「やっぱり、自民党しかない」という発想は「変わらない日本/変われない日本」の象徴[茂木健一郎]


茂木健一郎[脳科学者]

***

「政権交代」は民主主義における「呼吸」のようなもので、政権交代がない民主主義は、呼吸を止めてしまっている。その意味では、日本は、戦後長い間、政治的には呼吸を止めてしまっていたのだと思う。

投票による民主主義が機能している国では、定期的に政権交代が起こる。なぜ、国民の意見がそのように割れるのかは、興味深い問題であるが、異なる意見の人がほぼ半々存在することが、社会の変化のダイナミズムにつながるのであろう。

同じ政治家さんたちが、交代して、与党の立場と野党の立場を経験することで違った風景が見える。政治家としての資質が向上する。それが、与党あるいは野党という一つの立場ばかりにいると、だんだん政治的眼力が腐ってくる。

だから、ぼくは常に、政権交代の可能性が最大になるように投票したいと思っている。特に、日本のようによどみやすい国では。政権交代自体に価値があり、それ以上の実現価値は存在しないとも思っている。今回の参議院選は政権選択選挙ではないが、同じような考え方で投票する。

【参考】<参院選が公示>すべての立候補者にリポート提出を求めよう

先日、ある場所で話していて、外国経験も長い方がいらした。みんなで、国際情勢や文化の違い、その他のことを語り合っているうちに、その外国が長い方が、「でも、やっぱり、自民党しかないんですよね」と言われた。ぼくは、その言葉のニュアンスに驚くとともに、内心ひどく落胆した。

自民党にはすぐれた側面があり、優秀な人材もたくさんいる。一方、今報道されている自民党の憲法改正案は「トンデモ」だろう。要するに是々非々なのであって、「やっぱり、自民党しかない」という思考停止は、何ももたらさないと思う。しかし、そのような人が日本にはどうも多い。

安倍さんの政権運営の特徴は、日本の社会を変える構造改革や規制緩和の動きがにぶいことだろう。だから、真の経済成長もしない。これは一つの矛盾だ。「やっぱり、自民党しかない」という意見が、変わらない日本、変われない日本を象徴しているように感じた。単に選挙結果だけのことではない。

「やっぱり、自民党しかない」という意見を聞いて、ぼくは、「ああ、ここに、新卒一括採用や、記者クラブや、偏差値入試を支える、変わらない、変われない日本のメンタリティがあるんだ」と思った。

ぼくは、自民党というよりも、おそらくそんな日本に対してこそ違和感を持っている。

 (本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

 

【あわせて読みたい】

The following two tabs change content below.

茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)脳科学者。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。1962年10月20日、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程終了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を出て現在に至る。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。