[江川達也]クリエイターとして当たり前の作業もやらず「一流」を名乗るデザイナー業界の常識に驚愕


江川達也[漫画家]

***

普通、何か作品を作る時は、取材をするのが常識だ。いろんな処に行って写真や動画を撮って来るのは最低のことであって、一番大事なのは、何を感じるかだ。

体験取材が取材の核となる。

取材がいらない場合が一つだけある。それは、すでに取材が完了している場合だ。

自分の人生の体験談は取材が完了しているのであえて取材する必要がない。取材せずに自分の妄想だけで描けるヒトもいるだろう。私も妄想だけで相当なものを描けたりもする。

普通の人は妄想だけでヒトと違ったものを描くことは難しい。自分の妄想だと思っているものは、実は誰かのパクリだったりする。自分が見て来たもののトレースだったりする。

それはそれで、体験ではあるが、斬新なものは中々出来ない。見て来たものから斬新なものを作るとしたら、その見て来たものを分析し定理(パターン)のようなものを導き出し、今までにない変数(パラメータ)を当てはめるか、その定理(パターン)を変形させてみるかをすれば、可能ではある。

それも高度な技なので、やはり体験取材が普通の人にはおススメだ。

  • エロ漫画を描く為にはやはり、エロ体験をすべきだろう。
  • 恋愛漫画を描く為にはやはり、恋愛体験をすべきだろう。
  • 教師漫画を描く為にはやはり、教師体験をすべきだろう。

しかし、殺人漫画を描く為に、ヒトを殺してはいけない。実体験から出たものじゃない場合は誰かのパクリになってしまうが、シミュレーションの技術を磨くことで肉薄が可能だ。

プロファイリングの技術を磨くことでかなりのものが描ける。何かクリエイティブな作業をするには、いろんな面倒くさい膨大なことをこなすのが、仕事の常識だろう。

誰かの撮った画像を検索しコピペしてそのまま使うというものを仕事の大半にしている佐野研二郎さんの仕事ぶりには驚きを禁じ得ない。

クリエイターとして当たり前の作業の100分の1もやってない一流と名乗っているデザイナー業界の常識に驚愕したのも過去の想い出となりつつある。

幾何数学的にも陳腐なデザイナー業界に驚きもした。

(本記事は、著者のFacebookエントリを元にした編集・転載記事です)

 

【あわせて読みたい】

The following two tabs change content below.

江川達也

江川達也(えがわ・たつや)漫画家。1961年、愛知県生まれ。愛知教育大学教育学部卒業。 アシスタントの傍ら描いた習作『Don't Give Up』が『コミックモーニング』編集部の目に止まり、1984年、「BE FREE!」(『モーニング』)でデビュー。その後『まじかる☆タルるートくん』を始めとする少年誌向けのギャグ漫画や、『東京大学物語』『GOLDEN BOY』などの青年誌向けのストーリー漫画まで幅広い分野で執筆し、作品がアニメ化されるなど、立て続けにヒット作を生み出す。