<差別?ポリシー?>なぜ「ミシュラン星付レストレン」は女装者の客を「他の客に見えない場所」に座らせたのか?


安達元一[放送作家]

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先日、知人たちとともに港区にある「ミシュラン星付き」のフレンチレストランへ食事に行った時に、大変に屈辱的な経験をしました。

訪問したメンバーの中に、トランスベスタイト(異性装者)の男性がいました。いわゆる「女装家」です。もちろん、それは宴会の出し物のコスプレでもなければ、おもしろ半分の着ぐるみのようなものではありません。彼女(?)は自分のアイデンティティーとして異性装をしているのです。もちろん、筆者も一緒に食事をともにして不愉快な思いをしたことはありません。

さて、その彼女が「ミシュラン星付き」のフレンチ店に入り、何気なく空いていた中央の席に行き、その場所に座りました。するとどうでしょう、店員がそそくさとやってきて、「店のはじっこの席」に行くように促されました。

さらに、トランスベスタイトの彼女に対して、中央に背中を向けて座るようにと言われたのです。少し遅れて入店した筆者が到着した時点で、彼女はその状態にさせられていたのです。

このいわれのない屈辱的な扱い。もちろん筆者の目の前でされていれば、その場で抗議したのですが、彼女は、ばつの悪そうな顔で寂しいそうに座っていました。あまりに悲しそうなその姿に、さすがに怒りがこみ上げてきました。

支配人を呼び、この屈辱的な扱いに対する事実確認と苦情を伝えることにしました。もちろん、楽しい食事の最中なのでその場での口頭でのやりとりは避け、「なぜ、その様な判断をこの店はするのか?」ということを、書面で回答をもらうこととしました。

そして、その店が出してきた回答が更に筆者の怒りに火を注ぐものでした。
その理由は、

「他のお客様の迷惑になるから」

だというのです。それに対して、筆者が、

「迷惑って具体的にどういう事ですか?」

と、確認をしたところ、

「他のお客さんが気になって、本来食事中にする会話が出来なくなる」

という回答です。さすがに、これには「怒り」というよりも「悲しさ」さえ覚えました。ミシュランの星がいくつ付いていようが、ここまで意識の低い店が大手を振って「有名店です」と営業できている事実に愕然としました。

ようは、

「お前は見ていて不愉快なので、他の客に見えないように背を向けて端の席に座れ!」

ということなのです。もちろん、不潔な格好をしているわけでも、ショーパブの出演衣装のような格好ではありません。純粋に、女性としての装いをしているだけなのです。

この店に聞きたいことは、

  • マツコデラックスがきても同じことを言うのですか?
  • 車椅子のお客さんがきたら何と言うのですか?
  • アルビノ(先天性白皮症)のお客さんが来たらどう扱うのですか?
  • 四肢欠損のお客さんにはどう対応するのですか?

もしかしたら、筆者がこういった問題について神経質なだけかもしれません。しかし、マツコデラックスのような有名人が来れば、ニヤニヤ笑いながら支配人が挨拶に来る様が目に浮かびます。

しかし、この店に腹を立てている一方で、筆者は自分が言っていることに対して「一抹の気持ち悪さ」もあります。なぜなら、「そんな店だった」とは知らなかったにせよ、自分自身の意志で「その店」選んで行っていたからです。強制的に連れてこられたわけではありません。

このお店が、ハッキリと

「うちはトランスベスタイトはお断りです」

とか、

「男性(女性)が女装(男装)していたことが発覚した場合は、他のお客様の目の届かない席にご案内する場合がございます」

などと謳っている店であれば、それはそれで潔い経営方針だと思います。愉快・不愉快には個人差はあるでしょう。店によっては通常のドレスコードもあります。「短パンとサンダル禁止」のレストランに対して、「短パンとサンダルのアイデンティティーが傷ついた!」とは、誰も言わないはずです。

最近では、箸が使えない人は入店お断りの和食店もあるようです。公共の場であれば、許されないと思いますが、店が自己主張をするのは全て非難されるものでもありません。そういった店には「客として行かないこと」を選択することができます。

トランスベスタイトの彼女はめいっぱいのオシャレをして、美しく上品に着飾っていたのです。彼女が安心して食事が出来る社会にするべきではないでしょうか。多様さの相互理解が問われているように思われます。

 

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安達元一(あだち・もといち)放送作家。1965年生まれ。バラエティ番組を中心に活躍する放送作家。株式会社モトイチエンタテインメント代表取締役。近年では教育ビジネスの分野でも活躍。一般社団法人ビジネスプロモーション協会理事。コンテンツブレイクスルーカレッジ主宰。アイデア工学Works主宰などその活動は多岐に渡る。第57回国際エミー賞入賞「たけしのコマネチ大学数学科」、第42回ギャラクシー賞テレビ部門大賞受賞「笑ってコラえて!文化祭 吹奏楽の旅 完結編 一音入魂スペシャル」、2007年国際平和映画祭JAPAN in こしの都、グランプリに当たる「こしの都賞」受賞「一宿一通」、処女小説「LOVE GAME」(幻冬舎)を上梓、読売テレビにて連続ドラマ化など。