「少ない予算」が「笑い」を拙くする?フジテレビCSのヒット番組「ゲームセンターCX」


高橋維新[弁護士]

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フジテレビCSの「ゲームセンターCX」という番組がある。有野晋哉(よゐこ)をメインに据えて、昔懐かしいレトロなテレビゲームをコンセプトにしたヒット番組だ。

最初に断っておくが、筆者は「ゲームセンターCX」のファンといえるほど、この番組が好きではない。この番組のDVDを見ていると、寝落ちしてしまうことがあるほどである。他方で、司法試験の勉強中などに見始めてしまうと延々と見ていることができたので、逃避エネルギーの手助けがあって初めておもしろくなる番組であった。

世の中には様々なテレビ番組があり、人には様々な好みがある。筆者にとっては、「ゲームセンターCX」は、「めちゃ×2イケてるッ!(フジテレビ)」や「ガキの使いやあらへんで!!(日本テレビ)」のように「毎週欠かさず見る」レベルの番組ではない。

かといって「おしゃれイズム(日本テレビ)」や「メレンゲの気持ち(日本テレビ)」のように「興味がないので全く見ない番組」というわけでもない。いわば、そのちょうど中間のような番組だ。「見たら見たである程度見ていられるが、わざわざ時間をとってまで見るような番組ではない」のである。

筆者もそれなりにテレビゲームをする方なので、この番組のコンセプトには大いに共感できる。それでもこの番組が筆者の中で「毎週欠かさず見る番組」になりえていないのには、それなりの理由がある。

「ゲームセンターCX」は地上波の番組ではなく、CSの番組である。そのため予算も少なく、タレントも多くは使われない。現に、この番組に出ているタレントは有野晋哉一人である。他にタレントが必要になれば、スタッフがその代わりをしている。ナレーションを入れているのはこの番組のプロデューサーであり、ディレクターやADも頻繁に画面上に登場する、そういう番組なのである。

プロデューサーのナレーションは、本職と聞き紛うほどに巧いが、他のディレクターやADは流石に素人であって、全てがヘタクソである。カメラの前に立つ人間としての心構えは(当然といえば当然だが)全くない。(当たり前だが)声を張らない。(そもそもスタッフであるのだから)画面の中でのテンションも低い。(コメンテーターでもタレントでもないスタッフなのだから)質問されてもきちんとコメントができない。つまり、番組内で与えられた役や設定に入りきれていないのだ。

芸人・有野に、この「ヘタクソさ」をいじる力量があればまだ救われるのだが、もちろんそうはなっていない。結果として、素人のスタッフは有野に拾ってもらうこともなく、ヘタクソのまま放置されている。

有野自身、芸人として状況を臨機応変に笑いに変えてくまで力があるわけではないので、番組全体を通してのおもしろさの密度は低い。しかも、有野がゲームに詳しいのか、といえば、今でもゲームをするのは確かなのだろうが、そこまで知識が豊富であるという印象は受けない。

例えば、番組の初期にはクリエーターにインタビューするというような企画もあったのだが、有野にいわゆる「ゲームオタク」と言われているレベルの芸能人ほどに知識があるとは思えなかった。もちろん、知識不足は下調べである程度は補えるが、そういう努力をした形跡も見られなかったように思う。

スタッフも、ゲームの知識が豊富な人は少数派であるという印象を受ける。編集を見ても、例えばクリエーターのコメントをそっくりそのまま字幕にしているだけだったりして、深みがないのである。

こう書くとおもしろくもなんともない番組のように思えてしまうが、もちろん、見るべき箇所もある。

現在の番組のメインコンテンツは、「有野の挑戦」というコーナーである。このコーナーは文字通り、有野が番組側から与えられたゲーム(特に古き良き時代の極めて高難度のゲーム)に挑戦しクリアを目指すという内容になっている。しかし、ゲームのクリアに挑戦する有野であるが、ゲームがうまいかヘタかでいえば、ヘタである。だからと言って、

「ヘタクソながら、たまに色々なミラクルを起こして、壁にぶち当たりながらも難しいゲームをクリアしていくさまが感動的だ。だからこの番組はウケたのだ。」

などというのはもう他の人が言っているので言いたくはないが、有野が難しいゲームに十何時間もひたむきに挑戦し続ける真面目な人だからこそ、番組にある種の「感動」を呼んでいるという事実はあるだろう。

このコーナーの出演者が松本人志だったら、おもしろいことを適当に言ったあと途中で投げ出していたと思う。あるいは、明石家さんまだったら、おもしろいことを言うばかりでゲームをなかなか始めなかっただろう。有野がこのメインコーナーの趣旨とピッタリ合致するタイプの人間だったことは、番組にとっては運が良かったと言える。しかしながら、逆に言えば「有野の挑戦」以外のコーナーは、普通に有野よりも力のある芸人がやった方がおもしろくなるはずである。

もちろん、「有野の挑戦」が呼び起こす「感動」以外の部分の、番組における「笑い」の部分の拙さは、全て「金がない」ことに起因している。金がないから有野だけを使わざるを得ないし、スタッフという素人を使わざるを得ない。金がないからスタッフ部分の人件費を削らざるを得ず、ADにしわ寄せが行く。ADが激務になるから、編集にも時間がとれず、深みのないものになる。予算のなさが、この「負のスパイラル」を生み出し、番組のクオリティを下げているのだ。

特にこの番組のADは途中で(会社自体を)辞める人が異常に多い印象を受ける。今のADはもう13代目である。ロケハンで十何時間ゲームをやり、その後十何時間同じゲームをプレイする収録に付き合って、あとで編集に協力するためにまたその十何時間の映像を一から見返すとあっては、いくら時間があっても足りないのは自明である。時間がないから、編集も単純な切り貼り程度のことしかできない。

そして根本的で最大の問題は、この番組のようなヒット作を作り出している制作会社に、いつまで経ってもお金が回っていかないということだ。やはりテレビ業界の構造的な問題があるのではないかと考えざるを得ない。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。