人間を消耗品として扱う「ブラック企業」


茂木健一郎[脳科学者]

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「人間を、手段ではなく、目的として扱え」と言ったのはカントである。

これはほんとうのことだが、時に難しい。そして、会社という組織では、時にとてもむずかしいことになっているようだ。残念なことだけれども。

なんのために会社があるのか。経済活動があるのか。人間を幸せにするためだろう。ならば、人間自体を目的とするべきだけれども、しばしば、人間が、手段として用いられる。効率を上げ、目標を達成するために。ここに誤解や悲劇が生じる。

そもそも、人間は「消耗品」ではない。人間の尊厳から考えても当たり前のことだが、ひとりの人間が子どもから大人になり、成熟するまでにどれくらいの時間と、手間がかかるか、ということを考えても、人間を道具や消耗品として扱うのは明らかにおかしい。

いわゆる「ブラック企業」は、人間を消耗品として扱う。すべてのブラック企業は、この世から消えるべきだろう。なぜならば、ブラック企業は、ひとりの人間を育むためにいろいろな人が大変な思いをした、その努力に寄生しているだけの存在だからだ。

【参考】<ブラック企業の条件?>大量募集と退職強要・使い捨て・パワハラ/セクハラ

「ブラック企業」の問題点は、その非人間性だけでなく、その外部不経済にもある。公害を垂れ流して自分たちだけが利益を上げている企業と変わらない。子どもの労働に依存して利益を上げている企業は、典型的なブラック企業だ。

どんな会社も、気をつけないとブラック企業になってしまう。

特に、業務が忙しかったり、市場が変動するときには、よほど気をつけないと、「ブラック性」が台頭する。そのような時に、他人に無理を押し付ける馬鹿野郎上司にならないためには、自分の人間性の「中心」を外さないことが大切だろう。

「中心」を外さないこと、というのは、河合隼雄さんが常々おっしゃっていたことだった。どんなに忙しくても、プレッシャーがかかっても、人間としての「中心」を外さないことが、自分を大切にして、他人に対してリスペクトを保つ道だろう。ブラック企業にはそれがない。だから反人間的存在なのだ。

  (本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

 

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茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)脳科学者。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。1962年10月20日、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程終了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を出て現在に至る。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。