MLB大谷選手を飛躍させた「身体意識」の秘訣


小池義孝[作家/日本ねこ背セラピスト・インストラクター協会会長]

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普通の人はもちろん、プロスポーツ選手であっても、ほとんどの人が効率の悪い身体の使い方をしています。そのせいでパフォーマンスが上がらない、ケガをしやすい、慢性的なコリや痛みに悩まされる、といった実害があります。

現在、メジャーでも注目を浴びる存在になった大谷翔平選手は、身長193センチの恵まれた体格だけでなく、極めて高い身体意識の持ち主でもあります。その飛躍を支える身体意識の秘訣を、この記事ではお伝えします。

<身体意識の間違いが、パフォーマンスを落とす>

肉体は外側からしか見えません。そのため、内側にある本当の構造とズレてしまい、外側の印象で間違ったイメージを持ってしまいます。その結果、間違ったイメージで身体を動かそうとして、運動効率上のロスや余計な負担がかかってしまいます。

つまりパフォーマンスが落ちて、ケガをしやすくなるのです。ですから、いくらトレーニングで筋肉をつけても、身体意識が間違っていれば、間違っている分だけ能力を引き出せないのです。

<一流のプロを更に超える、大谷翔平選手の身体意識>

日本人メジャーリーガーとして活躍している大谷翔平選手(ロサンゼルス・エンゼルス)の身体意識は、プロアスリートの中でも群を抜いています。あの恵まれた肉体に正しい身体意識が備わっているのですから、金棒を持った鬼状態です。

ホームランを打つフォームで、大谷選手と他の多くのプロ選手を比較してみます。(普通のヒットですと、ただタイミングよくボールに合わせるだけでも打ててしまいます。しかし、ホームランは力強く振ってインパクトしなければ打てません。ホームランで比較することで、身体を使う意識の違いも浮き彫りになります。)

肩から先の腕の力は、どんなに鍛えてもたかが知れています。背筋や腹筋といった体幹部の方が筋肉量も多く、はるかに強い力を発揮できます。ですから力強いスイングをするには、体幹部のパワーを上手く使えなければなりません。

他のプロ野球選手も、激しい競争を勝ち抜いて活躍しているわけですから、当然、体幹部のパワーを利用した素晴らしいスイングをしています。ただ大谷翔平選手のスイングは、更に先のレベルにあります。

多くの選手は、身体意識として、体幹部を大きな一塊のユニットとして認識しています。それに対して大谷翔平選手は、体幹部をより詳細に分けて認識しています。そのため、テイクバックからスイングにかけての背中が、他の選手よりも複雑に動いています。

今では動画配信サイトで、様々な選手のプレーを閲覧できます。特にホームランは華があるので、多くの動画が公開されています。是非、背中の動きに着目して見比べてみてください。特に注目すべきは、肩甲骨です。他の多くの選手が、肩甲骨と背中を一体にしているのに対して、大谷翔平選手は背中の上を肩甲骨が分離して滑るように動いています。

これは身体意識として、背中と肩甲骨とを別々に分けている証拠です。その分、体幹部のパワーがより高度に連動して腕へと、バットへと繋がり、強力なインパクトをボールに与えられています。

<身体意識はあなたにも使える>

実はこの運動原理は、特別なものではありません。誰でも真似することができるのです。体格や筋力は真似できなくても、身体の使い方なら、意識一つで近づけます。

本記事のイラストを見てください。これは筆者が上梓した「見るだけで体が変わる魔法のイラスト 健康になる!運動能力が上がる!」(自由国民社)の1ページです。

「腕の付け根はどこ?」と尋ねられたら、ほとんどの人が青い丸の肩関節と回答するでしょう。しかし、人体の正しい構造上では、赤い丸の肩甲骨が正解です。腕は肩関節からも動かせますが、肩甲骨からも動かせます。肩甲骨から動かせば、体幹部の強大なパワーを腕に伝えられます。

試しに、手の平で壁でも押してみてください。最初は肩関節を腕の付け根だと意識してやってみてください。次に、肩甲骨を腕の付け根だと意識してやってみてください。後者の方が、明らかに力強くなりますよね。驚くほどに、パワフルになったと思います。

ある程度のレベルになれば、腕の力を使うものであれば、どんなスポーツでも体幹部を使います。しかし腕の付け根を肩甲骨だと意識して、尚且つ背中の上を滑って動くものだと知って動かせば、より上のレベルでプレーができるのです。

筆者はテニスをやっていましたが、ただ肩甲骨を意識するだけで、高速サーブと高速ストロークショットを手に入れることができました。

しかしながら、大谷翔平選手が今で完璧かと言うと、そうとも言い切れません。身体意識という点からはまだ伸びしろがあるように思います。胸鎖関節という場所を意識すると、力強さはさらに増すと思われます。また手首への意識も、より詳細に詰めれば、バットコントールの幅が広がります。勿論、ピッチングにおいても同様です。

正確な身体意識での動きを脳に覚え込ませれば、別次元のパフォーマンスを発揮できるようになります。著者として、大谷選手はその可能性を証明してくれる存在として注目しています。

筆者の「見るだけで体が変わる魔法のイラスト 健康になる!運動能力が上がる!」では、首、背骨、腕、肘、手首、指、足、舌、目と全身の身体意識を正確に塗り替える方法がそれぞれたった1枚のイラストで理解することができます。一度試してみることをお勧めします。意識するだけで驚くほどの変化を実感できるはずです。

 

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小池義孝(こいけ・よしたか)1973年生まれ。作家、気功療法家。日本ねこ背セラピスト・インストラクター協会会長。著書は国内10冊、海外翻訳版3冊。代表作として『ねこ背は治る!』『はじめての気功』『知るだけで防げる「うつ」の本』などがある。自由国民社刊行「ねこ背は治る!」は、ビジュアル版、文庫版と合わせて60万部を超えるのヒットを生み出した。