<衆院選公約を斬る>年2.7兆円の国民負担を強いる民主党・菅直人政権が残した「悪法」の処理


石川和男[NPO法人社会保障経済研究所・理事長]

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再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が2012年7月に施行されて以来、大規模な太陽光発電(メガソーラー)による事業参入が爆発的に増えた。資料[太陽光の導入量と認定量の比較]にもあるように、さながら“太陽光バブル”の様相。だが、再エネ電気を買い取る電力会社側の送電網能力を超える事態となっている。

 

資料[太陽光の導入量と認定量の比較]

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(出所:経済産業省・新エネルギー小委員会・平成26年9月30日)

現在、電力5社(北海道・東北・四国・九州・沖縄)が、新たな再エネ事業との接続を停止している。このため、FITに基づく経済産業省の「認定」を受けたが発電開始に至っていない再エネ事業参入予定者の多くが、大混乱に陥っている。これが「再エネ接続問題」の概要だ。

こんな細かい話が選挙の争点か、と思う人も多いかもしれない。しかし、これは今、最も致命的な課題の一つ。下手をすると、国家賠償請求訴訟が頻発する可能性もある。

これについて、自民党、公明党、民主党の公約は、それぞれ以下の通り。

[自民党]系統制約問題を克服し、再生可能エネルギーの最大限、かつ持続的な導入促進と国民負担の可能な限りの抑制とを両立させていきます。

[公明党]再エネの発電所を作っても送電線につないでもらえない、いわゆる接続保留問題について、全国的な融通拡大、送電線の強化等を行うとともに、固定価格買取制度を見直し、国民負担を抑制しつつ再エネを拡大するための抜本的な対策を講じます。

[民主党]電力会社による接続保留については、原則、即時の接続保留解除を求めます。

与党である自民党と公明党の公約は、政府・経済産業省で今進められている検討内容と同じ方向。通常、与党の公約は政府(つまり霞が関の中央官庁)に作成させるか、確認させるかしているので、内容的に無難なものに収まる。だから現実的であって、おもしろみはない。

対する民主党の公約だが、与党の公約と決定的に違う点が一つある。それは、再エネ導入に伴う「国民負担」に関して何ら言及していないことだ。与党の公約には、再エネ導入に伴う「国民負担」の「抑制」について明記されているが、民主党は、そうしたコスト意識はないのだろう。

現時点で政府の認定を受けたメガソーラーを全て接続して買い取ると、国民負担は年間2.7兆円にも上る。これは、国民一人当たり年間2.3万円、4人家族の標準世帯では年間9万円の負担となる。再エネの大量導入と巨額のコスト負担は、背中合わせの関係にある。

FITは、前・民主党政権の菅直人首相(当時)の申し子のような“悪法”。自分たち政権の時に制定した悪法なのに、反省がない。もっとも、民主党の中には、FITを即刻改正すべきだと思っている議員もいる。見識ある議員が台頭してこないと、今回の民主党の公約を見る限り、同党の未来はないだろう。

更に、“即時の接続保留解除を求めます”などと、およそ現実を無視した要求を掲げている。しかし、どんなに政治家が叫んでも、どんな法律を作って電力会社に義務を課そうとも、技術的に無理なものは実行不可能なのだ。

もっとも、“求めます”とあるのは、求めるだけなら誰でもできるということかもしれない。そうであるならば、なかなか練られた書き方だ。いずれにせよ、“即時の接続保留解除”は技術的にあり得ない。

政治的に困難なものでも、技術的に可能ならば、政治が変われば実現可能である。しかし、技術的にあり得ないものは、政治が変わろうが変わるまいが、実現は不可能だ。

 

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石川和男

石川和男(いしかわ・かずお)NPO法人社会保障経済研究所・理事長。1965年、福岡県生まれ。東京大学工学部卒業。1989年、通商産業省(現経済産業省)入省。エネルギー政策、産業保安政策、産業金融政策、中小企業政策、消費者政策、物流・流通政策などに従事。2007年3月、経済産業省を退官。2008〜09年、内閣官房・国家公務員制度改革本部、東京財団上席研究員、政策研究大学院大学客員教授、政府の規制改革会議、行政刷新会議WGなどの委員を歴任。