崩壊カウントダウンが始まった安倍政権がさらなる暴走へ-植草一秀


植草一秀[経済評論家]

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森友・加計・山口の「アベ友三兄弟」疑惑に対する説明責任を放棄した安倍自民党が7月2日の東京都議選で大惨敗したのは当然のことである。共謀罪の審議を打ち切り、共謀罪を強行制定して、7月11日には早くも共謀罪が施行される。

安倍政権の横暴は猖獗(しょうけつ)を極めている。安倍政権は共謀罪創設案に関する参院委員会審議を途中で打ち切り、本会議での採決を強行し、国会を閉幕した。森友・加計・山口三兄弟疑惑に対する追及が国会で繰り広げられるのを防ぐために「臭いものに蓋」をしてしまったわけだ。

しかし、主権者の安倍政権批判は高まるばかりで、これが7月1日の秋葉原街頭での主権者による「安倍やめろ」コールにつながり、その情勢がそのまま都議選結果として出現した。大惨敗の安倍自民党は加計問題に関する閉会中審査に応じることになったが、追及する側の民進党の腰が引けているため、安倍首相の出席しない閉会中審査が行われることになった。

7月10日には衆参両院で、前川喜平前文部科学事務次官を参考人として招致して閉会中審査が行われるが、この質疑を受けて、衆参両院の予算委員会での集中審議、ならびに、臨時国会の召集が求められる。

野党は臨時国会の召集を求めており、安倍政権は日本国憲法第五十三条の規定「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」に基づいて、速やかに臨時国会を召集しなければならない。

野党は「アベ友三兄弟」疑惑の真相を国民の前に明らかにする責務を負っている。安倍政権の支持率が急落し、東京都議選では「安倍一強」が完全なフェイクであったことが明らかになった。

衆院任期は2018年12月までだが、現状では、年内解散総選挙を実施できる状況にない。安倍首相は8月初旬にも内閣改造を行い、支持率回復を目指すが、下り坂に移行した政権の流れを変えることは容易でない。安倍政権崩壊はカウントダウンに移行したと言ってよいだろう。

その安倍政権が、さらなる暴走を繰り広げている。7月8日、ドイツのハンブルグでG20会合が閉幕したが、この会合に向けて安倍政権が日欧EPA大枠合意を強引に成立させた。支持率急落で政権崩壊の危機に直面する安倍首相が、見かけだけの成果を求めた結果である。

当然のことながら、日本が原理原則を捻じ曲げて、一方的に譲歩した結果の大枠合意である。すでに報じられているように、焦点の「チーズ」で、日本は原理原則を捻じ曲げる完全譲歩を示した。ぎりぎりの交渉を妥結させたのではなく、日本側がべた降りして、大枠合意を成立させたのである。

ここに見られるのは、完全なる「自分ファースト」の姿勢であり、国民の利益など微塵も考慮されていないという現実である。

EUは主力輸出産品の中でも特に競争力の強いソフトチーズでの大幅市場開放を要求した。日本が全面譲歩したTPPでさえ、ニュージーランドなどの関税撤廃要求を拒否したるソフトチーズ分野で、3万1000トンの輸入枠を設定し、15年で関税撤廃することが今回EPAで取り決められた。

3万1000トンの輸入枠は国産ナチュラルチーズの市場規模を上回るもので、事実上の関税撤廃措置である。牛肉においても38.5%の関税率を16年目に9%にまで引き下げることが取り決められた。

これらの安倍政権の行動は2012年衆院総選挙での公約をかけ離れている。「TPP断固反対!」を掲げ、コメ、麦、砂糖、肉、乳製品の五品目を守るとした国会決議にも違反する行動である。

TPP交渉自体が完全な売国交渉であったが、安倍政権はこの一線さえ超える対応を示している。このことが、日米間の新しい貿易協定論議に重大な影響を与えることは間違いない。

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植草一秀(うえくさ・かずひで) 1960年、東京生まれ。経済評論家(日本経済論、金融論、経済政策論)。東京大学卒業後、野村総合研究所、大蔵省財政金融研究所研究官、京都大学経済研究所助教授、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院公共経営研究科教授、名古屋商科大学客員教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役社長。