自分を必要以上に高く評価する「間違ったプライド」


茂木健一郎[脳科学者]

***

創造性の最たるものは自分が変わることだが、自分を変えるために邪魔になることはいくつかある。そのうちの一つは「間違ったプライド」で、自分のあり方を必要以上に高く評価することは、自分が変わるための妨げになる。

本当は今までのやり方を変えた方がいいのに、このままでいいのだと思いこんでしまう。注意されても、アドバイスされても、聞く耳を持たない。これは、あやまったプライドを持っている人の兆候である。

本当のプライドは、自分は変われる、いつでも今の自分を否定して、新しい自分へと行ける、というかたちのプライドでなければならない。そんなプライドの方が、今の自分のままでいいというプライドよりもよほど難しく、そして価値がある。

【参考】<話し合いはムダか?>対話を通した合意形成・相互理解はもはや「幻」

自分は変わることができるというプライドは、いくつかの要素に支えられなければならない。まずは高度に安定化したメタ認知。自分が変化しても、その変化自体を外から見て、楽しめるような、そんな認知プロセスがなければならない。

自分は変わることができるというプライドは、また、必要に応じて自分の中に新しい情報が入ってくるというチャンネルを開けたり、変化に対する警戒心をとるための脱抑制をしたり、さらには知らないことに対する好奇心に支えられていなければならない。

経済システムにおける一つの指標は「経済成長」だが、同様に、ひとりの人間においても、その人がどれくらい変化しているかという指標を考えることができる。子どもの時には変化は大きいが、次第に変化は乏しくなっていく。

自分は変わることができるというプライドを持つことは、心の若々しさを保つことでもある。今のままの自分でいい、何も変わらなくていいという間違ったプライドは、精神を老いさせる結果になる。

(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

 

【あわせて読みたい】

The following two tabs change content below.

茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)脳科学者。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。1962年10月20日、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程終了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を出て現在に至る。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。