<芸人コンビはナゼ仲が悪くなるのか>ボケ役はツッコミ役に否定され続けることに我慢できない?


高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

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「あの芸人コンビは、仲が良いのか、悪いのか」

そういうことはファンならずとも素人さんであれば興味のある所だろう。もちろん、本当のところは放送作家である筆者にはうかがい知れない。

しかし、「なぜ、仲が悪くなるのか」については心当たりはある。

夫婦でも同じことだが、長く一緒にいるとダメなところが目に付いてしまうとか、飽きたとか性格の不一致とか、そういうことはある。しかし、ここでいう「心当たり」とはそういうことではない。芸に絡むことである。

関西の漫才師は大抵が「ツッコミ」と「ボケ」の役割分担を持っている。大抵は「ボケ」の側が、何の「フリ」もなしに先に勝手にボケる。そこに相方が突っ込みを入れる。

この「ツッコミ」は東京で言うところの本来の「ツッコミ」ではなく、「落としのセリフ」である。分かりやすく言うと、ボケた側の頭を「そんなことするか」と張り倒す。張り倒さないとしても「なんだそれ」とか「バカお前は」とか「みっともないんだよ」などと言って否定する。

この芸のフォーマットこそが、仲が悪くなる原因であるように思う。コンビのほとんどは他人である。わざとやっているんだと分かっていても、人間は否定され続けるとアタマにくる。体調や精神状態が良い時ばかりではないから、否定されるとむっとする。

すると「ツッコミ」に対して、「ボケ」が「マジに」反抗する。「ツッコミ」は仕事でやっているのにシャレの分からない奴だと、アタマにくる。その結果、仲が悪くなる、という構図だ。

【参考】<放送作家40年・日本コント史の裏側>「ひょうきん族」と「全員集合」は視聴率争いなどしていなかった

今は関西風に演じるコンビが圧倒的に多くなってしまったが、東京の本来のやり方は「ツッコミ」と「ボケ」ではない。

「フリ」と「コナシ」と「受け(あるいはフォロー)」の3つで構成される。

「うーんもっと祈ってくれれば死んだ奥さんが降りてくる」

と霊媒師役が言ったとする(フリ、これが関西で言うツッコミ役)。するとコナシ役は「必死に祈る」。自分の必死さを表すために色々工夫して祈る(これが「コナシ」)。

「降りて来そうだ、もう少し」

と霊媒師役が言う。これが「受け(あるいはフォロー)」だ。これでもフリ役がしつこすぎると、コナシ役はアタマにくることが多くなってしまうだろう。

もちろん長い間仲が悪くならないコンビもいる。そういうコンビは大抵「二人の未来を一緒に語り合わない」のではないか、と筆者は思う。

所詮、芸人はひとりなのである。

 

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