北朝鮮情勢緊迫化は韓国大統領選対策の演出 -植草一秀

政治経済

植草一秀[経済評論家]

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安倍昭恵氏が事実を語ればすべてが終わる。

安倍晋三氏は2月17日の衆院予算委員会質疑で

「私や妻がこの認可あるいは国有地払い下げに、もちろん事務所も含めて、一切かかわっていないということは明確にさせていただきたいと思います。もしかかわっていたのであれば、これはもう私は総理大臣をやめるということでありますから、それははっきりと申し上げたい、このように思います。」(議事録251)

「繰り返しになりますが、私や妻が関係していたということになれば、まさに私は、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員もやめるということははっきりと申し上げておきたい。」(議事255)

と答弁している。したがって、安倍昭恵氏が、森友学園の小学校用地取得問題に「関与した」ことを証言すれば、安倍首相は首相と議員を辞任しなければならなくなる。メディアは森友事案の報道を減らし、この危機をもみ消す対応を続けているが、最終的には安倍昭恵氏が事実を語り、安倍首相は辞任に追い込まれることになるだろう。

日本政治刷新の時機が近付いている。

1993年、2009年に政権刷新が実現したが、いずれも短期間で既得権勢力の逆襲で崩壊に追い込まれた。三度目の正直で、次の政権刷新によって、本格政権を樹立し、日本政治を本当の意味で刷新しなければならない。

日本では敗戦後のGHQによる日本民主化政策の成果として日本国憲法が制定され、1946年には革新政権が樹立された。

しかし、1947年に米国の外交政策が大転換して、対日占領政策は、

  • 民主化から非民主化へ
  • 反共化=思想弾圧

に大転換した。革新政権は破壊され、対米隷属の父と言える吉田茂による統治が樹立された。その後、石橋湛山や鳩山一郎など対米隷属から一線を画す首相が誕生したが、米国の工作により政権は破壊され、対米隷属の日本政治が植え付けられてきた。

2009年の鳩山由紀夫政権の誕生は、日本の主権者が対米隷属からの脱却を選択した意義深い政治刷新だったが、日本支配を堅持しようとする米国は総力を結集してこの政権を攻撃した。

その後、米国傀儡の菅直人政権、野田佳彦政権を経て、現在の安倍晋三政権が樹立されたのである。

日本の政治刷新とは、米国・官僚・大資本が支配する日本政治を主権者国民が支配する日本政治に改新することである。安倍一強などと言われているが、状況は一瞬に似て激変する。

政治刷新が目に見えてこないのは、主権者国民の前に明確な選択肢が明示されていないからである。主権者国民の前に、新しい政権の選択肢が示されれば、日本の主権者は必ず正しい選択をするはずである。

お隣韓国では、5月9日に大統領選が実施される。共に民主党の文在寅(ムン・ジェイン)氏と国民の党の安哲秀(アン・チョルス)氏とによる事実上の一騎打ちの選挙になっている。

韓国では保守派による政権と革新派による政権が10年単位で入れ替わる変遷を示してきた。

盧泰愚(ノ・テウ)氏、金泳三(キム・ヨンサン)氏の保守政権10年ののち、金大中(キム・デジュン)氏、盧武鉉(ノ・ムヒョン)氏の革新10年の政権を経て、李明博(イ・ミョンバク)氏と朴槿惠(パク・クネ)氏の保守9年半が続いてきた。日本よりははるかに政治の変動性が大きいのが韓国である。

米国は韓国に反米政権が誕生することを強く警戒している。与党セヌリ党の朴槿惠(パク・クネ)大統領が弾劾、罷免されたことから、野党「共に民主党」の文在寅氏の次期大統領就任が有力視されたが、選挙戦終盤にかけて「国民の党」安哲秀氏が支持を急伸させた。

安哲秀氏は中道候補だが、米軍によるミサイル防衛システムであるTHAAD配備に賛同するなど、親米傾向を強く示している。

北朝鮮情勢の緊迫化が喧伝されているが、韓国大統領選で反米政権の誕生を阻止するために、米国が各種の工作活動を展開していることが影響しているとの見方を否定できない。

その安哲秀候補だが、テレビ討論で保守勢力との結託についての疑惑を突かれ、急速に支持を低下させている。このまま進めば文在寅氏が新大統領に選出される可能性が高いが、このことは、5月9日に向けて、さらに朝鮮情勢の緊迫化が「演出される」重要な原因になり得る点を見落とせない。

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