吉本だらけの「M-1グランプリ」の漫才は昭和に回帰する?


高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

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2016年12月4日放送の『M-1グランプリ』(テレビ朝日)を見た。優勝は銀シャリ(吉本興業)であった。決勝進出の和牛(吉本興業)もスーパーマラドーナ(吉本興業)もマンザイはとてもうまく、その実力差は僅差であったと思われる。

しかしながら、気になることをいくつかあった。最後にステージにいた司会の今田耕司、審査員のオール巨人、中川家・礼二、博多大吉、松本人志、そして決勝進出の3者すべて吉本興業である。違う事務所は審査委員の上沼恵美子、司会の上戸彩のみ。

吉本の芸人が吉本の漫才師の中からチャンピオンを決めて1000万円をあげるという、何とも内輪の構図になってしまった。吉本興業主催のイベントだからしょうがないとも言えるが、実は、吉本興業側としてもこういう構図は望んでいなかったのではないか。

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他のプロダクションの漫才師にもがんばって欲しいし、東京弁でマンザイをやるコンビにも出て貰いたいのではないか。この『M-1グランプリ』という企画自体が漫才界全体の興隆を願って始めたものだと企画発案者の島田紳助氏からは聞き及んでいる。

適当な人はいないのだろうか。審査員全員が関西系・西日本系なのも気にかかる。関東では爆笑問題・太田光、浅草キッド・水道橋博士、ナイツ・塙宣之あたりが審査員候補か。

さて、マンザイ自体はどうだったか。

今回の決勝進出者は皆、腕を持っていた。型を持っていた。見ていて安心である。そう大きな笑いは取らないとしても腕と型で持たせるから客を飽きさせない。しかし、見方を変えるとこれは、マンザイが一周回って昭和に回帰していっているとも言える。

新人がやったどのネタも、オール阪神巨人のために、漫才の台本作家が書き下ろしたものと言っても通じるものであった。

還暦を超えた筆者としては、むしろ新しいネタが見たかった。なんだこれはこの無茶苦茶は! と言うネタが見たかった。その意味では、今回の銀シャリは上手さとまとまりの良さに与えられた賞であろう。

 

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