<困るのはどこのテレビ局?>大橋未歩アナ『チャージ730!』で朝番組に参戦するテレビ東京の戦略


高橋秀樹[放送作家]

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「まずいぞ」と思った。

それを確認したのはスポーツニッポン芸能面の小さな記事からであった。 テレビ東京の大橋未歩アナがMCを務める番組『チャージ730!』(月~金 朝7:30~8:15)が始まるという。これは同局の報道局が手がける初の本格的な朝の情報番組である。

大橋アナは、

「13年のサラリーマン生活と8年の主婦生活をいかして、皆様の忙しい朝にコンパクトに情報をチャージできる番組にしていけたらと思っています」

と抱負を語っている。 「まずい」と思った・・・というのは、フジテレビやTBSの立場に立っての感想である。

筆者は放送作家でありフリーの身であるが、テレビ東京とは縁が薄く、もっぱらフジテレビやTBSの番組をやって来た。だから、つい付き合いの長い(そして深い)両局の立場に立ってものを考えてしまう。

テレビ東京はこれまでこの時間帯では「勝負を避ける」という戦法を取ってきた。他局とは全く視聴者層がかぶらない子供番組を放送してきたのだ。

筆者は、この枠でクルマが主人公の人形劇をやったことがあるが、こういった子供番組でも一定の視聴者層はいるものである。 台所仕事に忙しいお母さんがテレビに育児をさせたい時間帯でもあるのだ。そのテレビ東京が得意の戦法を捨て、戦線に参加してきたのである。

現在、この時間帯はNHKが、「おはよう日本」を大人知識層を対象に「大人は知っておくべきだとNHKが判断したニュース中心」の構成をしている。

日本テレビはかつて無敵の勢いを誇った「ズームイン朝」から「ZIP」に衣替えしたのが2011年。ターゲットは若め設定でニュースもあるが基本的には「情報エンターテインメント」である。

テレビ朝日は「伝統の新聞読み」の「グッド!モーニング」。

TBSはリニューアルするらしいが夏目三久アナが「生活情報もニュースもお届けする」番組であることは変わらないだろう。

フジテレビは「めざましテレビ」。ここは伝統的に女子高生シフトである。

視聴率はTBSが取れていない傾向にあるだけで、後はほぼ同じでしのぎを削っているというのが、筆者の見立てである。 なぜ、TBSだけ落ち込んでいるのか? その理由は簡単。不得意分野で勝負し、しかも他局とかぶる視聴者帯を狙っているからである。

横並びを見ると、「興味があるニュースだけを、長く見せてくれる恣意的構成の番組」がないのだが、TBSはそこには踏み込まない。 で、「まずい」のはテレビ東京がそこに踏み込んできた時だ。『チャージ730!』は、どんな構成になるのだろう。

記者発表で担当プロデューサーは、

「平日の朝、各局で情報番組を放送していますが、7時半を過ぎるとエンタメ、バラエティー色が強くなり、NHKの7時のニュースを見逃すと意外とニュースが確認できない」

と言っている。これは素晴らしい。 テレビ東京は自局の報道が弱いが、日本経済新聞の情報をフル活用すればよいのである。

「硬いニュースも柔らかいエンタメも必要な情報をコンパクトに、目で見ても、耳だけで聞いてもしっかり頭に残るように工夫したい」

とも言っているが、これはどこの局でもそのようにやっているのだから、当たり前にやればよい。

余計なお世話かも知れないが「硬いニュースも柔らかいエンタメも必要な情報を」という発言には矛盾があるからよく考えたほうがよい。

「時間になったらテレビ東京にチャンネルをあわせる視聴習慣を促していきたい」

とも言っているが、これが実は落とし穴だ。後発のゲリラ番組は定時定点なんて言ってられないよ、と考えた方がいい。

テレビ東京がニュースをやってアオリを食らうのはNHKではなく民放である。特に、テレビ朝日と、TBSの番組には大きな打撃があるだろう。但し、それは、テレビ東京が「エンタメ芸能で数字とってやれ!」などという助平根性を起こさない時に限る。

ところで、朝の番組はもちろん一日のスタート。ここが調子が良いと、その局には何がしかのチカラが宿るものである。

 

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