風に流された五輪が暗示する未来 -植草一秀

植草一秀[経済評論家]

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緊急事態宣言そのものの効果というよりも、コロナに関するさまざまな情報を集約して人々がどう行動するかがカギを握る。

昨年春に感染第1波が観測された。新規陽性者数がピークを記録したのは4月10日。全国の新規陽性者数は708人。これに先立って人の移動指数はピークアウトしていた。

ちょうど一年前、昨年の3月20日がピーク。東京都の小池知事が「ロックダウン」という言葉を用いた。3月20-22日が三連休だった。この三連休に人出が拡大したが、ピークを記録したのがちょうど一年前の3月20日。3月20日をピークに5月5日まで人の移動が急激に減少した。緊急事態宣言が全国で解除されたのは5月25日だが、人の移動がボトムを記録したのは5月5日。

新規陽性者数は人の移動変化から3週間遅れて数値となって表れる。人の移動ピークが3月20日で新規陽性者数ピークが4月10日だった。私はアップル社が提供している人の移動指数を用いているが、人々の行動変化が正確に捉えられる。人の移動指数は、自動車、交通機関、徒歩の三種類に分けて数値が発表されている。人の移動が高水準で推移したのが7月下旬から11月末までだった。

安倍内閣は7月22日にGotoトラベルを前倒し始動させた。観光業界への利権付与が優先された。Gotoに伴う人流拡大が11月末まで続いた。11月21日の三連休初日に人の移動がピークを記録した。11月に入って新規陽性者数は明瞭に増加に転じていた。

感染第3波発生は明瞭だった。

11月3連休前に強い対応が必要だったが、菅義偉首相はGotoトラベルの全面的展開を強引に12月28日まで維持した。この影響で新規陽性者数がピークを記録したのは1月8日になり、その数は7844人に達した。2020年4月ピークの10倍水準になった。新規陽性者数激増に伴い医療が崩壊。感染しながら病院にも宿泊療養施設にも収容されずに、自宅で死亡する放置民死が多発した。新規陽性者数の波動を形成する二つの主因は、世界全体の感染波動と人の移動指数変化。

人の移動指数は12月入り後に減少に転じた。緊急事態宣言発出は遅れたが、人々が自衛的に行動して人の移動が急低下した。ボトムを記録したのは12月31日だった。1月に入り、遅ればせながら緊急事態宣言が発出された。

この影響もあって2月中旬までは人の移動が抑制された。しかし、2月中旬以降は人の移動が明瞭に再拡大に転じている。季節的にも人の移動が拡大しやすい時期に移行する。緊急事態宣言解除の思惑が強く影響している。抑制されていた人々の行動が一気に爆発しやすい状況にあることも影響している。

1年前は3月20日に人の移動はピークをつけて急激な減少に転じた。東京五輪延期が正式決定されたのは3月24日。宮城県で聖火到着式が実施されたのが3月20日。航空自衛隊アクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」が上空に五輪のカラースモークを描くことになっていた。ところが、五輪の輪は描かれずに強風に吹き流された。

東京五輪の行く末を象徴する聖火到着式になった。

この日から人の移動指数は急落。3週間後の4月10日に新規陽性者数がピークを記録して急速な減少に転じた。今年は3月21日をもって緊急事態宣言が解除される。世界的に感染第4波が生じるなら、日本において4月、5月に感染爆発が生じる条件が整えられつつある。

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