舌のイリュージョン答弁でその場逃れをくり返してきました。言い訳で状況は変わりません。相談センターへの電話がつながらない、お母さんとお子さんが高熱が続いてもPCR検査をしてもらえない、などという声が溢れると、3月中旬、加藤厚労相は新たな通知を出したと釈明します。しかし「37.5℃/4日以上」ルールは放置、変わらぬ事態に怨嗟の声がますます高まります。そして4月下旬から使い始めた新たな言い訳が冒頭の「いつの間にかカットライン」という「国民の誤解」論法です。加藤厚労相はこの屁理屈を5月5日のBS-フジまで使いながら、その舌の根も乾かぬ翌朝、「37.5℃/4日以上」の相談ルールを見直す、と表明しました。謝罪もせずに、どのツラ下げて、です。
見直すのは結構です。ですがこれまでの長い月日、強い強い国民の批判にもかかわらず加藤厚労相はただ言い訳をくりかえし、命にかかわる重大な誤りを放置しました。行政に瑕疵はあります。ある程度の許容範囲を持たなければ官僚は仕事が出来ますまい。しかし空疎な言い訳をくり返し、長期間の不作為により多くの重症化や命を落とす国民を生んだ大臣の責任はきわめて深刻です。ある開業医はテレビで「傷害あるいは殺人と言いたくなるような・・・」と表現しました。加藤大臣が責任から逃れることなど許されようもありません。
加藤厚労相の非はこれだけではありません。羽鳥真一モーニングショーでジャーナリストの青木理氏は2ヶ月半たってもPCR検査を増やせない政府を「無能と言うしかない」と断じました。まさに加藤厚労相こそ無能と言うべき状況が続いているのです。
[参考]<安倍首相、腹を括くって戦え>コロナに強権も忖度も通用しない
1月半ばに最初の日本人感染者が現れて以来4ヶ月です。この間、クルーズ船対応では初動に遅れ、3000人を船内に留め置きます。厚労省は1日に100件程度のPCR検査しかできず、船外隔離施設の確保も出来ませんでした。結果船内集団感染により多くの方が亡くなります。この過程で、加藤厚労相が行政能力、政治力を発揮することはありませんでした。
感染が市中に拡がっても、今もって市中感染率の調査すらできずにいます。2月末に安倍総理が「かかりつけ医が必要と考える場合はすべての皆さんがPCR検査を受ける能力を確保する」と意気込んだものの、加藤厚労相は総理の指示を実現できていません。
4月6日、総理が「PCR検査能力を現在の倍の2万件に増やす」と踏み込むも、これも実現できていません。そればかりか、なんと加藤厚労相はバカなことを言い出します。「処理能力を2万件に拡充するが2万件検査するとは言っていない」(国会4月30日)まさにごはん論法の権化らしい言い逃れですが、これは安倍総理の顔に泥を塗り、そもそも2万件の検査をしないなら、なんで能力を2万件に増やすのか、と非難を浴びます。
PCR検査については、検体採取用綿棒、遺伝子抽出試薬、遺伝子増幅器、検体採取要員、運搬スタッフ、検査技師、保健所職員など、今もってありとあらゆるものが不足していると言われ、厚労相はどれも解決できていません。この状況下、安倍総理は会見で「PCRに本気で取り組んでいるのか」と厳しい質問を直に浴びて前代未聞の赤っ恥を曝しました。
さらに京大IPS細胞研究所の山中伸弥教授は安倍総理出演のネット番組で、全国の大学や研究機関には多くのPCR検査機器やスタッフが存在し、総力を結集すれば総理の言う2万件はおろか10万件の検査も可能と発言しました。日本には大量PCR検査が可能な全自動検査機が数千台あり、これが活用されていないのです。理由は、旗振り役がいないから。厚労大臣が旗を振らずにいったい誰が振るのでしょうか。
PCR検査ばかりではありません。加藤厚労相はマスクはおろか、医療機関に十分な医療防護具を用意することも出来ません。そればかりか3月はじめに専門家会議が必死に訴えた保健所財政、人員体制の強化も実現できず、空き病床確保目標も未達成です。その補完策である宿泊療養施設に関する方針も最初は自宅療養に積極的で腰が定まらず二転三転、結果自宅療養が増えてしまう状態です。
人工心肺、エクモなどの器具も操作する人員も不足のまま。担務の休業補償助成金は中身も悪評なら煩雑な手続きに非難囂々。あげくの果てに地方自治体との意思疎通も改善できず、基本中の基本データである陽性率をはじめPCR検査結果の即日集約もできていないと指摘されるに至っては、いったい厚労省は何が出来るの?状態です。加藤大臣は地方に責任、と言いたげですが、責任があるのは加藤厚労大臣です。
感染症により、残念ながらたくさんの尊い命を失い、今も重症に苦しむ方々がおられます。それでも私たちは欧米のような爆発的感染からは逃れています。これは日本政府が国民を救っているのではなく、日本国民が政府を救っているような気がします。1月以来、政府の醜態を見せつけられてはそうとしか思えません。
しかし必ずやってくる次の感染拡大には、国民の力だけでなく、政府や政治家に力がなければあまりに危険です。いま司令塔不在の日本では厚生労働大臣の力量が重大な鍵となります。言葉のイリュージョニストにすぎない加藤勝信氏にその力がないことはこの数ヶ月の振る舞いや実績で明らかです。
台湾には衛生福利部長(厚労大臣相当)の陳時中氏という司令塔がいます。彼は全権をもって素早く大胆で合理的な施策を尽くし、記者の質問がすべて終わるまで毎日説明を尽くして国民の信頼を得ていると言いいます。
韓国では政府・中央防疫対策本部長の鄭銀敬(チョン・ウンギョン)氏が司令塔としてITを駆使し、大量のPCR検査を実施するなど、国民から強い信任を得ています。彼女は髪を洗う時間を惜しんで短くカット、白髪も染めず、何時間寝ているかという記者の問いに「1時間は寝ている」と答えたと言います。
もし安倍総理大臣が対策に本気になっておらず、加藤氏が罷免されないのなら、加藤氏ご自身でご自分を大臣の座から消し去るイリュージョンをお願いします。そして、代わりに司令塔にふさわしい人物を舞台上に出現させていただきたい。切にそう願います。
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『えっ?本気で戦ってるんじゃないんですか?「本気で戦って下さい」って総理大臣が言ったんじゃないんですか?』4月9日TBSテレビ「ひるおび」で司会の恵俊彰が投げかけた言葉に、コメンテイターの田崎史郎、八代英樹がたじろぎました。
4月7日安倍総理大臣は緊急事態宣言を発しました。長い「瀬戸際」が「崖っぷち」になり、「緊急」に厳しい対応をすべき「事態」になったという宣言です。だから特措法を適用し、出来ることを「緊急」にやるのだと国民は受けとめました。ところが、
「まずは「自粛」をお願いして、その効果を2週間ほど見てから・・・」
ウソでしょ、「自粛」のお願いなら国民はとっくに聞いてました。しばらくその効果を見るなら緊急事態宣言なんていらないじゃありませんか。緊急なのに2週間も様子見でいいんですか、って誰しも思います。
安倍総理は、専門家会議の意見を論拠として、国民が8割の行動自粛をすれば感染拡大は防げると言いました。同時に2週間程度その自粛効果を見定めるとしたのです。あたかも専門家会議が2週間の様子見を進言したかのように聞こえました。しかしこれは安倍政権お得意の印象操作でしょう。「2週間様子を見る」などと専門家会議が言うはずがないのです。
これを証明する事実があります。安倍総理が論拠とした8割説を計算したのが北海道大学教授・西浦博氏です。その西浦氏ご自身が政府の様子見説明を知ってこう言っているのです。
『休業要請などを2週間待ってからというニュースに耳を疑いました』(4月9日BS-TBS「報道1930)
さらに安倍政権の方針に対し怒りの発言が続きます。
『日本は手遅れに近い。対策を強化しなければ日本では数十万の死者が出る可能性がある』 WHO上級顧問・渋谷健司氏(4月9日テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」)
『2週間様子を見るでは東京はもたない』 東京都医師会会長・尾﨑治夫氏(4月9日TBS「ニュース23」)
なぜこんな事になったのか、理由は明快です。オリパラ開催を強く意識して世界に感染実態を小さく見せることに腐心していた政府は、感染の世界的蔓延により延期はするものの来年7月23日開催という確約を素早く取り付け、すぐに安倍総理の任期中オリパラ開催が決まります。これでやっと日本の感染対策は1段ギアが上がりますが、それでも安倍政権は経済への影響懸念を優先し、後手後手でぬるい対応に終始していました。しかし、感染拡大は止まらず、危機感の高まりに追い込まれて発出したのが緊急事態宣言です。
[参考]コロナ被害「補償」は自己申告?! 支払日不明の緊急施策では生命が危ない
緊急事態宣言により発布される特措法上で強い権限を持つのは都府県知事です。しかし危機感のうすい安倍総理の頭の中は「コロナ」より「経済」です。小池都知事が考える感染抑止手段は安倍官邸の考えとはかけ離れたものでした。あわてた安倍政権は緊急事態宣言を発する当日になって、特措法の「対処方針」を変更するという荒手に出ます。各知事に「国との協議」を義務づけ、「総理の自粛要請の効果を見極めること」という一文を加えて知事権限の主要部分を縛ったのです。これを知った小池都知事が言ったのが
「社長だと思っていたら、天の声がいろいろ聞こえてきて、中間管理職になったようだ」
冒頭の恵俊彰の言葉にもどります。
『えっ?本気で戦ってるんじゃないんですか?「本気で戦って下さい」って総理大臣が言ったんじゃないんですか?』
自民党・二階俊博幹事長 『8割にするとかってできるわけないじゃないですか』
自民党コロナ対策本部・新藤義孝議員 『緊急事態という観点から憲法議論を進めたい』
これでは自民党がコロナと本気で戦っているとはとても思えません。
2ヶ月もたって、PCR検査実績は進まず、医療従事者はマスクはおろか感染防護具の枯渇に悲鳴を上げ、病床確保はままならず病院代替施設不足も明らか、保健所をはじめ現場スタッフは疲弊しきっています。加藤厚労大臣はいつまでたっても「進めていきたい」「文書でお伝えをしている」「検討を進めている」などと言い続け、西村特措法大臣はぺらぺらと中身の薄い説明をするばかり。菅官房長官は存在の気配を消し、麻生副首相や閣僚も本気で戦っている姿は見えません。肝心の安倍総理からして覇気なくやってるフリばかり。事業規模108兆とゴマかしても真水はその1/4ほどのケチぶりがばればれです。
新型コロナとの戦いに政府の誰が、満身の迫力と熱を持って国民に訴えたでしょうか。緊急事態宣言の安倍総理の言葉に人々を突き動かす溢れるような危機感がありましたか。
政府はやってるフリと出来ないことの言い訳ばかり。政策決定がどこで行われているのか、誰が公式のスポークスマンなのかも分かりません。まるで政策決定は総理周辺の官邸官僚の思いつき、厚労省や各省庁は下請機関、スポークスマンはテレビで安倍さん擁護に汗をかく田崎史郎氏であるかのようです。そして毎日感染者はぐんぐんと増え続けています。
そんな中、もうすぐ466億円の布マスク2枚が届くそうです。466億円あれば、危険な現場で疲弊するスタッフ20万人に23万円づつ配れます。軽症者隔離用ホテルなら1万室を2ヶ月間借りられます。保健所職員応援アルバイト10万人を1ヶ月半雇えます。布マスクなら自分で作れます。
また、恵俊彰の言葉に戻ります。
「本気で戦って下さい」って総理大臣が言ったんじゃないんですか?
この期に及んで、くり返し責任逃れを口にする安倍総理。もし無為により多くの命を失えば、その責任から逃れることはできません。ウィルスは忖度をしません。ウィルスは強権にひれ伏しません。
安倍総理、ご自分こそ本気で戦って下さい。
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話題のテレビドラマ『コタキ兄弟と四苦八苦』の最終回、サブタイトルは「愛別離苦」。エンディングでスターダストレビューの『ちょうどいい幸せ』が聴こえてきた時、知らぬ間に涙があふれました。あるご夫妻の哀しみを連想したからです。この曲は、いつもと同じようにくりかえされ「なんてない日々」の幸せを「ちょうどよい幸せ」と歌ったものです。
財務省近畿財務局に勤務する赤木俊夫さんと昌子(仮名)さんはとても仲の良いご夫婦でした。赤木氏は「ぼくの契約相手は国民です」が口ぐせの、几帳面で責任感の強い公務員。篆刻や落語、YMO、奥さまとの温泉めぐりなどを楽しむ笑顔の絶えない趣味人でもありました。出世にあくせくする事もなく、気の合う奥さまと「なんてことのない日々」を過ごしながら「ちょうどいい幸せ」につつまれて暮らしていたはずです。
2017年2月26日も、なんてことのない、いつもの日曜日でした。ご家族で近所の公園を散歩していた昼下がり、赤木氏に1本の電話がかかります。そして、ちょうどいい幸せは音を立てて崩れて行きます。
その9日前、2月17日、国会。野党の追求に興奮した安倍総理は言い放ちます。
「自分と妻が認可や国有地の払下げに関わりがあったら総理はもちろん国会議員も辞める」
赤木氏は近畿財務局職員であっても担当外、森友とは無関係でした。もうひとり、財務省で野党追及の矢面に立った佐川宣寿理財局長もまた森友問題とは無関係でした。着任したポストにより彼は安倍総理と財務省を守る戦いを強いられ、野党の攻勢の前に劣勢は明らかでした。この時、総理秘書から佐川氏に一片のメモが渡された、と報じられています。
「もっと強気でいけ、PMより」
叱咤です、それも安倍総理から直接の。佐川氏は驚くべきことを言い切ります。
「近畿財務局と森友学園の交渉記録というのはございません」
東大から財務省幹部というエリート街道をまっしぐらだった佐川氏が暗く深い陥穽に落ちた瞬間です。以降、佐川氏は取り憑かれたように強引な答弁をくり返しました。あのころ、答弁から自席へ戻る佐川氏の後ろ姿には苦渋と哀しさが滲んで見えました。しかし、興奮した総理が言い放った言葉を「事実」とするためには、交渉記録を表に出すことはできません。後の財務省内部報告書には、佐川氏が主導する形で公文書の改ざんが行われた、とあります。
考えてみれば、森友との交渉記録が明らかになって困るのは財務省ではありません。100兆円を扱う巨大官庁が8億円のミスをした案件なら、25万円を持ってる人が2円の損を出したというスケールです。公文書改ざんという大罪を犯すようなレベルの話ではなく、万引きを殺人で隠蔽するという話です。
さらに、幹部とは言え一局長に過ぎない佐川氏が、トップに無断でひとり勝手に大量の公文書改ざんをやったのなら即刻懲戒免職のはずです。上位の権限者たちが認め、組織の命として佐川氏に実行させたとしか考えようがありません。何のためか、誰が考えてもわかる話です。安倍総理を守るため以外に何がありますか?
森友問題とは昭恵夫人に端を発した安倍総理の問題です。佐川氏もまた興奮した総理が言い放ったひとことに人生を狂わされた犠牲者です。
2017年2月26日、なんてことのない日曜日、電話で呼び出された赤木氏が上司から命じられたのは公文書の改ざんでした。それがどれほど誇りと良心を傷つけたか、赤木氏は必死に反対し、涙を流して抵抗したものの・・・。
「抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどうとるか、ずっと考えてきました。事実を、公的な場所でしっかりと説明することができません。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでした。」
1年後、こう書き残して赤木俊夫氏は自らの責任を購います。2018年3月7日のことです。その日から2年、三回忌を終えた赤木夫人は少し離れた場所から佐川宣寿元理財局長の家を見つめていました。亡夫の遺志をかなえるべく、国と佐川氏を訴える民事訴訟を明らかにする前日でした。この時夫人がふと漏らした言葉が伝えられています。
「幸せそうな街ですね・・・でも佐川さんはお幸せではないでしょうね。」
「ちょうどいい幸せ」という曲は、愛する人がとなりであくびをしているような、おだやかな日々を描いて終わります。それは赤木夫妻が理不尽にも奪い取られた日々です。長きにわたる数々の安倍総理の振るまいが、どれほど多くの人の「なにげない日々」と「ちょうどいい幸せ」を踏みにじってきたのか・・・。
安倍政権下ではその後も強引な嘘と隠蔽が続き、昭恵夫人は自分が種を撒いた森友問題などどこ吹く風でお調子者を続けています。このご夫婦が他人の「愛別離苦」の哀しみに思い至ることはないでしょう。
仏教の四苦八苦に「怨憎会苦」があります。憎しみや怨みを持つ者に会うことの苦しみです。赤木夫人は「愛別離苦」と「怨憎会苦」を胸に、人生を賭した戦いを始めました。なぜ気の合う夫との「なにげない日々」と「ちょうどいい幸せ」を失わなければならなかったのか、なぜ・・・。
彼女が求めているのはひたすらに「真実」です。
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本稿は3月17日昼に書いています。イタリアでは老人重症者から人工呼吸器をはずして若者に付けかえているという報道がありました。これは野戦病院で戦闘に復帰できそうな兵士から順に治療して行くやり方だそうで、まさに世界コロナ大戦のようです。
筆者のような高齢で基礎疾患があり、もはや戦闘能力を失った年金生活者は重症化しても人工呼吸器をつけてもらえない日が近づいているのかもしれません。なんとしても医療崩壊を防がないと老人はエライ事になりそうです。連日のコロナ報道を視ていると、いまだに二つの論の対立が残っています。PCR検査を拡大すべき派とPCR検査を抑えるべき派の違いです。検査拡大派は、できるだけ早く多くの感染者を見つけ出して動きを規制し感染拡散を防ぐ。併せて検査により感染の実態を把握した上で合理的な対策を打つべき、と主張します。
一方の検査抑制派は、PCR検査数が増えれば隠れていた感染者が発見されてたくさんの人が病院に殺到し、たちまち病院のベッドは埋まり、医療崩壊がおきて重症者の対応も出来なくなると懸念します。どちらも専門家の意見なので、素人がどうこうは言えないのですが、よく聞けば両者の意見は真っ向から対立しているわけでもありません。実は、どちらも基本的には多くのPCR検査をした方が良いという点は同じで、抑制派も日本の医療体制が耐えられるなら、PCR検査を拡大して早期発見、早期治療に努めるべきと考えているのです。それはそうです、検査を抑制したって感染や発症を抑制できるわけではありません。
すごい数字が厚労省から明らかにされています。流行がピークに達した時の1日あたりの患者数予測です。厚労省が全国集計値の発表を拒否していますから東京だけを例示します。
*外来患者:45,400人
*入院患者:20,450人
*重症患者:700人
東京だけでこれでは、全国を考えれば気が遠くなります。これに対し、安倍総理は国会で「全国で感染症指定医療機関の病床を最大限動員し12000床を確保」と答弁しました。これは総理お得意の姑息な印象操作で、感染症指定病院の重症者用病床の空きは全国合わせても1000床だけです。残りの11000床は一般病院のふつうの病床だと厚労省の局長が総理の目の前で答弁しています。総理によるベッド数の印象操作発言はこれが3回目で、治らないですね、総理の印象操作病。
いずれにせよ政府が確保した12000病床では、ピーク時に東京が必要とする病床の半分にも及びません。単純に全国で考えれば、政府が用意した1万2千ほどの病床に20万人が殺到することになります。医療崩壊です。ただし、PCR検査を抑制したからといって防げるわけではありません。検査を抑制しても感染と発症は減りません。
この現実に大阪府はすでに独自の対策案を進めています。これまでのやり方にとらわれずに感染者を仕分け(トリアージ)して対応するものです。
1. 宿泊施設・自宅待機
2. 休床・廃止病棟待機
3. 一般病院入院
4. 感染症指定病院入院
症状により患者を上記4段階に仕分けして隔離し、感染拡大と医療崩壊を防ぐというものです。感染者が増えればどの自治体もいずれこの方法を採る事になるというのが大方の見方です。これを実現するにはふたつの政府対応が必要になります。
ひとつは、検査で陽性の場合、現在は指定感染症の枠組みでたとえ無症状でも病院での隔離が求められています。この縛りを外さないと上記1.と2.の方法を採れません。すでに政府は自治体に対して「柔軟な対応を」と言ってはいるようですが、国民に向かっても医療者に向かっても明解な原則変更メッセージを発する必要があります。
[参考]<新型コロナ>瀬戸際2週間満了3/9時点で感染状況は一段深刻化 -植草一秀
もうひとつは、政府が宿泊施設などへの協力要請を宣言することです。政府が予算を付けて宿泊客激減で苦しんでいる宿泊施設を有利な条件で長期間借り上げ、無症状・軽症の感染者の隔離施設とすることです。感染対策などのスタッフ訓練や、食事提供をはじめとする様々な患者サポートにできるだけ周辺の業者も巻き込んで、コロナ不況に苦しむ地域にお金が落ちる方法を採るべきです。それでも足りなければ、政府が大企業に呼びかけて、大規模保養所などの厚生施設の提供を求めてはどうでしょうか。感染者隔離にはトイレ、バスもしくはシャワーつきの個室が必要ですから、こうした取り組みが必要かと思います。
いっそのこと、世界中がクルーズ旅行などしている場合ではなくなっていますから、日本が率先してダイヤモンド・プリンセスやアメリカにいるグランド・プリンセスなどの大型クルーズ船をかき集めて半年ほどチャーターし隔離病室船としてはどうでしょう。1船で1000室程度のトイレ、バスもしくはシャワーつきの個室病室が生まれます。港の近隣業者からの食事の提供をはじめ様々な業務提供を求める事で地域経済活動にも寄与します。係留する埠頭に臨時病院を開設し医師が常駐すれば、日常診察、急変者対応、検体採取、検体運搬なども効率的ですし、患者も安心です。
埠頭に屋台をならべて楽しんでもらったり、アクリルやビニールで完全に仕切った家族や友人面会スペースを作ったり、安全手段を講じて野外コンサートやお笑いステージ、寄席などを開いたり、安全な範囲でいろいろな手を考えて、患者には楽しい隔離生活を、地元にはささやかでも経済活動を、というのも悪くないような気がするのですが。まあ、すでに生産性をなくしたジジイが考えるまでもなく、賢明なる政府・官僚のみなさんは素晴らしい手立てを考え、とっくに準備を進めているものと期待するのですが、昨今の政府迷走を見ていると全幅の信頼を置く事も・・・。なにせ厚労省はいまになっても各自治体からPCR検査数の報告がそろわない、などと言っているありさまですし、総理はいまだにせっせと印象操作ファーストに努めておられるようでは・・・。
専門家の言う危機管理の鉄則は、大きく構えた早い対応、後の推移に現実対処、だそうです。いまリアルに何をやっているかが大事で、安倍政権お得意の「やってるフリ」は危険です。後手後手とは、「やってるフリのなれの果て」でございます。
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3月10日の参院予算委員会・公聴会で新型コロナウイルス対策専門家会議・尾身茂副座長は居並ぶ国会議員に向かってきわめて異例の呼びかけをしました。それは政府からもメディアからもあまり語られなかった現実であり、緊急かつ全力で実現しなければ怖ろしい災禍が襲いかかってくるというリアルな警告でもありました。
以下は尾身氏の発言をくり返し部分や口語の乱れなどのみを筆者が整理した全文です。さほど長い発言ではありませんので、この部分は是非ともお読み下さい。文字強調は筆者です。
これから長期の見通しの中でオールジャパンとしてやるべき事は4つあると思います。
1つは、クラスター、これは厚労省にクラスター班がありますし、それよりももっと多くの保健所関係の人、自治体の人がクラスターサーべーランスというか、クラスターが起きた時の接触者の追跡とか、これに対してかなりの能力とエネルギーとを使って、ある意味では関係者は夜を日に継いでいるので疲弊をしている状況があります。これは間違いのない事実でありますので、クラスターを早期発見してクラスター感染の連鎖を早く摘むということですけれども、この対応が長期間にわたって持続できる体制の急務、人の補充あるいは財政的な補充が非常に必要だと思います。
2番目は保健所について。やはり保健所の職員はもう目一杯になっておりますので、労務負担を軽減すべく、帰国者接触者相談センターの機能については保健所以外の担い手を求めるなど、早急に人的財政的支援を講ずるべきだと思います。
[参考]<姑息な罠と罪深き罠>2月29日新型コロナ対策記者会見
3番目ですけれど、このコロナとの戦いの主要な戦力は現場であります。現場でありますので、地域公共団体や保健所の広域での連携、時には県の枠を越えての、あるいは市町村の枠を越えての広域での連携、それから情報共有がきわめて重要であります。どういうリンクがあったのか、追えなかったのか、という情報をすぐに、いまもやっていただいてますけど、さらに迅速な情報共有が必要だと思います。
4番目、最後ですけど、これから感染の更なる拡大がおこる可能性が否定できないわけですから、それに準備するためには医療提供体制、今のままではもうすでに感染者でいっぱいになってしまいますので、この状況で対応するためには、一般医療機関や診療所を選定し、すべての診療所でやれば院内感染をおこして患者に感染が来るだけではなくて、医療者に感染を起こすこともありえるので、ここは私は感染の治療にあたる医療機関や診療所を早く選定して、その選定したところにはいろんな支援、財政的、あるいは医療器具、マスク、そういうものをしっかりと供給する必要があると思います。
尾身氏はこう訴えて、居並ぶ国会議員に緊急の対応を訴えたのでした。これをメディアや政治家、関係者がほとんど取り上げないのが不満で寄稿しました。よって、ここまで読んでいただければこの稿の役割は充分ですので、以降の拙稿はどうでも良いのですが、多少の補足を書かせていただきます。
尾身氏は冒頭で『長期の見通しの中でオールジャパンとしてやるべき事は4つ』と言っていますが、これは「4つのやれていない事」の指摘であり、そのうちの2つは保健所をはじめとする現場崩壊への憂慮です。
「疲弊、これは間違いのない事実であります」
「職員はもう目一杯になっております」
この素朴な言葉に強い怖れが滲んでいます。
保健所は健康や病気の指導相談、母子健康、動物、産業廃棄物・水質汚染、感染対策など幅広い職掌を担います。関東圏のある県の保健所の感染症対策部門は100名以下、同県政令指定都市の保健所の感染症担当者は20~30名程度と言います。これに契約スタッフや緊急に他部署からの応援を得てコロナ対応にあたっているようです。平時でも要員不足である保健所への負荷は尋常ではありません。
尾身氏は「クラスターが起きた時の接触者の追跡」をあげていますが、実は膨大な相談に対応する「帰国者・接触者相談センター」の実体は保健所ですし、PCR検査を「帰国者・接触者外来」と調整しているのも保健所です。PCR検査で採取した検体を検査機関へ運搬するのもすべて保健所職員だというのですから驚きです。これでは長期戦は無理です。感染が拡大すれば崩壊することが目に見えています。尾身氏の「疲弊/目一杯」という訴えは、これまで手を打っていない政府への抗議とも受け取れます。
素人の愚案ではありましょうが、クラスターの追跡調査は消防や機動隊を含む警察に、検体運搬は訓練の上、日通やヤマト運輸、あるいは日々病院を回って検体を運んでいる民間検査機関に委託してはどうでしょうか。相談センターの機能移管についても、政府なぜ手を拱いているのか・・・。
尾身氏の訴える3番目、4番目については、こんな事が未だに準備されていないのか、というべき事柄です。
(3)時には県、市町村の枠を越え広域での連携、情報共有
(4)治療にあたる医療機関や診療所を選定し、財政的支援、医療器具を供給
専門家会議から見ても、こんな基本中の基本ですら政府が手を打っていないように見える現状で大丈夫でしょうか。後手後手が過去ではなく現在進行形ならば、いくら抑制的で賢明な日本人でもやがてパニックが起きます。
これまで政府方針と政府の専門家会議の主張には一定のズレがあるとお感じになりませんか。安倍総理は専門家会議を無視してエイ!ヤー!と重大決定をしているように見えます。
総理が全国規模のイベントなどの自粛を求めたころ、専門家会議はライブハウスなどの人の集まりについて要請してました。総理が一斉休校を要請したころ、一斉休校には反対しなかったものの専門家会議が強調していたのは若者、成人層へ「換気が悪く、人が密集し、近距離で発声や会話をする」場所を避けて欲しいというお願いでした。これはいまも変わりません。
政府の意志決定プロセス、指示系統ははっきりせず、国民への要請内容も曖昧、PCR検査体制の拡大や実施数もいつまで経っても伸びません。病床確保も心もとなく、マスクは不十分、マスクの転売禁止ですら今週になってからというのですから・・・。
万が一、感染拡大で混乱した時に政府への信頼がないと混乱が爆発し、大きな混乱は甚大な二次被害を呼びます。政権に対する国民の信頼こそ重要な新コロナ対策です。もう、安倍さんにとっては政権の最終章に入っている事は間違いないのですから、この国難に全智全能をかたむけて取り組み、結果として多くの国民の命を守った宰相として歴史に名を残すべきです。
その信頼を得るためには、検察庁人事を取り下げ、桜を見る会問題についてホテル明細書や招待者リストを公開して真摯に謝罪し、『責めは負うから、このウイルスとの戦いについては私を信じて欲しい』と訴えれば、誠実な安倍総理を国民は信頼し、一丸となってこの国難に立ち向かうに違いありません。そして安倍総理は未知のウイルスと果敢に戦った宰相として近代史に名が残るはずです。もはや人柄が信頼できない総理の「やったふり」ではあなたの美しい国は壊れかねません。(3/13記)
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いくら安倍政権でも、どうしちゃったの? 狂っちゃったの? と思ったのが「羽鳥慎一モーニングショー」をはじめとするテレビ攻撃です。具体的に、まずは内閣官房国際感染症対策調整室のツイートです。
3月6日午前1時35分にUPされたツイート全文は、
(以下、引用)3月5日のテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」で、「総理が法律改正にこだわる理由は、『後手後手』批判を払しょくするため総理主導で進んでいるとアピールしたい」というコメントが紹介されています。(1/3)
法律改正をする理由はそうではありません。あらゆる事態に備えて打てる手は全て打つという考えで法律改正をしようとしています。(2/3)
現行の新型インフルエンザ等対策特別措置法では未知のウイルスしか対象としておらず、新型コロナウイルスはウイルスとしては未知のものではないので、今のままでは対象とならないからです。(3/3)(以上、引用)
政府が問題にしたのは「羽鳥慎一モーニングショー」(以下羽鳥MS)の以下のシーンです。特措法についてボードに書かれた政治アナリスト・伊藤惇夫氏のコメントを紹介した下り。イタリックの部分がボードに書かれた氏のコメントです。
羽鳥「安倍総理が改正にこだわる理由について、政治アナリストの伊藤惇夫さんが、『後手後手の批判を払拭するため総理主導で進んでいるとアピールしたい』という背景があるんじゃないかという事です。」
羽鳥氏が声にしたのは15秒間、たったこれだけです。この前も、この後もいっさい触れていません。特措法については、国会質疑や多くの番組を含めて伊藤惇夫さんと同じ見解を示した方は腐るほどいます。なのに、ふだんは「3月7日(土)、政府は「新型コロナウイルス感染症対策本部(18回)」を開催いたしました」などのお知らせをツイートしていた内閣官房国際感染症対策調整室がなぜ突然のように羽鳥MSだけを名指しこんなツイートをしたのか、きわめて不自然です。
この不可解ツイートのおよそ10時間後、今度は厚生労働省が羽鳥MSを名指したツイートを。以下はその事後修正版と思われるツイートです。
(以下、引用)厚生労働省では、2月25日、厚生労働省の指示の下、メーカーと卸業者が協力して、医療機関の必要度に応じて、一定量の医療用マスクを優先的に供給する仕組みを作りました。(1/4)
3月4日午前8時からの「羽鳥慎一モーニングショー」の出演者から、「医療機関に配らなくてはだめ」とのコメントを受け、3月5日に、既に厚生労働省は医療機関に優先供給をする方針を自治体や医師会に明確にしていたので、この事実関係をお知らせしたところです。(3/4)
最終的に全ての医療機関に十分なマスクが届くことが必要であり、引き続き、マスクの増産や全ての医療機関を対象とした優先供給を進めてまいります。(4/4)(以上、引用)
この3月10日現在のツイートは、(1/4)~(4/4)のうちの(2/4)が消された、当初のツィートを修正した後のものと思われます。羽鳥MSは、修正前の厚労省のツィートには複数の誤りがあったことを、厚労省への取材結果として明らかにしていました。
厚労省・元ツイート「感染症指定医療機関への医療用マスクの優先供給を行った」
しかし羽鳥MSの取材では未供給の指定医療機関が多く、これを厚労省に指摘すると、
厚労省・回答「『行った』については言い過ぎた表現『行っている』『開始した』が正しい」
さらに、
厚労省・元ツイート「医師会のルートを活用した優先配布の仕組みをお知らせしてます」
これも羽鳥MSが厚労省の担当者に事実関係を聞くと、
厚労省・回答「そんなことは国会でも言っていない。訂正したい」
結果として厚労省が話を盛った疑いがあることを羽鳥MSが指摘した形です。よって、羽鳥MSには何のミスもなく、「マスクを医療機関に配らなくてはだめ」などというコメントは羽鳥MSに限らず、あらゆるメディアに溢れていたのに、厚労省はなぜ羽鳥MSだけ名前を挙げて矢を放ったのか・・・というお話しですから、とても気持ちの悪い成り行きです。
[参考]<新型コロナ>瀬戸際2週間満了3/9時点で感染状況は一段深刻化
政府のこうした不可解な行動のあと、今度は驚くべき著名人コメントが表れます。3月11日の「特ダネ!」で社会学者の古市憲寿氏がPCR検査について
古市「検査数全体を増やしても陽性率としては、そこまですごい高いわけじゃないですから、そんな市中感染でなんか町中誰でもみたいな、モーニングショーがあおっているみたいなことには多分なっていないと思うんですけど」
羽鳥MSを欠かさず視ている身としては、番組で「市中感染でなんか町中誰でもみたいな、モーニングショーがあおっているみたいなこと」を一度として聞いたことがないので、古市氏が何を根拠にあおっていると誹謗されたのか意外でなりません。古市氏は「社会学者」ですから根拠なしに発言はなさらないと思いますので。
羽鳥MSには岡田春恵氏が毎回出演し、かかりつけ医でも医師が必要と判断したらPCR検査が受けられるようにして欲しい、また検査能力を増やして実際の市中感染率を基礎データとして対策を講じるべき、と主張されています。これは政府対策専門家会議の尾身茂副座長も自民党対策本部の田村憲久本部長も、口を揃えてPCR検査能力を上げることで実現できればと言っています。いわば一般的な意見を伝えているだけで、実際の感染率は高い高いと〝あおっている〟というのは明らかに事実無根です。
この古市発言より前の6日、安倍総理に近いと言われる文芸評論家の小川榮太郞氏も夕刊フジに「ワイドショーが国を滅ぼす・・・」というタイトルで寄稿しています。以下は要旨。
「日本のワイドショーや左派野党、さらに驚くべきことには医師の中にさえ、執拗に『希望者全員に検査させろ』と煽り続ける人々がいる。あるワイドショーの出演者は『PCR検査を希望者全員に適用せよ』と声高に主張し、韓国の検査体制を礼賛している。ワイドショーの無責任な報道に煽られてPCR検査に国民が殺到すれば、日本の医療は完全に崩壊する。全員検査を扇動するこれら『医療テロリスト』たちから、日本の医療を守るための情報戦が、今切実に必要だ。」
お忙しい小川氏よりはワイドショーヘビーウォッチャーの筆者の方がたくさん視ていると思うのですが、「執拗に『希望者全員に検査させろ』と煽り続ける人々」や「全員検査を扇動するこれら『医療テロリスト』たち」などはワイドショーやニュースで筆者は一度も視たことがありません。
もちろん、「PCR検査能力を増やして医師が必要と判断した患者は全員を検査できる態勢に」という主張や「PCR検査能力を増やして客観的な疫学的データを採るべき」という主張はたくさんの方々が言っていますし、先述したように政府の専門家会議メンバーも言っていることです。
先日の桜を見る会問題。辻元議員へのANAホテルメールでも、国会で総理が窮地に立つと読売、産経がANAホテルメールの内容と違った事実を立て続けに報じ、SNSもこれに呼応したかのようでした。
今回は総理もしくは総理近くのどなたかが、なにかを、ちょこっと言ったら、お役人が反応し、そこへ偶然に識者が呼応したような形でこうした結果が生まれたのかもしれません。きっと政権中枢の「どなたか」は羽鳥慎一モーニングショーがお嫌いなんでしょうね。しかし、いま政府は話を盛ったり番組たたきにうつつを抜かしている場合じゃありません。どれほど印象操作をしても新コロナウイルスは消えてはくれません。
そんなアホなことにエネルギーを使っているからか、お膝元の国会で、肝心の専門家会議が緊急の提案を必死に訴えていることに政府もメディアも関心がうすいようで心配です。これについては別稿で。
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去る2月27日安倍総理は、3月2日から春休みまで全国一斉に小中高および特別支援学校の臨時休業を要請しました。突然の要請に説明を求める声が噴出、総理は2日後の29日、会見に応じました。この会見をつぶさに見て行くと、おなじみ安倍流テクニックの罠がちりばめられた、これぞ安倍晋三と言うべきものでした。
そもそも総理の「全国一斉休校要請」からして安倍流おなじみの強引なものでした。『全国全ての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校について、来週3月2日から春休みまで、臨時休業を行うよう要請する』と、いかにも大決断のように大見得を切りました。
しかし、猛烈な批判の嵐に翌日の国会では『この要請は法的拘束力を有するものではなく、各学校等あるいは地域において柔軟にご判断いただきたい』と大幅トーンダウン。『全国すべて』も『3月2日から春休みまで』も消えました。はじめから「地域で柔軟に」と言っておけば良かったものを、やってる感を出したかったんでしょう。
唐突に派手なことを断言して混乱を招くパターンは、森友、加計から、桜、先日の法解釈変更に続き、またまたやった!という感じです。深刻重大そうに言ったものの、結局グズグズとなるパターンは北方領土交渉や金正恩に自分が会う発言などでおなじみですし、一度言った事を謝罪もせずにコロコロ変えてしまうのも安倍さんあるあるです。
さて総理会見、以降はこの会見における総理発言の信用性を、主に国会答弁と、3月3日BSフジ「プライムニュース」における専門家3名の発言を参考にして、簡単なファクトチェックをしてみます。まずは周到にして狡猾なPCR検査についての発言から。
総理会見発言『かかりつけ医など、身近にいるお医者さんが必要と考える場合には、すべての患者の皆さんがPCR検査を受けることができる十分な検査能力を確保いたします。』
これを聞けば、ご近所のお医者さんでも直接検査機関にPCR検査を出せるようになると受け取れます。テレビでもそう解説している番組もあります。しかし実際はまったく違います。ご近所の医師が要検査と判断してもまずは「帰国者・接触者相談センター」に連絡し、患者はここで紹介を受けてから全国843カ所の「帰国者・接触者外来」を受診し、そこの医師が必要と判断すればPCR検査を受けることができる、というのが事実です。これまでと変わるのは保健所の介在がなくなるルートが生まれるということです。(一部に保健所を通すという報道もあり)
これでは総理の発言は明らかなウソではないかと国会で問われますが、総理は『次のフェーズにおいてはかかりつけ医の先生方にPCR検査ができるようにして行くと申し上げている。今すぐできると私はまったく申し上げていない』と答弁し、議場にはえー?という声が上がります。
[参考]<新型コロナ>瀬戸際2週間満了3/9時点で感染状況は一段深刻化
実はこのくだりの総理会見発言には姑息な罠が仕掛けられていたのです。総理は、この発言の前に検査能力の拡大と新たな検査機器の開発などに触れた上で、『こうした取り組みを総動員することで』という前フリを置いてから『すべてのみなさんがPCR検査を~』と発言しています。
だから様々な取り組みを総動員した後のフェーズで出来る事と言ったのだというご主張なのです。屁理屈はそのとおりですが、明らかにこれは会見を聞いた誰もが誤解するように周到に仕掛けられた罠です。誰に何を理解してもらうための説明だったのでしょうか。
PCR検査能力の向上についてもアヤシイ箇所があります。
総理会見発言『現在2、3時間を要しているウイルスを検出するための作業を15分程度に短縮できる新しい簡易検査機器の開発を進めています』
これを聞いてPCR検査が15分で可能になると受け取るのおそらく間違いです。テレビで専門家は、これはPCR検査全体が15分で可能になるのではなく、ウイルス「検出作業」を15分に短縮し、後に分析などの手順を含めれば全体を40分ほどに短縮できるという話です、と笑いながら説明しています。どうやら総理が話を盛った疑いが・・・。
同様に専門家が苦笑いしていたのが治療薬開発のお話し、
総理会見発言『現在、我が国ではアビガンを含む3つの薬について、観察研究としての患者への投与を既にスタートしています。基礎研究では既に一定の有効性が認められていることから、治療薬の早期開発につなげてまいります。』(筆者要約)
なんだか、すぐにも治療薬が開発されるような口ぶりですが、専門家は、「(その薬が」有効だったという事例が報告されているだけ」「新薬の開発は5年~10年の話」「新コロナは今年だけかもしれないのでメーカーが本気になるか」などと口々に。これも総理が盛りに盛ったお話しのようです。
病院の空きベッド数の話も罠です。
総理会見発言『全国で2000を超える感染症病床がありますが、緊急時には感染症指定医療機関の病床を最大限動員し、5000床を超える病床を確保いたします』
おそらくこの総理発言は聞く者を故意に誤解させる罠です。「感染症病床」とは前室、シャワー、トイレが付き、室外より気圧が低い陰圧制御ができる特殊な病室のことです。専門家によれば、こうした感染症病床をすぐに3000も増やすのはまったく不可能で、大幅に増やしてもオペレーションするスタッフもいないと言うのです。総理が増やすと言うのは「感染症病床」ではなく、単なる「個室」の事としか考えられません。
事実、加藤厚労大臣は安倍総理発言を庇いながらも、『感染症病床は2000床あり、うち空床が1300。それ以外に一般病床が14府県で4000以上ある。1300と4000を足して5000以上ある』と5000という数字合わせの答弁をしました。しかし総理は「感染症指定医療機関の病床を最大限動員」と言っていますから、これは意図的に誤解を狙った罠でしょう。
以上のような罠だらけの総理演説のあと、会見は記者の質問に移ります。最初は幹事社からの代表質問、続いて幹事社以外からNHK、読売を指名し、最後はAP通信から、オリパラを控えクルーズ船対応から得た教訓は?と問われます。これに総理は、『IOCからは、日本の迅速な対応について評価を得ているところであります』と、最後まで質問と回答が噛み合わない安倍流のまま会見は終了したのでした。
会場では10人以上の記者が手を上げ、「まだ質問があります!」という声を背中に浴びながら退場した安倍総理は、ほどなく自邸へ帰って行ったそうです。
まさに安倍流の罠だらけだったこの会見、総理発言は原稿読み上げ、幹事社代表質問の内容は事前通告ありで、一般質問もあらかじめ質問を聞いていたようで総理は原稿に目を落として答えていました。まるで内閣記者会が総理とグルになり、総理に言いたいことだけ言わせて終わったような会見でした。
もし記者たちが矜持を失い、国民が総理と記者の「談合会見」を視せられたのだとすれば、それこそがこの会見の「最も罪深い罠」であったということです。
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