<せっかくの3時間枠が無駄?>「アメトーーク3時間SP」で考えて欲しかった全体の連続性


高橋維新[弁護士]

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2015年10月2日放映のテレビ朝日「アメトーーク3時間スペシャル」は、「芸人体当たりシミュレーション」「中学イケてない芸人高校編」「ビビリ-1グランプリ」の3本立てであった。

企画間の連続性は特になく「ぶつ切り」状態であって、3本の企画をただつなげて3時間分の映像にしただけである。スペシャルだからということで内容面が豪華になっていたわけでもない。

3本とも通常放映の中でも人気の高い企画ではあるのだが、それだけである。内容面で変化あったのは、スペシャル恒例の江頭2:50が最後に登場したぐらいのものである。むしろ、ゴールデンで放映するために、下ネタ等に対する制約が増えていた。

放映日は、金曜日である。「アメトーーク」は、毎週木曜日に放映している番組であるが、前日の10月1日には通常放映があり、翌週の10月8日にも通常放映が予定されていた。つまり、通常放映をスケジュール通りに続けながら、それと並行して通常放映3本分の映像を追加で撮らなければならない状況にあったのだと推察される。

大変なのは分かるが、せっかくゴールデンに3時間も枠をもらえるのだから、企画ごとのぶつ切りにするのではなくて、全体として統一感や連続性を持たせてほしい。内容も、通常放映以上に豪華にしてほしい。それが実現できればもっとハネる可能性を秘めているのに、惜しいところである。

3本の企画が全部てんでばらばらに収録されていると思われるので、演者も通常放映の時と動き方が変わっておらず、他の企画のことに言及したりはしていない。全部に出ている雨上がり決死隊の2人はそれができる可能性があるが、2人ともなぜかしない。

察するに、収録の段階では放映の順番がどうなるか分からないので、コメントがしづらい部分があるのではないだろうか。

今回の放映は、

  1. 芸人体当たりシミュレーション
  2. 中学イケてない芸人高校編
  3. ビビリ-1グランプリ

の順番だったが、実際の収録の順番はこの通りとは限らないので、例えば「3.ビビリ-1グランプリ」を最初に収録した状態で「1.芸人体当たりシミュレーション」の収録が行われているかもしれない。

そうだとすると、「1.芸人体当たりシミュレーシ」の収録の段階で「3.ビビリ-1グランプリ」に対して言及するにしてもどういうスタンスで言及したらいいか分からなくなってしまう。

「3は1より過去に起きたことである」という実際の収録の順番に沿ったスタンスで言及すると、放映段階では順番が前後するので、編集権者としてもそのコメントが使いにくくなり、演者としても(使われないであろう)その種のコメントをしづらくなるのである。

今のは相当細かい話だが、忙しすぎて「3時間スペシャル全体における統一感の維持」や「企画間の絡み」にまで気を配っている余裕がなく、結果そのへんを見据えて収録の順番やコメントの仕方に配慮することもできなくなっているのだと思える。

そして、「アメトーーク」がこれだけ忙しいという事実は、今のテレ朝のバラエティが「アメトーーク」(及び加地P系列の番組)にいかに頼っているかを如実に表している。もう少し余裕を持たせて、質を高める方向にも力を使ってもらいたい。

それでは、企画ごとの各論に移る。

1.芸人体当たりシミュレーション

芸人に辛いことをさせて苦しむ様を見るというリアクション芸の企画である。

「辛いこと」のギミック自体はきちんと考えられているので、リアクション芸の一つ一つは見ていられるレベルに達している。ただ、ギミックがきちんと考えられているということは、このギミックから逃げない人であれば芸人でなくても(極端に言えば素人であっても)同程度のおもしろさが出るということでもあり、出演者を芸人で固めているメリットは特に活かせていない。

芸人がたくさんいることでおもしろさを向上できるとすれば、その場での即興の絡みである。しかし、リアクション芸の収録自体は(なぜか)基本的に芸人ごとに単独で行われており、彼らはトークスタジオで初めて一堂に会するに過ぎない。

トークスタジオでは「過去に」収録したリアクション芸の映像を見ながらやいのやいの言うだけであるため、それではリアクション芸を受けての絡みも間接的・二次的なものになってしまう。

本来であれば、司会の雨上がり決死隊も含めて全員で運動場に行き、全員がいる場でリアクション芸の収録も行うべきと考える。そうすれば、リアクション芸で生まれた空気感をホットな状態で共有したまま、即興の絡みができると思われる。

そういうやり方にしていないのは、出演者のスケジュールの都合だろうか。それとも、出演者に体を張る系の(つまり、トークがさほど得意でない)若手が多いため、リアクション芸以外の絡みをさせてもあまりおもしろくないからだろうか。

実際、スタジオでのトークはほとんどおもしろい絡みが見られなかったため、彼らにリアクション芸以上の働きを期待できないのかもしれないが、スタジオトークという形で間接化されてしまったからさほどおもしろくなかった可能性もあるので、一度全員運動場に集まった状態で収録をやってみてほしいものである。

5点満点の採点だが、ほとんど同じなので細かくは書かない。リアクション芸は全員それなりにおもしろかったので2.8点である。スタジオで果敢に攻めてスベリ倒した吉村(平成ノブシコブシ)と、「なんて日だ」の勝手なアレンジバージョンをガヤ入れて小峠(バイきんぐ)からツッコまれた斉藤(ジャングルポケット)には2.9点をつける。ツッコんだ小峠は、そのツッコミ自体は最低限の働きでしかないので加点ができない。

あと、村上(フルーツポンチ)は「運動神経悪い芸人」に出てきた時も思ったことであるが、どうにもリアクションや動きがわざとらしい。わざとだったら自然にやってほしいし、わざとじゃないとしたら彼の素の動きにそういうわざとらしさがあるということなので、自然に見えるよう演技をする必要がある。どっちにしろ、もっと自然に見えるような演技をする必要があるのである。

2.中学イケてない芸人高校編

高校でも自分がどれだけイケていなかったかをおもしろおかしく話す企画。「何かをバカにする回」の典型例であり、おもしろいエピソードは多かったが、前回の「立ちトーク」と同じく、単発のエピソードがひたすら積み重ねられていっただけであるため、全員を一つのスタジオに集めて収録した意味がなかった。全員別撮りでも作れた回である。

高橋(サバンナ)・博多大吉・川島(麒麟)みたいな実力派は、もっと他人の話に有機的に絡んでいくことを意識せねばならない。

点数は、全員がどんぐりの背比べであるが、個々のエピソードは前回の立ちトークよりはおもしろかったため、2.9点とする。

3.ビビリ-1グランプリ

ビビリ芸人がビビる様をあざ笑う企画。これも「何かをバカにする回」の典型例である。

基本的にはギミックに工夫を凝らせばどうとでもなるというのが芸人体当たりシミュレーションと一緒であって、ギミックさえきちんとしていれば、極端な話素人でもおもしろくはなり得る。

芸人を集めるからには、リアクション以上のおもしろさを見せてほしい。それが、何度も述べているようにスタジオのその場での絡みである。ただみんなビビリすぎで普段より実力が出ていなかった印象がある。

2015年7月2日に通常放映された前回は、安全な位置にいる宮迫がビビリ芸人達をいじめている構図が垣間見え、それが鼻につくという問題点があった(http://mediagong.jp/?p=10567)。ただ今回は宮迫もビビリ芸人用のギミックにきちんと最初から付き合わされており、他のビビリ芸人達と同じフィールドに立っていたため、その構図は以前よりは後退していた。その点は素直に評価できる。

この状態をもっと推し進めればビビリ芸人同士の醜い争いという新たなおもしろさも生まれ得るのであるが、今回はみなビビッてばかりでギミックを敬遠しており、あまり芸人同士の押し付け合いという構図は見られなかった。もう一度この企画をやるとすれば強く意識してほしいところである。

あとやっぱりフルポン村上のリアクションにはわざとらしさを感じてしまう。わざとであるにせよないにせよ、自然に見えるような演技をする必要があるというのは芸人体当たりシミュレーションの項で記した通りである。

点数は、やっぱり軒並み同じである。ビビる様はおもしろかったがそれ以上の絡みはあまりなかったので、芸人体当たりシミュレーションと同じく全員2.8点である。

アドリブの絡みで「おっ」と思ったのは江頭が登場した後にジュニアが言い放った「3時を過ぎてしまう」というコメントだが、うまいだけで特におもしろくはないので加点しない。江頭は、ビビるだけでなく独自のボケを入れられていたので、2.9点をつけられる。

最後の最後に、全企画に出ていた雨上がり決死隊の点数だが、蛍原は、まあ、0.5点ぐらいである。宮迫も全体通して特に積極的な絡みがなかったので、ビビリ芸人としてのリアクションに対する点数のみで、2.8点である。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。