<大人たちのベビー・ビジネス>赤ちゃんは「契約」の当事者ではない


山口道広[ジャーナリスト]

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生殖医療はベビー・ビジネスを生み、「赤ちゃんの売買」を生み出した。話題のタイの「代理母」問題は悪いのか? 生殖医療は悪魔の業なのか?

米国では精子提供、卵子提供、代理出産(借り腹、代理母)などはみな合法的な医療である。契約の国アメリカならではの仕儀か、全てはビジネスに直結している。そうした医療のエージェント業は巨大ビジネスとなり、今や精子、卵子はインターネットでの購入さえ可能になっている。しかし、そのような背景には多く貧困があることも常に考えるべきであろう。

考えるべきことは山積している。

「一夫一婦制」そのものはどうか? こどもが「出自を知る権利」はどうか? 親子・相続関係はどうか? 「障害」を持って生まれた時はどうするか? 技術だけが先行してしまい、考えの至らぬままの見切り発車が増える中で、その先は医療技術の後始末を福祉に委ねることとなるのだろうか。

「当事者間の自己決定」だから、その意思自体は尊重されるとしても、果たしてそれは普遍的なものなのか? 心変わりはないのか? 書面の契約のとり交わしだけで一切了解といえるのか? 疑問は尽きない。

なにしろ、生まれてくる赤ちゃんは「契約」の当事者ではないだけに問題は先送りされる。赤ちゃんもやがて赤ちゃんでなくなる。ひとのライフサイクルと人権が考えられていないのではないだろうか。

 

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山口道宏

山口道宏(やまぐち・みちひろ) ジャーナリスト、星槎大学教授、NPO法人シニアテック研究所理事長