<ガーシー狙い撃ちは理不尽>全議員の欠席数・発言数・露出数の情報公開を

社会・メディア

藤本貴之[東洋大学 教授・博士(学術)/メディア学者]

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国会欠席(というよりは非登院)への懲罰として課された「議場での陳謝」に応じなかったとして、「除名」すなわち国会議員の地位が剥奪される可能性が高まった「政治家女子48党」のガーシー参院議員。これまで恐怖心や不安を含めた危機感を募らせてきたメディア業界もここに来て、一気に「ガーシー攻撃」を初めているようにも感じる。

歳費を受け取っておきながら、議場に来ない=仕事をしていない、という論理に基づけば、確かに税金を無駄遣いしているようにも見える。しかし、である。

「国会議事堂に来ている=仕事をしている」という論理は本当に正しいのか。

多くの議員がさまざまな仕事を抱え、必ずしも全員が全員、毎回国会に出席しているわけではない。大物議員、有名議員には、活躍しているがゆえに、欠席数の多いケースがある。よって、欠席している議員が全員、個人的な遊興やサボりに使っているわけではない。むしろ、災害時などは、積極的に国会を欠席し、現場に足を運んでほしいと願うのが民意だ。戦時下や災害時に議場でふんぞり帰っているような議員は信頼できない。

それを理解しているからこそ、本当に無能でサボっているだけの議員に対しても、私たちは「なにか重要な仕事をしているはずだ」という性善説に基づき、国会議員の欠席を黙認してきた。政治家の評価の尺度「出欠」ではない部分に見出してきたのだ。

そこでガーシー議員の騒動である。

彼は「議場にさえいれば、仕事をしていることになる」という日本の国会の古い考えに対してアンチテーゼを出し、外からでも積極的に攻撃と参加をする! という主張をして30万票を獲得し、当選している。メディアからの報道も含め、ガーシー議員から出される情報発信は、国会内でもトップクラスだろう。彼は、粛々と選挙期間中の公約や約束を遂行しているわけであり、投票した30万人のほとんどはそれを理解しているし、容認している。ガーシー議員に投票した人の多くは彼の姿勢を応援しているはずだ。言うまでもなく、オンライン登院が許可されれば、彼は間違いなく出席率100%だろう。

[参考]<国会議員に欠席率はない>ガーシー議員への招状こそ活動実態の証

現在、国会内でかしこまって座り、ガーシー議員を批判している議員の中には、居眠りや欠席の常習者や無発言・無提言の「開店休業議員」はいくらでもいる。選挙の際、ガーシー議員より得票数が少なかった議員もいる。言うまでもなく、ガーシー議員は、露出や情報発信、発言が多いからこそ注目されているのであり、発言も露出も皆無の議員よりは、はるかに国民の役に立っている。少なくとも、無党派層、若者層の「投票離れ」が問題視されている今日において、ここまで政治や議員が注目を集めた事例は、60年代の学生運動以来、戦後初めてではないか。その意味だけでも、ガーシー議員が今日の政治に果たした役割、国民へ与えたメリットは大きい。

もし、ガーシー議員を除名し、国会議員の身分を剥奪するのであれば、少なくとも、国会としては彼の政治姿勢を支持した30万人と同規模の「組織票以外」からの有権者30万人分の「ガーシー議員除名賛同の署名」を集める必要はあるはずだ。そうでなければ、投票した無党派層30万人の民意はどうなるのか? 少なくとも、ガーシー議員より少ない得票数で当選した議員や、特別な事情なく欠席の事実のある議員は、除名議論に参加する資格はない。もちろん、当選以来、一度も国会内で発言した実態のない議員も同様だ。

もちろん、そのためにも全ての国会議員の欠席数を含めた議員としての参加実態の情報公表をすべきである。国会内での発言数やメディアでの露出数もカウントしなければ、フェアではない。ガーシー議員とて、目立たなければ、欠席を指摘されることはなかったのだから(戦後にも全欠席議員、それに準ずる議員はいるが、懲罰は課されていない)。

出る杭は徹底的に打つ、二度と表舞台に出れないように、メディアと政治が共同して駆逐する。この時ばかりは左右の思想の枠さえ超えて連合して打つ、というのは日本のお決まりの風景である。多くの国民、少なくとも若者層、無党派層を中心に、この風景に辟易としていることになぜ政治もメディアも気づかないのだろうか?

こんなことばかりしているからこそ、政治離れ、メディア離れが加速するという事実に早く気がついてほしいものだ。

 

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