<センター試験>多様な世界の中で、一つの文脈に挑戦すること


茂木健一郎[脳科学者]

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私は、過去に、大学のことや、中学、高校の受験のことについていろいろ書いてきたけれども、現実に、受験でがんばっている人たちに対しては、もちろん、応援する気持ち以外はない。

ただ、次のようなことは、常に心の中にある。

「大学に行かなくても勉強する方法はある」「受験の偏差値は絶対ではない」という言葉は、特に、そのような文脈に入れない人たち、また、そのような文脈では自分を肯定することができない、できなかった人たちへのエールとして書いてきたつもりである。例外になっても、がんばることはできるのだ。

普通に偏差値受験の中でがんばって、大学に行く人たちは、それはそれでいい。がんばってくれればいい。ただ、その人たちも、自分が適応した文脈が、この世界のすべてではない、ということは、ぜひ心のどこかにとどめておいてほしい。

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よりましな世界では、ペーパーテストの点数などではなく、それぞれの人が選んだ学びの方法、達成のあり方を手間をかけて評価して、大学での学びへのアクセスができるようになるべきだと思うが、たとえそうなっても、そのシステムが完璧であるとまでは言えない。

日本より多様な入試をしているアメリカでも、大学なんてもう必要ない、と言っている人もいるし、大学と関係なく学んでいる人たち、研究している人たちもいる。つまり、今の世界を特徴づけるのは、さまざまなる価値観である。

さまざまなる価値観の世界の中でも、一つひとつの文脈はあるのであって、先日実施されたセンター試験もそのような文脈の一つだろう。その文脈にチャレンジすることを決めた人は、ぜひ、うまくやりとげて、自分の行きたい道に進んでほしい。

もはやどんな文脈もこの世で唯一の文脈ではないけれども、ある特定の文脈に挑戦することを決めた人に対しては、エールを送る。これから入学試験を受ける方々、がんばってください。それ以外の文脈でがんばっている方々も、がんばってください。みなさんに幸ありますように。

(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

 

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茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)脳科学者。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。1962年10月20日、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程終了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を出て現在に至る。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。