<4月の番組改編期だからこそ問いたい>視聴率の悪い番組はたいてい「利権」が積み重なっている


高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事

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4月の番組改編期はテレビにとって、活気みなぎる時期である。新番組や新ドラマが始まって、新たな視聴率競争が始まる。

新番組については、相変わらず「ソメイヨシノを咲かそう」としている番組もあれば、一度も咲かせたことのない「ラフレシアを咲かそう」としている番組もある(あって欲しい)。心情的にはラフレシアを咲かそうとしている番組を応援したい。

ソメイヨシノを咲かそうとしている番組は「今までにないソメイヨシノができました」と謳うが、謳われれば謳われるほどしらけてしまうのはナゼだろう。

今までのソメイヨシノから何も変わっていないからだろう。生命や食品の遺伝子操作はやって欲しくないが、テレビ番組の場合はDNAの改変でも何でもやって新しくして欲しい。

リニューアルをして、新たに始まる番組もある。リニューアルの理由はそれまでやっていた番組の視聴率が悪かったからだ。視聴率がよいのに変えるバカは居ない(ところが昔はそういう馬鹿も居た。だからテレビは楽しかった)。

このリニューアルだが、視聴者にとって、番組が変わったなあと思う順番は上から、

  1. 出演者
  2. タイトル
  3. セット

の順である。「内容」という観点がこのトップ3に、入っていないことに注意して欲しい。

これは、内容のちょっとした変更では、視聴者にリニューアルしたと見なされないからである。筆者はこれまで100以上の番組を構成してきたと思うが、一度視聴率で苦戦し始めた番組が、再び再生したという例を一つしか経験していない。「朝ズバッ!」である。

何を改変したかというと、何も改変しなかった。再浮上の理由は東日本大震災が起こったからである。世の中全体の雰囲気が「朝ズバッ!」のように、ちゃんとニュースをやってくれる番組を観ようと言う空気に変わったのである。

筆者はタッチしていないが、関口宏司会の「サンデーモーニング」(TBS)もリニューアルしたことがある。若い女性キャスターが一生懸命自分で勉強して、理解して、関口や識者にニュースを報告するという形(つまり、現在やっている形)を変え、TBSの既存キャスター(つまり、ニュースのプロ)をズラリ揃える形にリニューアルした。

すると、悪くなっていた視聴率がさらにズルズルと下がっていった。スタッフが偉かったのはその後である。一度変えた形を元に戻した、すると視聴率はV時回復を遂げ、今ではTBSで最も視聴率の安定した番組である。

この2つの例に、視聴率回復の、何かパターンが潜んでいないかと考えるのだが、筆者はまだたどり着かない。共通点と言えば「一度は高い視聴率を取っていた」と言う事実ぐらいである。

ところで、もともと一度も高い視聴率を取ったことがない番組が、リニューアルで数字を取り始める例はかなりある。キーワードは「解体的出直し」である。

内容もダメで視聴率の悪い二重苦の番組には大抵「利権」と言う名の澱(おり)が、二重どころか五重らせんの残骸になって層のように積み重なっている。芸能プロダクションの利権、その芸能プロダクションの代理人のようになってしまったスタッフの利権、広告代理店の利権、報道・制作・スポーツ・事業それぞれの局の利権、下請けプロダクションの利権、コーナー担当のプロデューサーの利権、出演者の利権、編成の利権、この利権に切り込んで行く無謀なプロデューサーが居ないとリニューアルは成功しない。

改変期はまた、大型特番の季節である。視聴率の高いレギュラー番組を持っている局はそれを長時間化する。あるいは、普段の視聴率は高くなくても長時間化で浮上のきっかけをつかもうと編成される特番もある。

そのどちらもない時は、新企画の特番が編成される。将来のレギュラー化を目指すのだろうと思える意欲的な特番もある。1ヶ月前にやっと埋まりましたという匂いのする特番もある。

どちらにしろ特番は打ち上げ花火であるから長続きしない。特番を作ることで疲弊して、直後のレギュラー番組はあからさまな手抜きであったり観たくもない総集編であったりするのは、視聴者にとって迷惑なことである。

今のテレビに必要なものと言えば、利権や制作者のエゴから離れ、多様な視聴者に合わせた多様な番組を制作し提供するという、いわば「番組多様性」だ。

「生物多様性」という言葉は当たり前のように大切だと言われている。だが、この「生物多様性がナゼ大切かについて」は、科学的(物理学的、化学的、生物学的)根拠が、存在しないことを、小山のような本を読むことで筆者はやっと得心した。

それに対し、「番組多様性」には科学的根拠も、統計学的根拠も、マーケティング的根拠も、予算的根拠も必要ない。しかし、「多様な視聴者がいる」という揺るがしがたい事実はあるのだから、是非大切にして欲しいものだ。

半年に一度の番組改編期。筆者たち放送作家や下請けプロダクションのスタッフは、番組の編成に合わせた、いわば季節ごとの「期間限定労働者」である。この時期は仕事があるかどうかが決まる、正念場とも言える時期なのである。

そんな時期だからこそ、制作に携わるテレビマンたちには、利権から離れた「番組多様性」の重要性について、改めて考えて欲しいものだ。

 

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