<保健所「看取り」を誘導は本当か>コロナで「留め置き」される介護施設

山口道宏[ジャーナリスト/星槎大学教授/日本ペンクラブ会員]

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いま、この国に「施設内コロナ死」がある。

医療ひっ迫を理由に病院への搬送がままならず施設に「留め置き」というものだ。それは「療養」に名を借りた在宅放置と同義語だからたまらない。必要な医療にたどりつけない不幸は死を招いている。

2021年5月時点で全国累計9490人、うち486人が死亡。高齢者の入居する介護施設の新型コロナ感染者数だ。昨年同月比では感染者は474人、死者は79人だったから患者数は1年間で20倍になるが、非公表の自治体もあるから実際はより多く、入院が必要にもかかわらず施設にとどまった高齢者が多数いた(る)と伝える(共同通信調べ)。

我が国の医療崩壊は、未曽有の医療難民である「施設内コロナ死」という悲劇を身近にしている。緊急搬送困難事例は急増し、8月2~8日の一週間だけでも全国で2897件、うちコロナ疑いは1387件と発表している(消防庁)。

[参考]<それでもやる?>オリパラ狂奏曲の裏で「巣ごもり在宅死」が激増

ところで、保健所のパンク状態は一向に変わらない。かつて「行政改革」のあおりで統廃合され全国800あった保健所はおよそ半分に。つまりはコロナ前からほぼ機能不全にあったが、コロナで「司令塔」の役割を求められたから、いよいよパニック状態に。そして「受け入れ医療機関がない」ことで、ことあろうか、こんなやり取りが。

「あとはよろしく」に狼狽するのは、首都圏にある介護施設の施設長だ。

「90歳。だったら、おたくでみてよ」と言われたという。このときベテラン施設長の脳裏をよぎった言葉は「トリアージ」「異常事態」だ。人権、生存権、国民皆保険の国で、こんなことがあっていいのか!! と頭を抱えた。「看取りでいいでしょ」と、念を押されたと怒りを抑えきれない様子だ。

「2人目を出さないで」と、クラスタ―防止に懸命な施設側だ。そうでなくても人手不足の業界だから、コロナでさらなる負担増になっている。

「2週間休んだらシフトは回らない」(施設長)と、職員の家庭内感染にも気を配る毎日だが、施設は入居者にとって「生活の場」。だから自宅と同様にもともと感染症対策など日頃はない。そこでイザというとき医療を求めるも「留め置き」とは想定外の事態だ。

施設入居は、要介護になって、多くが安心安全を求めての終の棲み家(ついのすみか)だ。「これでは、待機という名の姥捨て山ですよ」と施設長が哭いている。

放置は虐待のひとつだ。そこに「看取り」の前倒しはないのか!? 入居者本人が、家族が、国を、行政を、医療機関を <訴える日> は近い。

 

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