森友事案=安倍事案であるから首相辞任は不可避 -植草一秀


植草一秀[経済評論家]

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佐川宣寿国税庁長官の辞任は安倍政権崩壊の幕開けを告げる出来事である。安倍氏の広報紙に堕していると評判の産経新聞は、早速「麻生太郎氏、辞任せず」や「事件より政局の印象」などの見出しを打ち出して、懸命の情報誘導を試みているが、火砕流の勢いを完全に見誤っている。

日付が明記され、決裁印が押印されている公文書が事後的に改ざんされていたなら、重大な刑法犯罪になる。その刑法犯罪を認めざるを得ないところに財務省が追い込まれている。

しかも、重大なことは複数の死者が発生していることだ。安易に「自殺」と処理することもできない。小学校建設を請け負った建設会社の下請け企業社長も死亡している。この件も「自殺」として処理された。地中の埋設物に関する重要事実を把握していた人物であると考えられている。

公文書改ざんは、「本件特殊性」=「特例処理」、「本省承認」の記述を消滅するために、佐川宣寿元理財局長が指示して実行させたものであるとの見方が有力になっている。また、「価格提示」について森友学園から要請があったこと、近畿財務局が事前に価格を提示したことも隠蔽するために、該当表現が削除されたと見られている。

昨年2月に当該事案が国会で取り上げられた。その際の答弁内容に合わせて決裁文書の改ざんが実行されたと見られている。しかし、公文書が改ざんされることが許されるはずがない。その改ざんが本省局長の命令で行われたとするなら、極めて深刻である。

麻生太郎氏が責任を問われることは当然のことである。「麻生太郎氏、辞任せず」などの言葉を見出しに取ることの不見識さが際立つ。自殺したとされる近畿財務局上席国有財産管理官は上からの命令で公文書の改ざんを実行させられたのだと見られている。しかしながら、その行為が刑法に抵触する重大な犯罪であった。

そもそも、大阪地検特捜部の対応が遅すぎるのである。時価10億円の国有地が実質200万円で払い下げられた事実が判明した時点で、「背任」の容疑は濃厚になる。「背任」での刑事告発が行われて大阪地検特捜部が受理している。大阪地検特捜部は、速やかに強制捜査を実施するべきであった。

証拠隠滅の恐れが高いことは容易に推察される。財務省および近畿財務局への家宅捜索を実施して、早期に関係書類を差し押さえるべきであった。ところが、大阪地検特捜部は、事実を暴露してきた籠池泰典氏夫妻を逮捕、勾留、起訴した。そして、その籠池氏夫妻を不当に7ヵ月以上も長期勾留し続けている。

人権侵害は極めて深刻なレベルに達している。その一方で、財務省本省および近畿財務局への家宅捜索を実施していないのだ。森友事案の本質は「安倍事案」である。安倍昭恵氏の関与は決定的である。安倍昭恵氏が新設小学校の名誉校長に就任し、これをきっかけに籠池氏夫妻が安倍昭恵氏に国有地問題に関する相談を重ねた。

これを受けて安倍昭恵氏が公務員秘書の谷査恵子氏に指示して財務省と折衝させた。その結果として、財務省、近畿財務局が「特殊な」「特例の対応」を示した。公文書を改ざんするという工作と安倍首相の国会での答弁が連動している可能性がある。

安倍首相は昨年2月17日の衆議院予算委員会で次のように発言した。

「私や妻がこの認可あるいは国有地払い下げに、もちろん事務所も含めて、一切かかわっていないということは明確にさせていただきたいと思います。もしかかわっていたのであれば、これはもう私は総理大臣をやめるということでありますから、それははっきりと申し上げたい、このように思います。」

「いずれにいたしましても、繰り返して申し上げますが、私も妻も一切、この認可にもあるいは国有地の払い下げにも関係ないわけでありまして、(中略)繰り返しになりますが、私や妻が関係していたということになれば、まさに私は、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員もやめるということははっきりと申し上げておきたい。」

この発言自体が、財務省の公文書改ざんと連動している疑いがあるのだ。「本件特殊性」や「特例処理」などの文言を削除したことによって、当該国有地払い下げの「特殊性」の痕跡を消した。これを受けて安倍首相が強気の発言を示したと考えられるのである。

しかし、財務省は公文書改ざんの事実を認めざるを得ないところに追い詰められたと見られる。問題の本質が「安倍案件」であるだけに、今後、事態は麻生財務相の責任追及を経て、確実に安倍首相本人に向かうことになるだろう。

安倍首相辞任が完全に秒読み段階に移行したと言える。

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植草一秀(うえくさ・かずひで) 1960年、東京生まれ。経済評論家(日本経済論、金融論、経済政策論)。東京大学卒業後、野村総合研究所、大蔵省財政金融研究所研究官、京都大学経済研究所助教授、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院公共経営研究科教授、名古屋商科大学客員教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役社長。