<宮崎アニメは犯罪者の心をくすぐる?>教育という視点からはエンターテイメントは売れる程「だめな作品」になる


江川達也[漫画家]

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「この映画を見て、楽しくて、今日は現実忘れて馬鹿になれた。」とよく人は言うが、まさにそういう映画がエンターテイメントなんだろう。

「この話を聞いてから、現実に生きていくためには、事実を分析して打開策を練り実行することが大事だとわかり、なんとか生きてこれた気がする。」と言う人もいる。まさに、そういう話をすることが教育なのだろう。

教育とエンターテイメントは真逆だと、筆者は考えている。

教育は現実に向き合いどうにかするためのものであり、エンターテイメントは、現実から逃避して楽しむためのものなのだ。

そう、教育は「向かう」。エンターテイメントは「逃げる」ためにものである。なので、教育という方向で評価するのか、エンターテイメントという方向で評価するのかで、作品は、真逆の評価となる。

例を挙げて一番今の人がよくわかるのは、少年ジャンプや宮崎アニメ(高畑アニメではない)、ディズニーランドや高視聴率ドラマや受けたハリウッド映画に「ドラえもん」、人気小説などなど、エンターテイメントとして受け入れられていて有名なものだろう。

漫画なんかは、教育方向という可能性もあるのに、すべて「エンターテイメントじゃなくてはいけない」というような誤解があって、エンターテイメント至上主義となっていて、知能の限界を感じる業界だ。漫画だけじゃなく、世間全般でもエンターテイメント以外は駄作と思ってる人々が沢山いるのが、少々、教育的方向の作品が好きな筆者としては、哀しい現実ではある。

筆者には、エンターテイメントは教育というベクトルから見ると、酒やタバコや危険なドラッグに見える。どんどん、現実逃避して、思考がおかしくなっていく嗜好品だ。「いやいや、エンターテイメントは、生きるのに素晴らしい指針をあたえてくれるものがあるんだよ。」と反論する人もいるだろう。しかし、そうは思えない。

エンターテイメントの中における、テーマらしきものは、欲望を満喫するだけでは、良心の呵責が作用して後ろめたい気持を払拭させてくれる大義名分でしかないからだ。

そして、作り手も言い訳のテーマ(大義名分)でしかないものを本気で信じて「コレが訴えたいものだ」などと、公言しながら、実質は幼女誘拐いたぶりスカトロエロ&大量殺人破壊闘争欲求を満たす作品を興奮しながら作っている。正義の名のもとに溢れんばかりの現実逃避欲望大開放である。

見ている人も一緒に気付かず、よく膨大開放をしながら、正義の美酒に酔えるので大ヒットだ。自覚的に作品を作る人もいる。「この作品はこういう欲望を満喫させますよ」と提示してエンターテイメントしている作品だ。

しかし、自覚的な作品はあまり大ヒットしない。なぜなら、見ていてどこか気が引けるからだ。やはり、欲望を気付かせない美談のほうが気持いい。

しかも作り手も気付かない方が、より受け手も気付かない作品になり気持がいいのだ。この姿は、良心の呵責のない犯罪者の心理構造に似ている。何の良心の呵責もなく欲望を満喫できる言い訳が用意できるモノは気持よく犯罪行為を執行することができるのである。

だから、宮崎アニメは犯罪者の心をくすぐるのだろう。

高畑さんは、宮崎さんにそこを指摘できる頭脳を持っていると筆者は見ている。聞いたところによるとかなり前に宮崎さんに高畑さんがあることを指摘したところ、それから宮崎さんは高畑さんと口をきかなくなったとか。でも、今でも宮崎さんは口をあまりきかない高畑さんにほめられたくてアニメを作ってるそうだという。

なんだか、いい話だなあ。と思う。いや、いい話か?

この話はあくまで、教育という視点からエンターテイメントを捉えて分析した話だ。

教育という視点からはエンターテイメントは売れれば売れる程、だめな作品ということになる。なぜなら、教育とエンターテイメントの価値は真逆を向いているからだ。

という持論に基づいて語られているからなのである。

そういう公理系から導き出される分析でしかないことを言っておきたい。違う公理系なら違う結論になるであろう。その公理系を受け入れる余裕は持ってはいるが説得力はあまり感じない。教育という世界とエンターテイメントという世界両方で送り手として経験豊富な人がいて違う考えを持っているならその説を聞いてみたい。

が、そもそも両方の視点を持ってその両方の世界で生きている人を筆者は知らない。

 

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江川達也

江川達也(えがわ・たつや)漫画家。1961年、愛知県生まれ。愛知教育大学教育学部卒業。 アシスタントの傍ら描いた習作『Don't Give Up』が『コミックモーニング』編集部の目に止まり、1984年、「BE FREE!」(『モーニング』)でデビュー。その後『まじかる☆タルるートくん』を始めとする少年誌向けのギャグ漫画や、『東京大学物語』『GOLDEN BOY』などの青年誌向けのストーリー漫画まで幅広い分野で執筆し、作品がアニメ化されるなど、立て続けにヒット作を生み出す。