<テレビで本気にさせる仕掛け>なぜ「ザ鉄腕!DASH」は脅威の視聴率を取るのか?


高橋正嘉[TBS「時事放談」プロデューサー]

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なぜ日本テレビの「ザ鉄腕!DASH」が脅威の視聴率(直近では9月28日3時間スペシャル24%)を取るのか、考えてみたことがある。

いくつもの要因があるだろうが、DASH村のころから醸成された、「どこか本気になっているテレビ」が成功の要因ではないかという気がする。形だけやっているのではない、本気だぞ! と思わせる、魅力があるのだろう。

こういう番組で「悪ふざけ」にならず、本気を見せ続けるのは実は難しい。ショーアップしなければと、本気を脚色することによって自滅していくことが多い。

「本気」で思い出すのが、かつてTBSで放送していた「そこが知りたい・各駅停車路線バスの旅」の初期のころの話だ。高視聴率を取り、シリーズ化していくのだが、当初はそれほど長く続くシリーズになるとはたぶん誰も思っていなかった。

この番組は視聴者として見ていたのだが、房総半島に行く回で突如「本気」になっていく様子を見た。この番組は入念なリサーチが行われてロケに行く。実際に路線バスを乗り継ぐというコンセプトで番組を作っていたのだが、それは簡単なことでもない。

バスの本数の少ないところもある。そこでは乗り継ぎの間の時間でネタを仕込んでおかなければならない。当たり前の話だ。だが一番大事なのは目的地に到着することだろう。一番の仕込みは到着地にされているものだ。

しかし、その時は、生憎「台風」に遭遇してしまった。

この回で面白かったのは、車が動かなくなり、雨の中で渋滞となってしまった後のやり取りだ。大雨の中で動かなくなった車をバスに乗っていたレポーターが、降りてきて必死に動かそうとする。だが、多くの他の車の中にいるドライバーたちは手伝おうとしない。

そこに苛立つレポーター。テレビのカメラがあるのを忘れたかのように余裕のない苛立ちを見せる。「本気」だったのだろう。協力し合おうとしないドライバーへ向けられた怒り。

それは正義感といえるようなものだった。だが、それだけでどうなるでもない。散々苦労した挙句、宿に辿り着く。そのときの安堵の顔。これはよかった。

だが、この偶然を毎回期待することは出来ない。「本気」になって乗り継ぐ、これだけでは「本気」を維持していくモチベーションにはならない。結局、毎回、毎回「本気」にさせていく仕掛けが必要になる。

もちろん、これは簡単ではない。「そこが知りたい」の「各駅停車路線バスの旅」シリーズは十数年続くことになった。スタッフの「本気」にさせる仕掛けの悪戦苦闘はずっと続いたのだろう。

この後、さまざまな地上波、BS放送に「バスの旅」が登場してきたのだから、たいしたものだ。方法論として定着したのだ。

「本気」にさせる仕掛け。これは難しい。「ザ鉄腕!DASH」ではいくつもの資格を取る、何かに挑戦する、そういったイベントに本気にさせる演出が巧妙に仕込まれているのだろう。「本気」にさせる演出もなく形だけまねるのは、やはり番組を魅力的にはさせない。ショーアップしようとすればするほど自滅していくことになる。

今、「本気」にさせる番組が減っているのかもしれない。

[メディアゴン主筆・高橋のコメント]「そこが知りたい」の「路線バスの旅」は、「発明の企画」です。この「発明」は特許もしくは実用新案であり、通常は著作権料が発生するものだと僕は思います。

 

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高橋正嘉

高橋正嘉(たかはし・まさよし) TBSビジョン専務取締役 1951年生まれ 明治大学文学部卒業  TBSテレビ「そこが知りたい」に立ち上げから終了まで15年間携わる。 BS-TBSで「唐招提寺」プロジェクト・プロデューサー。 芸術祭ノンフィクション部門優秀賞を受賞。現在、TBS「時事放談プロデューサー」