<料理のレシピには著作権はない>主役は大根とニンジン。女性スタッフが作り上げた文化遺産「キユーピー3分クッキング」

瀬崎一世[(株)イーストエンタテインメント・プロデューサー]

 
「主役は大根とニンジンだから」と、ある元・女性プロデューサーは語った。
日本テレビ系で放送している「キユーピー3分クッキング」の話だ。この番組放送開始から50年、月曜日から土曜日までの毎日オンエアされているが、有名タレントもシェフも出ていない。ひたすら今晩のおかずのヒントとなるメニューを紹介している。
主役は食材だから売り込みのある人気料理人や料理研究家はすべて断ることにしているという。因みに決して3分の番組ではない。現在は10分である。
私が所属する「日本女性放送者懇談会」という放送業界の女性たちが集う団体では、毎年目覚ましい活躍のあった女性に「放送ウーマン賞」を贈呈している。
昨年の「放送ウーマン賞」に選ばれたのが「日本テレビ・キユーピー3分クッキング」制作チームだ。
実は「3分クッキング」には現在もCBC(中部日本放送)系列13局と日テレ系列18局の二つの番組が存在する。半世紀前にスタートした時には北海道や沖縄でも独自の番組が作られていた。これはネットが整備されていなかったことだけでなく入手できる食材の地域差があったからだ。
思えばこの50年で日本人の食生活は大きく変化した。まだまだ貧しかった時代から様々な食材が入ってきて、洋風化・電化が進み、健康志向が隆盛し、一家族の人数も少なくなっていった。
女性が外で働くようになり、台所の周辺の状況も激変した。この番組ではそんなごく普通の日本人の生活に寄り添ってきた。給料日前の献立には高価な肉類ははずし、もやしなど安価でできるものを。イタリアンが流行ってきた時にはハーブやオリーブオイルを取り入れたメニューを。
日本テレビの歴代スタッフはほぼ女性である。月曜日から土曜日までの6日間の収録を週1回行うが、ほぼオンタイムでの撮りなのでリハーサルから本番までの様々なスタンバイがスタジオ中で行われている。プロデューサー、ディレクターはもちろんフードコーディネーター、助手たちすべてとびきり‘男前‘の女たちの手で着々と進められている。
視聴率をとり、派手なキャストを使い、高価なセットの中で行われる番組が脚光を浴びる中コツコツと50年脈々と天気予報のように卦(ケ)の生活を支えてきた番組に改めて心揺さぶられる。
料理のレシピには著作権はない。
カレーやコロッケや肉じゃがも、何通りも作り方があり、それらは更に家族の好みによりその家庭のオリジナルとなっていく。法隆寺や富岡製糸場だけではない。日本のおかずは、立派な生きた「文化遺産」だと言える。
 
【あわせて読みたい】