東京五輪中止決定権は主権者国民にある-植草一秀

植草一秀[経済評論家]

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五輪は誰のもの。五輪は政治権力の私有物でない。スポンサー企業の私有物でもない。アスリートの私有物でもない。五輪は国民のもの。なぜなら五輪開催費用を負担するのが主権者である国民だからだ。東京五輪は「コンパクトな五輪」として招致活動が行われた。1990年以降、日本経済は長期停滞を続けてきた。

しかし、これもウソ。ウソで塗り固められた「悪魔の五輪」。

2012年12月に第2次安倍内閣が発足して自称「アベノミクス」が展開されたが結果は無残なものになった。2013年1~3月期以降の日本の実質GDP成長率(季節調整済、前期比年率、%)の単純平均値は+0.4%。東日本大震災、フクシマ原発事故が発生して日本経済が暗闇に包まれた民主党政権時代でも実質GDP成長率単純平均値は+1.6%だった。

アベノミクス下の日本経済がいかに悲惨な状況であったのかを示す客観的データだ。人々の暮らしに直結する最重要の経済指標は一人当たり実質賃金。一人当たり実質賃金は2013年7月から2020年7月までの7年間で8%も減少した。日本は主要国で最悪の賃金減少国になった。多くの中間層が下流に押し流された。

国税庁の民間給与実態調査によると、1年を通じて働いた給与所得者の21%が年収200万円以下、55%が年収400万円以下である。格差は拡大し、市民は日本経済の長期停滞にあえいできた。安倍内閣、菅内閣が推進する労働市場の規制改変は、大資本の労働コスト削減要請に応えるもの。「働き方改革」ではなく「働かせ方改悪」が推進された。

長時間残業の合法化

定額残業させ放題プラン労働の拡張

低賃金外国人労働力の輸入拡大

正規・非正規格差の温存

解雇の自由化

などの措置が推進されてきた。働く市民にとって何よりも重要なことは、時間当たり賃金の増大と雇用の安定だ。しかし、最低賃金の引き上げはほとんど行われていない。最低賃金を全国一律で1500円に定めれば、年間2000時間労働なら年収300万円が保障される。現在の最低賃金は792円(/1時間)。2000時間働いても年収は158万4000円にしかならない。

さらに庶民の生活を圧迫しているのが消費税大増税。所得税は所得の少ない個人の課税額がゼロになるが消費税は違う。所得の少ない人は収入の全額を消費に充てざるを得ない。そこから根こそぎ10%のお金が巻き上げられる。10億の収入がある人が1年に1億円消費するとき、収入に対する税負担率は1%になる。庶民を苦しめ、富裕者に極めて優しいのが消費税の特徴だ。

1989年の消費税導入以降、消費税で400兆円のお金が巻き上げられた。その一方で法人税が300兆円、所得税が275兆円減免された。消費税収のすべてが富裕層と大企業の減税に回された事実を多くの国民が知らない。菅内閣の感染拡大推進策によってコロナ感染が爆発した。多くの庶民が、コロナに感染しても入院も宿泊療養施設での保護もされず、放置され、死に至らしめられている。

7月までにコロナが収束する可能性はゼロ。主権者である国民の8割以上が2021年の五輪開催に反対している。日本が国民主権の国であるなら、五輪についての結論は確定している。米国もバイデン政権が誕生してコロナ感染抑止を最優先課題に位置付けた。米国は五輪に参加しないと思われる。速やかに五輪開催中止の決定を行うべきだ。

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