<2015年夏クール・注目のドラマはこれだ>女性版「半沢直樹」とでも呼べそうな「女性がやり返す」系のドラマが豊作


黒田麻衣子[国語教師(専門・平安文学)]

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夏クールのドラマが始まった。

今クールは、女性版「半沢直樹」とでも呼べそうな、女性が「やり返す」系のドラマが多い。

「半沢直樹」と同じ池井戸潤原作では、日本テレビ系の「花咲舞が黙ってない」、久しぶりの内館牧子脚本「エイジハラスメント」(テレビ朝日系)、「リスクの神様」(フジテレビ系)や「37.5℃の涙」「ホテルコンシェルジュ」(ともにTBS系)も、がんばる女性を描いている。(「リスクの神様」の主役は堤真一だけれど、彼の下で起死回生を目指しそうなかおり(戸田恵梨香)が出てくる。)

働く女性の、職場でのさまざまな軋轢を題材に、登場人物のみならず、見ているこちらまでスカッとストレス解消できそうなラインナップだ。

興味深いのは、これらのドラマにおける描き方の違いだ。

「花咲舞が黙ってない」は、権力を盾にやりたい放題の男性上司を相手に、若い女子社員がひじ鉄をくらわす「勧善懲悪」的ストレス解消ドラマ。「エイジハラスメント」も、新人女子社員からの「倍返し」系だ。

この2作品の特徴は、日常の職場において、自分たちが思っていても実際には言葉にできない「心の声」が、ドラマ内で発せられるところにある。本当は職場の「アイツ」に喰らわしてやりたいヒジテツを、自分の代わりにガツンと一発お見舞いしてくれる。そんな姿に、視聴者は今日までの溜飲を下げ、明日の仕事への活力をもらうのかもしれない。

両作品とも、上司の悪辣さがステレオタイプで、「水戸黄門」的なわかりやすさがポイントとなっている。

今、働く女性をターゲットしたドラマは、恋愛から「オンナ版倍返し」に、完全に主導権が移ったようだ。

そんな中で、働く女性を主人公にしながらも、ストレス解消系とは少し趣を異にするのが、「ホテルコンシェルジュ」「37.5℃の涙」や「婚活刑事」(日本テレビ系)などの作品だ。これらは、前クールから継続のNHK朝ドラ「まれ」やNHKドラマ10「美女と男子」同様、仕事にプライベートに、奮闘する女性を等身大で描いている。

仕事と恋の狭間で悩んだり、仕事で失敗して落ち込んだりしながら、少しずつ成長していくヒロインたち。「美女と男子」は、初回で仲間由紀恵演じる主人公一子の、あまりの女王様ぶりに度肝を抜かれて辟易したが、回が進むにつれて、どこにでもいそうな「少し不器用だけれど、がんばり屋さんの女性」に変貌してきて、見応えが増してきた。

「37.5℃の涙」も「自分に自信が持てない女性」が仕事でのさまざまな経験を通して成長していく物語のようだ。「婚活刑事」はコメディ色が前面に押し出された作りとなっており、滑稽さがウリのようであるが、いちおう、この系列に分類しておく。

自分と同じような悩みを抱え、日常のふとした瞬間の怒りや悲しみ、笑いや喜びを取り上げ、主人公が目の前の壁を乗り越えていく、この手のドラマは、同世代の女性の共感を呼びやすいのかもしれない。

「ホテルコンシェルジュ」も、西内まりや演じる新人コンシェルジュの奮闘記なのだけれど、今クールは、この作品を筆者はもっとも楽しみにしている。初回では、やり過ぎ感も否めなかったのだが、2話を見て、心を奪われた。この作品には、人間愛がある。主人公の周りで働く人々は皆、仕事へのプライドと愛情を持ち、互いに信頼し合い支え合っている。

「花咲舞が黙ってない」や「エイジハラスメント」が、イヤな相手にひじ鉄を喰らわすことで問題解決を図るなら、「ホテルコンシェルジュ」は、イヤな相手を深い愛で包み込むことで問題を解決していく。イソップ童話の「太陽と北風」のような対比だ。

TBSは「天皇の料理番」に続いて、今クールも人間愛を描き出してきた。

イヤな相手をやっつけて爽快感を得るのも悪くはないが、真心に触れてほっこりあたたかい気持ちをもらうことのほうが、心が満たされる気がする。毎日のニュースが、殺伐とした世の中を伝え続けている今だからこそ、こんなドラマが人々の癒やしになるような気がしている。

まだまだ今クールのドラマは始まったばかり。これらの作品における、主人公の女性たちの奮闘活躍ぶりに期待している。

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黒田麻衣子

黒田麻衣子(くろだ まいこ) 徳島テレビ祭スタッフ。もと高校国語教師。ドラマ好きのアラフォーおばちゃん。「平安時代文学の広報部長」。現在、徳島に高校生・大学生の社会体験を支援する団体『ソーシャル・ポート』設立準備中。