<あなたはどっち?>選挙の勝敗から考える「与党体質」と「野党体質」[茂木健一郎]


茂木健一郎[脳科学者]

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開票速報を見ていて、「ああ、そういえば」と思い出したことがあった。20歳で選挙権を得てから今日まで、おそらく20余回の「国政選挙」があったと思うが、自分が投じた側が「勝った」ことよりも、「負けた」ことの方が多いように感じる。

毎回、自分の投じた側が「負ける」と信じて投票しているわけではないのだけれども、だいたい、開票速報を見ていると、「あ〜負けなんだ」と思うことの方が多かった気がする。だから、選挙で「負ける」ことには実は慣れている。

それで、ふと思ったのだけれども、世間の人には、逆に毎回自分が投票した側が「勝つ」よ、という人もいるはずで、むしろそのような人の方が多いのだろう。そのような人が、「与党体質」だとすると、ぼくはきっと、「野党体質」なのだろう。

【参考】<三宅洋平氏落選>実態なき支持層が産み出した「選挙フェス」という都市伝説

「与党体質」の方が精神衛生上良い、という側面もあるだろう。何しろ、自分の考えたように、主張したように世の中が動いているのだから痛快である。自分が多数派に属しているという安心感もある。「野党体質」は、異議申し立て、少数派の方だから、なんだかいつも肩身が狭い。

「新卒一括採用」に賛成、「偏差値入試」に賛成で、新卒一括採用がいかに効率よく、すばらしいか、偏差値入試がいかに子どもたちの脳を育むか、という話ばかりしていたら、ぼくはもっとラクだったかなあ、と思う。まあ、そうも行かないので、こんな人生を送っている。

あと、社会の多数がある方向に行こうとしている時に、その時流に合った発言をしたがるのか、それとも敢えて異なる方向の発言をしたいのかという差もあると思う。私は、どちらかと言えば逆のことを言いたくなることが多いようだ。

「与党体質」か「野党体質」か、という視点でさまざまな組織、人を見ると、いろいろな人間模様がそこに表れて、面白い。

多様性の尊重、ということがしばしば言われるが、多数決の民主主義は実は野党体質よりも与党体質に優しいということは、与党体質の人は案外気づきにくいのだと思う。

 (本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

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茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)脳科学者。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。1962年10月20日、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程終了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を出て現在に至る。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。