<板尾創路不倫騒動>「ラブホで映画を見ただけ」はありうるか?


藤本貴之[東洋大学 教授・博士(学術)/メディア学者]

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板尾創路とグラビアアイドル・豊田瀬里奈との不倫騒動。2人でラブホテルに入ったことが報じられるも、豊田は「ラブホテルで映画を見ただけで男女関係はなかった」と、いわゆる不倫を否定。一方、板尾の方はといえば、映画を見ていたことを認めつつも、「プライベートなことなのでご想像にお任せ」と明確な否定はしなかった。しかも、所属事務所も「事実関係はおおむね報道の通り」と述べているという。

この状況を見ればを見れば、「ラブホテルに2人で入って、何もないはずがない!」と感じるのは当然で、疑惑の否定は難しい。特に、板尾は1994年にも18歳未満の少女と淫行し、青少年健全育成条例違反容疑で逮捕された経験を持つ。この事件から今回の騒動を知り「またか・・・」と思う人は多いだろう。(その後、相手の18歳少女は、自ら「18歳以上である」と偽って板尾と関係をもったことが明らかになった)

本人も事務所も明確な否定をしなかったことから、「不倫を認めた」という報道もなされている。しかし、板尾の是非はさておき、筆者はこの流れ自体には強い違和感を覚える。なぜなら、「ラブホテルで女性と2人で映画を見たり、雑談したりするだけの時間を使い方」をする既婚男性がいても、何らおかしくないと思うからだ。

ようは、ラブホテルに入るイコール男女関係、何もないはずがない・・・という前提自体が間違っているように感じるのだ。もちろん誤解を受けることは止むを得ない。だからといってラブホテル=男女の関係を「確定事項」として取り扱ってしまうのは、あまりにも現代人の嗜好の多様性を軽視している。

例えば、板尾の後輩でもあるタレント・千原ジュニアは「(板尾は)エビフライ定食を頼んでエビフライを残す不思議な人。ラブホテルに入って何もなかった可能性もゼロじゃない」と述べ、擁護(?)している。

この千原ジュニアの見解は実に的を射ている。世の中にはいろんな人、いろんな嗜好やライフスタイルを持っている人がいる。男女の関係なしにラブホテルを利用する人がいても決しておかしくないからだ。

例えば、評論家・古谷経衡は、ラブホテルの機能性やシティホテルにはないサービスや時間設定などから、「一人で泊まるラブホテル」を提唱する。実際、近年のラブホテルは単身客の取り込みを進めているのだという。今日のラブホテルを「『セックスをするための休憩所』という固定観念は急速に形骸化している」とまで言い切る。

そもそも、本来の目的とは異なった使われ方で普及しているようなモノ・コトは多い。選択肢が多様化している今日、購入した商品やサービスをどのように利用するかは本人次第、というものは少なくない。それが提供元の想定外であるということだって「想定内」だ。

エビフライ定食を注文してエビフライを残すという例えは極端だとしても、少なくとも筆者は、ステーキレストラン「フォルクス」に行き、ステーキを残すことは珍しくない。ステーキにつけられたサラダやパン類のビュッフェが好きで行っているためである。

【参考】<チェーンソーYouTuber>メディアを勘違いした「SNSバカ」たちの狂騒

世間を見渡してみても、漫画やネットを楽しむための個室空間だった「ネットカフェ」「漫画喫茶」はいつの間にか、簡易旅館、臨時宿泊施設になっている。

ビジネスホテルだって、必ずしもビジネスマンだけが利用するわけではない。ファミリーレストランも、深夜は「自習室」になっていることがある。そもそも深夜営業自体がファミリー向けではない。駅に近いカフェなどは「当店での勉強は禁止です」と注意書きまである。

SNSのハッシュタグ(#)も同一カテゴリに投稿するという本来の使い方ではなく、「本文以外で強調したいメッセージ」として利用されていることが多い。本来の使い方を知らないユーザだっているかもしれない。

そんな事例は数え上げればきりがない。それが何であれ、合法である限り、何をどう使うかは利用者の自由だ。男女関係が目的ではないラブホテルの利用などいくらでもあるだろう。その意味では、板尾と豊田が本当にラブホテルに入って「映画だけをみていた」可能性は全然ありうる。古谷氏の提案を踏まえれば、むしろラブホテルは現代人に最適化された極めて合理的な施設だ。

もちろん、「映画を見みたり、雑談をするために、あえて誤解を招くラブホテルにゆく必要はない」という指摘もあるだろう。このような指摘は一見まともに見える。しかし、逆に「誤解を受けないため」にラブホテルに行った可能性だってありうる。

板尾のような既婚の有名人が、女性と2人で(普通の)ホテルは行けば目立ちすぎる。事実はどうであれ、間違いなく不倫を報じられる。カラオケボックスやカフェなども同様だ。そうなれば、むしろ「人目につかないように行動」こそ最善だ。ラブホテルは誤解や疑惑が満点の場所だが、人目につく可能性は、他のどんな場所よりも低い。そもそも従業員を含めて、人の目につかないような構造になっているからだ。ラブホテルは有名人にはうってつけの合理的な選択である。

仮にそうだとしたら、板尾はなぜ不倫疑惑を明確に否定せず、「ご想像に」と受け流したのか? という疑問もわくが、それだって合理的な説明は可能だ。芸能人の「弁明」は、否定すればするほど勘ぐられる、泥沼にハマる、炎上を誘発する・・・というSNS時代のメディアのあり方を板尾がよく理解しているからではないのか。

有名人にもかかわらず、疑惑や誤解を生みやすく、否定もしづらいような挙動に出た浅はかさは擁護はできない。だからといって「ラブホテル=肉体関係」という固定概念も偏狭だ。世の中に、変わり者は「変わり者とは言えないぐらいに多い」という事実を否定してはならない。

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藤本貴之(ふじもと・たかゆき) 東洋大学総合情報学部・教授(情報デザイン論・メディア構造論)/北陸先端科学技術大学院大学・教育連携客員教授/藤本情報デザイン事務所・執行役員/JAGDA正会員/最先端のメディア研究・メディア技術の知見から、アカデミズムの枠を超え、企業や自治体などを対象としたメディア設計や情報発信戦略など、数々の実践的なプロジェクトを手がけている。主な著書に『だからデザイナーは炎上する(中央公論新社)』『情報デザインの想像力』『脳にアイデアを思いつかせる技術(講談社)』『映像メディアのプロになる!(河出書房新社)』など、多数。