新標語「統計の、不正で作る、好景気。発覚したら、部下のせい」-植草一秀

植草一秀[経済評論家]

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国会で統計不正問題が論じられているが、安倍内閣に寄り添うメディアが事実を歪めて伝えている。統計不正問題は二つに分けて論じる必要がある。ひとつは、法に定められた統計の調査方法等が厳正に守られず、そのために失業給付等が過小になってきたという問題。

支払われるべき給付が支払われなかったという事態を引き起こしており、これはこれで重大な問題だ。このような不正が長期間にわたり放置されてきた。問題の根源にあるのは統計に従事する職員数が大幅に削減されてきたこと。

だからと言って、法律違反が許されるわけではないが、職場の実情を十分に精査しない予算編成が行われてきたことにも責任の一端がある。いまひとつの問題は、安倍内閣がアベノミクスを良く見せるために、統計に広い意味の「偽装工作」を行ってきたとの疑惑である。

安倍内閣は、「隠ぺい、改ざん、偽装、ねつ造、開き直り内閣」と言われている。公文書のねつ造、改ざんは刑法に触れる重大犯罪だ。安倍内閣が刑事司法を不当に支配しているから、この重大犯罪が適正に立件されていないが、刑事司法が適正に機能しているなら、政府関係者から逮捕者が続出し、重い刑罰を科せられていたと考えられる。

今回は公文書のねつ造ではなく、公的統計の改ざん疑惑である。この問題は極めて重大である。偏向メディアは、「官僚の問題」や「歴代政権の問題」などを強調して、責任追及が安倍内閣に向かわないように情報を操作しているが、問題を二つに分けて分かりやすく論じる必要がある。

基幹統計において不正が行われてきたことについては、「官僚の問題」や「歴代政権の問題」が問われるべきだが、2015年以降の実質賃金算出およびGDP算出にかかる問題は、これと切り離して、「安倍内閣の統計偽装問題」として論じる必要がある。より重大なのはこちらの問題だ。

2015年9月に安倍首相は「新・三本の矢」なる政策を発表した。このなかで、名目GDPを600兆円にするとの目標が掲げられた。このほかに、希望出生率1.8、介護離職者ゼロ、が掲げられたが、いずれも「目標」であって「手段」ではない。「三本の矢」ではなく「三つの的」だと指摘された。

安倍内閣はあわてて官邸サイトの表記を訂正した。ドタバタで出てきた施策であったことがくっきりと浮かび上がった。このとき、安倍内閣はGDP600兆円を掲げたが、その背景に統計算出方法の変更でGDPをかさ上げすることが予め計画されていたのだ。安倍内閣の行動は極めていかがわしい。

そして、その後のGDP統計数値を精査すると、不自然な現象が観察された。

『アベノミクスによろしく』(https://amzn.to/2tw2I5G)の著者で弁護士の明石順平氏が詳細な分析を提示し続けてきた。私も昨年12月に週刊SPAの連載コラムでこの問題を取り上げた。とりわけ、研究開発投資によるかさ上げ分のなかに、不可解な「その他」計数の急激な拡大が確認されている。

明石氏は「ソノタノミクス」と表現しているが、不可解な統計数値の拡大が観察されている。経済統計に人為的な手を加えて、主権者である国民に偽装した数値を示していたことが事実なら、これだけで内閣は総辞職する必要がある。

メディアは問題の本質、問題の重大性を主権者に伝える必要がある。官僚の問題でもなく、歴代政権の問題でもなく、人手不足の問題でもない。安倍内閣による犯罪行為である疑いなのだ。総務省は、所管する基幹統計の不適切処理を公表した今月1日に、統計の重要性をアピールする「統計の日」に向けての標語募集を始めた。ネットでは現実に合う統計標語が多数掲示され、祭り状態になっている。

「お上から 鶴の一声 好景気」

「統計の 不正で作れ 好景気」

「統計は 答えを先に 決めてから」

など、現実を描写する標語が百花繚乱の状況である。この問題を適正に追及することが肝要だ。

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