「桜」を盾に売国日米FTAを断固阻止するべきだ -植草一秀

植草一秀[経済評論家]

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桜の陰に隠れているが、日本の根幹にかかわる重大事案がある。日米FTAだ。安倍首相がやらないと国会で何度も明言した日米FTAだ。すでに11月19日に衆議院を通過した。このまま進むと、参議院でも採決が行われて日米FTAが批准される。

安倍内閣は米国の命令で2020年1月1日からの発効を目指している。しかし、この臨時国会で批准されなければ、1月1日発効はできない。野党が総力を結集して批准を阻止するべき局面だ。

ところが、状況はまったく違う。11月13日に、自民党、立憲民主党、国民民主党の衆議院国会対策委員長が会談した。この会談で11月15日の委員会採決、19日の本会議採決を決めた。「桜を見る会」問題が一気に広がりを示した時期である。

「桜を見る会」問題で野党は、首相出席の予算委員会集中審議を求めた。野党はこれに応じなければ、すべての国会審議を拒否するとの立場を示すべきだった。安倍内閣が最重視しているのが日米FTA批准だから、この審議を止めるとの宣告は絶大な効果を発揮したはずだ。

桜疑惑を追及することはもちろん重要だ。首相の公選法違反疑惑事案であり、安倍首相辞任に直結する事案だからだ。しかし、その裏側で日本国民の未来を左右する重大事案審議が行われている。安倍自公は数を持っているから、審議に応じれば数の力で批准を強行する。野党が対抗するには、審議を止めるしかない。

しかし、正当な事由なく審議を止めることは許されない。その正当な事由が確保されたのだ。自公が衆参の予算委員会での集中審議を受け入れなければ、すべての国会審議に応じない。強い態度を示すべきだった。

与党は野党が審議拒否をしても委員会開会を強行するかも知れない。野党欠席のまま、批准案承認を強行するかも知れない。だが、野党欠席の理由が、桜疑惑解明のための集中審議要求であることを主権者が知るなら、批判は安倍自公に向かう。主権者多数が桜疑惑に強い関心を寄せている。批判は集中審議に応じない安倍首相に向かう。

ところが、現実はどうだったのか。11月13日の国対委員長会談で、野党の立憲民主党、国民民主党が、15日の委員会採決、19日の本会議採決を容認した。この瞬間に批准案の衆院通過が決まった。

11月15日に開催した政策連合(=オールジャパン平和と共生)主催の院内緊急集会でも出席者からこの問題が指摘された。立憲民主と国民民主は桜疑惑を追及しているが、その裏側で日米FTA審議が行われており、国益を売り渡す日米FTAを阻止するのが野党の責務である。桜疑惑を盾にFTA審議を止める絶好の状況に恵まれたわけだ。

ところが、立憲民主と国民民主は抵抗する姿勢を微塵も見せずに、FTA批准案の採決を容認した。こうなると、FTAに焦点が当たらぬように桜疑惑を騒ぎ立てて、FTA承認に立憲民主と国民民主が協力したとの見方さえ浮上してしまう。

安倍首相はTPPの合意内容に一切手を入れぬためにTPP承認を急ぐのだと主張して2016年末のTPP承認を強行した。米国が離脱した場合には米国をTPPに引き戻し、米国と2国間のFTA交渉はやらないと明言した。

ところが、米国がTPPから離脱すると、米国をTPPに引き戻す努力など一切示さずに、TPPの合意内容改定の先頭に立った。同時に、米国に要求されると何一つ反論も示さずに日米FTA交渉に応じ、日本の国益を全面放棄するかたちで日米FTAに合意してしまった。

この暴挙を追及せずに野党の存在意義などない。主権者は桜疑惑の安倍内閣を追及するとともに、売国日米FTA阻止にまったく真剣に取り組んでいない野党中軸政党に対する追及を行う必要がある。野党がこの状態では日本政治刷新など夢のまた夢になってしまう。

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