戒厳令と外出促進令の同時発出 -植草一秀

植草一秀[経済評論家]

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安倍内閣の迷走が加速している。

10万円給付金、検察庁法改悪案、GoToトラブル事業など、文字通り末期的状況だ。7月22日から強行実施するGoToトラブル事業。正式のスタートを7月27日としたが、これ以前の予約についても旅行後の申請で補助を受けられるとした。各種旅行サイトでキャンペーンは始動した。この告知を受けて予約を入れた人が多数存在する。

ところが、そののちに安倍内閣は東京除外を決めた。航空券と宿泊をセットにしたパック旅行商品の場合、出発日の20日前から2割のキャンセル料が発生する。1週間前になればキャンセル料は3割になる。補助が中止になれば、当然、旅行をキャンセルすることになる人が圧倒的多数だ。ところが、この場合に、高額のキャンセル料が発生する。安倍内閣はこのキャンセル料を負担しない方針を示した。

しかし、明らかに公序良俗に反する対応である。損害を蒙った市民が国に対して損害賠償請求訴訟を提起すれば、国が敗訴することになるだろう。このことを本ブログで指摘した。

結局、GoToキャンペーン実施前日になって、キャンセル料を国が負担する方針が示された。このキャンセル料もGoToトラブル事業の事業費から支払われることになる。国民の貴重な税財源をドブに捨てる対応だ。このことだけでも、国交相は罷免に値する。国内の感染者数が急増している。

5月25日に安倍首相は、「日本ならではのやり方で、わずか1か月半で、今回の流行をほぼ収束させることができました。正に、日本モデルの力を示したと思います。」と述べたが、この発言が完全な事実誤認であったことが明らかになっている。5月末にかけて感染者数が減ったのは日本の主権者が行動抑制を徹底した結果だった。

しかし、5月の連休明け以降、安倍内閣と東京都知事は行動再拡大を促進してきた。その結果として、主権者の行動は拡大し、新規感染者数が再拡大している。

小池都知事のコロナ対応は自分の都合に連動して右に左に揺れ動いている。3月24日の五輪延期決定までは五輪ファースト、3月24日以降は感染抑止アピール、6月18日の都知事選告示後は行動拡大促進、都知事選終了後は再び感染拡大警戒に転じている。

小池都知事と安倍内閣の菅義偉官房長官との確執が取り沙汰されており、GoToトラブル事業に合わせて、小池都知事が感染拡大を再アピールしている側面も浮かび上がる。小池都知事は7月23日からの4連休に際して、外出自粛要請をアナウンスした。他方、安倍内閣は7月22日からGoToトラブル事業を始動させて市民の外出を促進する。戒厳令と外出促進令が同時に発出される状況だ。

そもそもGoTo事業は「感染が収束した時点で実施する」こととされたもの。新規感染者数が急拡大している現時点で強行することがおかしい。安倍内閣が新型コロナウイルス感染症に対する警戒は必要なくなったと判断して、GoToトラブル事業を実施することにしたのなら、そのことを国民に説明する責任がある。

コロナ感染抑止を掲げながら、GoToトラブル事業を強行するのは根本的な矛盾だ。コロナに対する行政のスタンスが支離滅裂になっており、市民は戸惑いを隠せない。コロナについてはさまざまな見解がある。百家争鳴と言ってもよい状況なのだが、その混乱に拍車をかけているのが安倍内閣の対応だ。行政運営は「安全策」をベースに実行されるべきもの。コロナ問題への対応は原発への対応を念頭に置いて策定されるべきだ。

リスクは排除されていない。安倍内閣の感染拡大放置、感染拡大推進政策には重大なリスクがあると言わざるを得ない。

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