<倫太郎と夢乃の物語>第4話でようやく動き出した「Dr.倫太郎」の本当の見どころ

テレビ

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事/社会臨床学会会員]
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11回あるテレビの連続ドラマは大概、2話から4話くらいまで脚本ができあがった段階でクランクインする。
第1話を放送しているときは5話から7話までの脚本ができあがっているというペースである。だから、「Dr.倫太郎」(日本テレビ)第4話放送時の5月13日は、6話から8話までくらい脚本ができあがっている計算だ。
なぜ、こんなことをくどくど書いたかというと、できあがっている脚本を、視聴者の反応に合わせて直すのは、通常ものすごくしんどい作業だと言いたかったからだ。つじつまが合わなくなるなどというドラマ上の理由も、もちろんあるが、それ以上にしんどいのは、作り手の気持ちが萎えることだ。
「Dr.倫太郎」の脚本家、中園ミホさんはクランクインの時、何話まで書いていたのだろう。
第4話は、これまでとは明らかに構造が違う。
3話までは「一話読みきり」で解決する何らかの精神疾患が描かれていた。しかし、今回は、若い女性のギャンブル依存症が描かれるものの、それは倫太郎(堺雅人)と夢乃(蒼井優)の、関係に大きな陰を与える夢野の母親(高畑淳子)のギャンブル狂いの振り程度にしか描かれていない。
ギャンブル依存症では1対1のカウンセリングはあまり効果がなく、集団精神療法を行うことが望ましいとされる。週に1、2回、少なくとも2年間ほど、ギャンブル依存者同士の自助グループに参加し自らの悩みを語ることを継続する必要がある。
注意しなければならないのは、家族など周りの人間による借金の肩代わりは、ギャンブル依存者に対する債権者からの信頼を高め、借金をしやすい環境を作り出すだけであるということだ。親だから子だからといって決してギャンブル資金を貸してはいけない。貸したものへの依存が発生するだけだからである。
ドラマではそのあたりも描かれていたが、駆け足過ぎて何のことかわからない人も多かったであろう。この、ギャンブル依存症に陥って夢乃に金を無心して苦しめるのが母である。
夢乃は、母親に捨てられたも同然の過去を持つが、しかしそれ故に、母への思いは強い。
浜辺で夢乃が、砂で乳房を作っている。ひとつは、丸いお椀のような乳房、もうひとつはとがった刺さりそうな乳房。これは心理療法のひとつ「箱庭療法」を自然の中で、やっていることになる。この造形を見て倫太郎は精神分析家として、解釈する。

「母を求めているが、母とは深い確執がある」

精神分析家でなくてもそう思うような気がするが、こうして、本来、描くつもりだったであろう倫太郎と夢乃の物語に放送時間が割かれて物語が進んでいくのは、何しろめでたいことである。筆者は第5話も見る気になった。
ところで、遠藤憲一さんのキャスティングだが、大きい役者さんの起用は何かと難しいものである。
 
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