<東京駅100周年記念Suica騒動の醜さ>2000円のSuicaが瞬時に4万8000円で転売されている現実

社会・メディア

リチャード・ディック・ホークスビーク[古書店経営]

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先日(2014年12月20日)、NHKニュースが報じたのは、妙なニュースだった。

「開業100周年を迎えた東京駅では20日、JR東日本が限定販売する記念の『Suica(スイカ)』を買い求めようと、9000人以上が列を作った。だが、予想以上の人出にJRは安全を確保できないとして販売を途中でやめ、駅は混乱した。JRは後日販売を再開するとしている。
記念Suicaにはドーム屋根の丸の内駅舎が描かれ、限定1万5000枚(1人3枚まで)が先着順で販売される予定だった。特設ブースが設置される丸の内南口には19日早朝から人が並び始め、20日朝には大行列になった。
JRは予定を約45分繰り上げて午前7時過ぎに販売を始めたが、行列への割り込みなどがあって混乱。警視庁丸の内署員も出動する騒ぎとなり、JRは同9時40分、安全のために販売を途中で打ち切り、アナウンスした。しかし、これに納得できない購入希望者が駅員に詰め寄るなど、混乱は20日午後まで続いた。」

このニュースを聞いて、すぐに筆者はピンときた。これは「オークション転売目当ての客」が並んだのではないかと。前日にヤフーオークションでもう生産しなくなったBOSEラジオのACコードを競り落としたばかりだったから、そのように思いついたのかもしれない。しかし、そればかりではない。
日本人はこうした行列などにおいては、特に、東京では非常に公徳心の高い人々である。それが血の気の多い事件に発展した。それは「お金がらみ」だからに違いない。「お金がらみ」といえばオークションだ、そう連想がつながったのである。NHKはJRの対応のまずさには言及したが、儲け目当ての行列という調べはついていなかった。
案の定、ヤフオクを見てみると、2000円のSuicaにさっそく4万8000円の値段が付いている。他のニュースを見ると「整理券を持ってこい」などという罵声が次々に上がり、その後、駅員が「きょうの販売は中止します」と拡声機で伝えると、「客をなめるな」などと怒気を含んだ、大きな声が上がったということだ。なんと醜い光景か。
日本人は、いつから、「損か得か」を行動基準の第一番目にしてしまったのか。
純粋日本人である母は、いつも「世間様に顔向け出来ない恥ずかしいことをするのはやめなさい」と、筆者を叱ったが、このことからもわかるように日本人の行動基準の第一番目は昔から「世間様」だった。筆者は「世間様はどこに居るのか? 神様より偉いのか?」等と言って母を困らせていたが、今はわかる。
バス停や駅で自分の隣に並んでいる人である。
その一人ひとりが「世間様」。「世間様」を気にするあまり、身動きがとれなくなることがあることを筆者は青年になって知ったが、それでも「世間様」は「お金様」より偉い。
「損か得か」が判断基準で「お金様」を一番偉いと考えるときは、人間だから誰にでもある。筆者が顔も知らないアメリカ人の父にもあったと思う。
でも、それを一番の判断基準にしてはいけないという思いを何処か頭の片隅に持ってこその人間だ。その醜さを人前で出してはいけない。その理由は「世間様が見ているから」。人が見ているからという理由は、本当にその行為がいけない理由ではない。でも、結局、「世間様」は正しいことを言っているのだ。
行き着く先が、「強欲」ではいけない。今、世界は資本主義の国ばかり。資本主義が最も陥ってはいけないのが「強欲」だ。そんなことまで考えてしまう筆者の論理が飛躍しすぎなのだろうか。
 
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