凋落フジテレビに必要なのは「他人がつくった番組」を応援する姿勢


高橋正嘉[TBS「時事放談」プロデューサー]

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TBSばかりではなく今度はフジテレビの視聴率が下がり、なかなか上昇してこない。業界紙を読んでいるとフジテレビの経営層からの苛立ちが頻繁に発信されている。

一度落ちるとなかなか上がらない。また上がる、ということがただの幻想ではないかと思えてくる。テレビ局全体の視聴率が落ちて久しい。

何かが変わってきたのだろう。視る方なのか、作る方なのか。視るほうのせいにするのは簡単だが、作るほうにも原因があるようにも思える。

フジテレビといえばふとかつて放送された番組が浮かんでくる。

15年ほど前だと思うが「小さな留学生」という単発番組が放送された。中国から父親の転勤で日本に来た小学生の転校を密着した番組である。中国のテレビプロデューサーが追跡取材し、それがフジテレビのプロデューサーの目に留まり放送したものだと記憶している。当時話題になった。

この番組が面白かったということを言いたいのではない。この頃のフジテレビには熱気があったのではないかと言う事だ。

中国人の少女を主人公にしたノンフィクションを夜の時間に放送し、高い視聴率を取る、こんなことは当時でも実現は大変だったろうと思う。しかも長時間番組だった。

たまたまこの番組を見るきっかけになったのは、確か「とくダネ」でこの番宣を扱っていたからだ。通常番宣というのはどこか冷ややかなものだ。自分たちで作ったわけではないからだ。

だがその時の番宣は、その冷ややかさを感じなかった。「とくダネ」チームもこの番組を応援する熱があるように感じられた。番組を伝えるスタジオトークにも熱があった。

中にいたわけではないので分からないが、フジテレビ中に成功させようとする雰囲気が充満していたのだろう。

今この雰囲気を求めることは難しいように思える。どこかお手並み拝見という雰囲気があるように感じられてしまう。

今まで得意だったジャンルがうまく行かなくなった時に立て直すのは簡単なことではない。特に届ける対象を変えようなどということは最も難しいことだ。作り手の面白いと思う価値観はそう簡単に変わらないからだ。それでも変えようということは価値観を変えることになる。自信を失ってしまう原因だ。

新しい価値観を作り出すのは、新しい価値観をもった人に取って代わることと一緒だろう。時間がかかる。あるいは人の異動でやる場合もあるだろう。

でも、そんな人はどの部局にも育っていないだろう。価値観は人生観が反映する。そんな簡単に変更は出来ない。逆に人生観が反映しない価値観は面白くない。

「小さな留学生」はほんの少数の人がかかわり、その人の価値観が大きな力になった。中心スタッフは中国から来た。それでもフジテレビ中に成功させようという熱が生まれた。面白いと思ったフジテレビのプロデューサーの熱意が局内に伝わったのだろう。それまでフジテレビが得意にしているジャンルの番組ではなかった。

冷ややかになる必要はない。たまには人の価値観に触れるのも良い。多様な価値観を持っている人はたくさんいる。たぶんそれを面白がることが大切なのだろう。

だが、往々にして判断する立場の人は自分の価値観に染めようとしてしまう。うまくいっているときはそれでも良いかもしれないが、一度歯車が狂い始めると、直すことはパワーを失う方向に作用する。それを強引に直すということは現場力を失うだけだ。

新しい価値観が生まれるのを待つのは時間がかかる。だが自分の価値観だけにとどまるのではなく、人が面白いと思っているものを見てみるということは大いに必要だ。これがなかなか難しい。人の良い点はなかなか発見できない。粗ばかり見えてしまうものだ。

だが、それができて、たぶん初めて勢いが生まれる。

 

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高橋正嘉

高橋正嘉(たかはし・まさよし) TBSビジョン専務取締役 1951年生まれ 明治大学文学部卒業  TBSテレビ「そこが知りたい」に立ち上げから終了まで15年間携わる。 BS-TBSで「唐招提寺」プロジェクト・プロデューサー。 芸術祭ノンフィクション部門優秀賞を受賞。現在、TBS「時事放談プロデューサー」