<「シンデレラ・メソッド」の著者に聞いてみた>グリム童話のシンデレラにみる仕事に活かすヒントとは?


尾藤克之[経営コンサルタント]

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「グリム童話」は、1812年にヤーコプとヴィルヘルムのグリム兄弟が編集したドイツのメルヘン集です。現在までに160以上の言語に翻訳されており、世界中の民話研究にも大きな影響を与えたといわれています。

日本では、1998年に「本当は恐ろしいグリム童話」(KKベストセラーズ)がベストセラーになるなど、日本独自の解説本やアンソロジーに注目が集まりました。

「シンデレラ・メソッド」(かんき出版)の著者であり、心理カウンセラーの河合めぐみ氏は「グリム童話のシンデレラには仕事をするうえでのヒントがつまっている」と次のように述べています。

■シンデレラはマーケッターでした

—河合さんはシンデレラをどのように解釈していますか?

河合めぐみ(以下、河合):シンデレラは「お城に住んで幸せになる」という夢をかなえるために、天才的なマーケティング力を発揮しましたが、王子様と会って話した時間は、1日のうちたった数時間のこと。そのわずかな時間で、なぜ王子様に「必ず探し出したい」と思わせるほど、強烈な印象を与えることができたのでしょう。

彼女のプレゼン力が高かったのは言うまでもないことですが、それが成功したのは、普段の地味で過酷な日々の間にも、シンデレラがきちんと心の準備や、見た目の準備をしていたからです。ハレの日とケの日で考えると、婚活パーティーや出会いの場に行く日がハレの日だとしたら、私たちの生活も圧倒的にケの日の方が多いもの。

毎日必死でラッシュの通勤電車に耐えて会社に行っても、次から次へと終わりのない家事をしても、誰からも褒めてもらえない地道な毎日が日常です。その前向きな気持ちのもち方や、周囲への気の配り方などが、全部彼女の魅力を増すことにつながっていたのです。

■シンデレラは鈍感だった

—シンデレラは日々の過酷な生活をどのように考察していたと思いますか?

河合:毎日のように継母と義姉たちに虐げられ、朝から晩まで家事を強要されるシンデレラですが、劇中の彼女は、それをあまり苦に感じていないように見えます。その理由のひとつは、シンデレラが「いじめられている」という状況に、悲観的になっていないこと。

だから、「私が夢を見ることだけは、誰にも止められないわ」と言葉にするのです。どんな扱いを受けようと、自分の心が支配されたり、人の心を支配することはできないと知っています。いい意味で鈍感力を発揮しているのです。

「鈍感」と聞くと悪い意味でとらえられがちですが、周りの悪意ある言葉や行動に鈍感なことで、自分を大切にできる、振り回されないというメリットがあります。「鈍感力」というと、彼女がいじめの状況に気づいていないというふうに聞こえるかもしれませんが、召使いとして扱われている状況を、継母たちの好意によるものだとは、さすがに思っていません。

シンデレラは、自分がいじめられようと虐げられようと、「私は私」という自尊心をけして忘れません。だれよりも自分を大切にしていたのでしょう。

■感謝の気持ちは現代にも通じる

—シンデレラのなかで最も大切なポイントを教えてください。

河合:シンデレラは何かしてもらったときには、笑みで感謝の言葉を口にしています。素直に「ありがとう」と言えることの大切さを教えてくれます。ネズミたちと小鳥たちが協力してつくってくれたドレスを見たとき、「みんなのおかげだわ、本当にありがとう」。魔法は夜中の12時に解けると聞かされても、「こんなに素敵な夢を見られてうれしいわ」と。

12時の鐘が鳴り終わり、魔法が解けてもとの姿に戻ったときも、「もっとこの夢のなかにいたいのに」と不満を言わないどころか、短い時間でも幸せな時間を過ごせたことに感謝の言葉が出る。これは、意外にできないことです。

「ありがとう」と言われて嫌な気分になる人はいません。相手もうれしい気持ちになりますし、言った分だけ自分にも返ってくるものです。仕事や日頃の生活をするうえでの大切なヒントがシンデレラには詰まっているように思いませんか。

—ありがとうございました。

感謝することは、いまの自分の現状、自分がいる場所や環境、周囲の人を肯定することです。「不満」を「ありがとう」に転化できれば印象や評価が変わるかも知れません。

 

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尾藤克之(びとう・かつゆき)経営コンサルタント。東京都出身。衆議院議員秘書、大手コンサルティングファーム、IT系上場企業等の複数の事業会社の役員を経て現職。障がい者と健常者の共同生活によりボランティアスピリットを培うための社会貢献事業(アスカ王国)をライフワークとしている。埼玉大学大学院博士課程前期修了(経営学修士、経済学修士)