フリー記者を排除した馴れ合いの外相会見

社会・メディア

上出義樹[フリーランス記者/上智大学メディア・ジャーナリズム研究所研究スタッフ]

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<閣僚会見で増える質問の事前通告制>

私がフリーランス記者として主に参加する外務、経産、総務の3閣僚の定例会見では、以前にも書いたことがあるが、記者に質問の事前通告を事実上強制している。

定例会見は火曜と金曜の閣議後に開かれるが、記者クラブに所属しないフリーランス記者は、事前の出席連絡がないと、会見自体に参加できない。経産省はやや弾力的だが、外務省は前日にメールで出席連絡をしなければ、会見の開始時間の通知もない。

フリーの記者らも2-3年前までは、上記の3閣僚会見に事前連絡なしに参加し、自由に質問ができた。ところが現在、各省の広報担当者はフリー記者には必ず質問の事前連絡をさせるほか、記者クラブ所属の記者にもケースバイケースで質問の事前通告を求めている。

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<外相会見はフリーが入れない首相官邸でほぼ毎回開催>

さらに、フリーの記者の場合は、参加できる本省の会見場での開催自体が少ない。とくに、外相会見は首相官邸内でのぶら下がり(囲み)会見がほとんどで、現在の河野太郎外相の場合は、2017年8月の就任から約7カ月間で、フリーの記者が参加できた本省会見場での開催がわずか3回だけ。

大半は国会答弁や首相との打ち合わせなど「日程の都合」が理由だが、フリー記者は事実上、外相会見から排除されているのが常態だ。

<米軍機の横暴な飛行問題の追及もなく馴れ合いムードの会見内容>

外交の分野では、青森県東北町の小川原湖上空で2月20日、機体のトラブルから燃料タンクを投棄。同湖のシジミ漁が全面禁漁になるなど、深刻な影響が出ている。一方、沖縄では、昨年末に機体を落下させた小学校の上空を再び米軍機が飛行したことが確認されている。

昨年から全国で頻発する米軍機の事故・トラブルに対し、日本側の抗議や要請にもかかわらず、これまで米軍はすぐに飛行を再開するなど、住民の安全より、軍事優先の姿勢を見せている。

しかし、外務省のホームページで最近5回ほどの会見録を読むと、ありきたりの外交問題を中心にいつもながらの記者クラブとの馴れ合いムードが漂う内容。米軍機の横暴な飛行や漁業被害への米軍の補償などを厳しく追及する質問は全く出ていない。

<安倍政権下で進む「オープン会見」の形骸化と記者会見の劣化>

フリー記者らへの事前通告制は、手続きの煩わしさを含め事実上の「質問封じ」であり、安倍政権下で進む「オープン会見」の形骸化と同時に、記者会見の質の低下も示している。

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