NHK「たけしのその時カメラは回っていた」予定調和の気持ち悪さ

高橋秀樹[放送作家/発達障害研究者]

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6月23日水曜日のNHK『たけしのその時カメラは回っていた』は、今とは全く違う昭和のサラリーマンの働きぶりをNHKの豊富なアーカイブフィルムで振り返る番組であった。さすがNHKこの素材フィルムの豊富さは他局ではかなわない。そこまで入り込んだかと思えるほどのモーレツサラリーマンの働きぶりを肉薄して捉えている。もっとちゃんとフィルムが見たい。

どういう意図なのだろうか。途中にパネリストのYOU、ビートたけし、劇団ひとりにクイズが出題されるが、このやり方が、もう手垢がついていて、見ていると白けてしまうほどの予定調和ぶりである。

最初の問題。「集団就職先の専務が、社員のためにここまでやるかという世話はなにか」YOUが一発で当てる。『結婚相手の世話』である。それで、VTRに進めばいいではないか。

ところがスタジオでは劇団ひとりが「YOUさん、当てるのはたけしさんの仕事」と注意し、YOUもしまったというように反応し反省する。これは、いらない予定調和だ。余計なトークだ。企業が人間の心根の大きな部分を占める結婚にまで口を出していたのかと考えると空恐ろしくさえある過去の現象。

そこから日本はひたすら経済発展おの道をひた走っていたはずなのに、今は、その経済でも、科学技術でも、医療でも、教育でも、エンタテインメントでも、二流国に落ちてしまったのはどうして7日、その当たりのたけしの意見も聞いてみたい。だがスタジオはどうして問題に正解できたか、そんなくだらないトークに終止する愚。百歩譲ってそのトークは、したとしても編集でカットすることはできたのではないか。

[参考]<上級トーク番組「週刊さんまとマツコ」>遠く離れた視聴者をテレビの前へと導くには?

笑いの人が、多くスタジオに出るようになって、座組の中での役割分担を自ら感じることが重要視されるようになった。自分はボケなのか、動きで表現するのか、知識を見せる役割なのか、その立場を考えてスタジオで振る舞うことができるのが、よいタレントという考えが定着した。

劇団ひとりの「YOUさん、当てるのはたけしさんの仕事」と言う発言はそれを意識してのもので、さらに、タレントは役割分担を考えて仕事をしなければならないという裏の仕組みをばらして笑いを取ろうというメタな企みである。だが、そこまで含めてこの仕組には飽きた。

過去に遡る。例えば、心ある人は覚えているだろう『ぴったしカン☆カン』という番組の回答者・藤村俊二(オヒョイ)さんは当てないことが仕事だった。わかっていても当てないように苦しむオヒョイさんを皆、笑った。見事なハズレ回答にも笑った。とんねるずの石橋などはこの位置に座るのが夢だと語ったほどだ。

でも、これだって、わざとらしく見えるようになった。その頃出てきたのが天然ボケ、まじボケである。作ったボケは天然・まじには決してかなわない。中村玉緒さん、浅田美代子さん、おじいさんおばあさん。ヘキサゴンの人たちは途中で痛々しくなったほどだ。玉緒さん、美代子さんは芸能人だから技を覚えてしまうと辛くなってきた。

今も残る完全台本どおりの『生活笑百科』から始まって、現在は役割分担を感じて、リアルのように演じる時代になったとも言えるが、おそらくはそうではなく、今の映像の見方は更に進んでいる。リアルのように演じることも時代遅れになったのである。

では『たけしのその時カメラは回っていた』の問題と答えはどうすればよいのか。やめればいいのである。クイズなどに時間を割くより、YOU、ビートたけし、劇団ひとりのトークの方に期待が持てる。しかし、やめられないのがNHKの古さとも言えるか。

 

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