<電力会社徹底比較>一人暮らしデビューの新社会人に最適な格安電力会社はどこ?
岡部遼太郎(ライター)
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日本の春は卒業・進学・就職のシーズン。いよいよ親元を離れ、一人暮らしを始める人も多いはずだ。一人暮らしデビューを目の前にした若者は、周囲の先輩たちからお金が嵩むと聞かされて、さらに昨今のインフレによるさまざまなモノ・コトの価格高騰により、何かと不安に感じている人は多いのではないだろうか?
一人暮らしの節約にもっとも重要なのが、当然ながら無駄な出費を控える事ではあるが、そうはいっても、せっかく一人暮らしをするのだから、遊びに出かけたいし趣味にお金を使いたいと思っているはずだ。
そこでこれから一人暮らしを始める人や生活を見直したいという人にお伝えしたいのが、少しでも豊かな一人暮らしを実現する一番簡単な節約は「固定費」の削減ということである。固定費とは言うまでもなく、家賃や光熱費、スマホ代など、毎月必ず発生する固定的な出費のことだ。
固定費は日々の倹約ではどうにかなるものではなく、長期的に続く出費なので、スタート段階でこれを抑えることができれば、かなり生活は楽になるとも言われる。携帯電話料金の契約を格安SIM、格安スマホにすることで、通信費という固定費を削減することは、多くの人がやっていることの一つだろう。
とはいえ、固定費の削減方法といえば、格安SIM以外だと、家賃の安い部屋に住む、ということぐらいしか浮かばない人が大半だろう。このように、固定費は削減できれば大きな節約につながるが、一方で、なかなかその削減可能な部分を見つけづらいことが現実だ。
そんな中で一人暮らしデビューの若者に意外と知られていないのが「公共料金」を見直すという節約方法だ。電気・ガスといったライフラインの公共料金は税金のようなイメージだが、国や自治体によって金額が自動的に決定されているわけではない。電気は2016年から、都市ガスは2017年から価格の自由化が始まっている。
そのため、電気料金、ガス料金といっても、自分がどこの会社と契約するかによって、価格もサービスも大きくことなる。つまり、公共料金という調整しにくいと感じてしまう固定費も、契約する会社の選び方によって削減は可能なのである。多くの人が「知らないだけ」だ。これは非常にもったいない。
そこで本稿では、固定費の中でも、更に原油価格の高騰などと連動する形で値上がりが話題になり、家庭の中で特に大きな負担となっていると言われる電気料金について、「どこが最適な契約先か」を具体的なサービス、具体的な料金体系をリサーチしてみたい。
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電気会社は複数あり、一概にキメ打ちすることは難しい。最終的には自分の生活スタイルによってその優劣は大きく異なるし、家庭の構成や使い方によって、良い、悪いが逆転することは珍しくない。そこで本稿では、いわゆる「人気プランを持っている主要電力会社4社」の比較を通して、その違いについて考えてみたいと思う。
<主要電力会社の料金比較>
今回、本稿で比較する主要4社は、東京電力・東京ガス・CDエナジー・auでんきの4つだ。数多ある電力会社の中でこの4社を選んだのは、インフラの必須条件である安心感があると筆者が考えたからだ。
まず、電気料金といえば、地域電力を思い浮かべる人が多いはず。「地域名+電力」の名前は最も私たちにとってポピュラーで身近な電力会社だろう。東京近郊に住んでいる人であれば、何も考えなければ、「電気は東京電力でしょ?」と思う人は多いかもしれない。もちろん、東京電力は関東地方に電力を供給している会社なので、関西であれば「関西電力」などである。
東京ガスも料金の自由化以降、急速に知名度を伸ばすだけでなく、ガス料金の組み合わせによる割引などで、東京電力に次ぐシェアを持つに至っている。
CDエナジーは、中部電力と大阪ガスが50%ずつの出資で2018年に生まれた新電力会社。新電力会社ではあるが、中部電力と大阪ガスという信頼感の高いインフラ企業が出資しているだけあって、非常に安定的なサービス提供を実現していると思われ、5年で契約者数が約6倍と新電力会社としては急成長している。
auでんきはその名の通り携帯電話でもおなじみのKDDI関連の電気企業である。auと組み合わせた割引やサービスが有名だ。auを契約している人であれば、電気料金と携帯料金の請求をひとつにまとめることができるので、支払いの手間や家計の管理がスッキリする。
これら4社の電気料金は、「基本料金」「電力量料金」「燃料費調整額」「再生可能エネルギー発電促進賦課金」で構成されている。「再生可能エネルギー発電促進賦課金」というのは、どの電力会社を選んでも同じ金額を負担することになる国の制度のため本記事からは割愛するが、残りの3つの要素が各社の電気料金を特徴づけている。
<月額基本料金の「安い順」比較>
最初に月額基本料金から見てみよう。
ここで比較対象の契約として、東京電力は「スタンダードS」、東京ガスは「基本プラン」、auでんきは「でんきMプラン」という一般家庭向けの主力プラン、CDエナジーは主力プランの「ベーシックでんきB」と一人暮らし向けの「シングルでんき」の2プランによって比較した。
・CDエナジー(シングル):(30A)785.72円(40A)1,080.96円(50A)1,376.20円
・CDエナジー(ベーシック):(30A)830.70円(40A)1,107.60円(50A)1,384.50円
・東京ガス:(30A)935.22円(40A)1,246.96円(50A)1,558.70円
・auでんき:(30A)935.24円(40A)1,246.99円(50A)1,558.74円
・東京電力:(30A)935.25円(40A)1,247.00円(50A)1,558.75円
月額基本料金は30A、40A、50Aの契約プランいずれも、CDエナジーの2プランが安価である。特にCDエナジー「シングルでんき」の基本料金は、独自の定額100円割引を含めたため圧倒的に安くなっている。
<電力量料金(1kWhあたり)の「安い順」比較>
では次に、1kWhあたり電力量料金、いわゆる「電気代」について比較する。
・CDエナジー(シングル):(~120kWh)30.00円(121~300kWh)36.60円(301kWh~)40.69円
・CDエナジー(ベーシック):(~120kWh)29.90円(121~300kWh)35.59円(301kWh~)36.50円
・東京ガス:(~120kWh)29.70円(121~300kWh)35.69円(301kWh~)39.50円
・東京電力:(~120kWh)29.80円(121~300kWh)36.40円(301kWh~)40.49円
・auでんき:(~120kWh)29.99円(121~300kWh)36.59円(301kWh~)40.68円
1kWhあたり電力量料金に関しては、120kWhまでは東京ガスが、121kWh以上だとCDエナジー(ベーシック)が特に安価である。逆にCDエナジー(シングル)は基本料金が圧倒的に安価だった半面、電力量料金はわずかに高く、あまり電気を使わなければ安価で、たくさん電気を使う家庭には向いておらず、一人暮らし向けとCDエナジーが謳う理由が分かる。
<燃料費調整額(1kWhあたり)の比較>
最後の燃料費調整額も、燃料費調整単価を電気の使用量に掛けて算出するのが一般的だ。また、その単価は毎月変動するため、以下では2025年3月度の1kWhあたりの燃料費調整単価(税込)を比較する。
なお、2025年3月は経済産業省が実施する「電気・ガス料金負担軽減支援事業」により、4社とも▲2.5円の値引きが適用されている。
・CDエナジー:▲8.83円
・東京ガス:▲8.83円
・東京電力:▲8.83円
・auでんき:▲7.62円
燃料費調整額はauでんきのみ高いが、残りの3社はいずれも変わらない結果となった。
つまり、これらの数値を見る限りは、CDエナジーの2プランが良いように思うが、東京ガスも電力量料金の120kWh未満の単価では安価であり、複雑に絡み合った料金計算式の前では、明確にどちらが確実に優位だとは筆者も言い切りにくい。
なお、一部の電力会社は燃料費調整額の代わりに市場連動調整額などを採用している場合があるので、ご注意いただきたい。
そこで次に、料金以外の面について、各社の比較をしてみたい。
<ポイントサービス>
公共料金のような固定費は、料金を下げるだけでなく、ポイント還元によっても、事実上の値下げを探すことができる。例えば基本料金がA社が1000円とB社が950円だとしても、A社に毎月のポイント還元が100円相当あれば、結果的にはA社の方が安くなるからだ。
さて、両社の電気料金に連動したポイント還元サービスを見てみよう。
・CDエナジー:「カテエネポイント」電気料金100円=1ポイントで、電気料金の支払いや他のポイントや商品券に交換可能。
・auでんき:毎月の電気料金が8,000円以下の場合は0.5%、8,000円以上の場合は1.0%に相当するPONTAポイントが還元される。
・東京電力:毎月管理ページにログインする事で「くらしTEPCOポイント」が50ポイント分貯まっていく。正直、忘れてしまうかもしれないし、忙しい現代人にはもはやストレスでしかないのではないだろうか。
・東京ガス:事実上なし(電気料金に限定したポイントはない。ガスと電気を申し込むことで割引などはあるが、独自ポイントを貯めても電気料金の支払いには使えない)。
世の中全般に言える事だが、各社さまざまに条件をつけてポイント還元率を低減できるようしているように感じる。auでんきは、日中に家にいないことが多い一人暮らし勢は0.5%還元となると認識をしておいた方がよさそうである。
一方で、CDエナジーでは、無条件に電気料金100円につき1ポイントが還元されるという割り切ったなかなかに魅力的なプログラムが提供されている。これは前述したシングルでんきの定額100円割引と重複適用されるため、より魅力的にうつる。
<プラスアルファのサービス>
調査をしていく中で非常にユニークな顧客還元のサービスを見つけたので紹介したい。新電力会社には短期的な費用の観点だけではない。さまざまな特典やサービスの提供を受けられる。
それは、CDエナジーの「最適プランの定期便」である。これは比較する他社にはないCDエナジーの完全な独自サービスである。
一般的に、電力会社では、一度契約したプランを長期間固定するケースが多い。携帯電話やネットの契約なども似ているが、最初に契約したサービスのまま、見直されることなく延々と契約されつづけ、実はそれが大きな収益源になっている、というパターンだ。
それに対し、CDエナジーの「最適プランの定期便」では、電気・ガスの過去1年間分の使用状況を分析し、最適なプランへと定期的に案内(年2回)するというなかなか画期的なサービスだ。これにより、契約者は手間なく、常にコストパフォーマンスの高いプランを利用できるというわけだ。
正直、電気料金なんて「タイパ」を考えると、検討する時間自体がもったいないと考える人も多いのではないだろうか?だとすると、この定期便サービスは、対象プランの契約を続ける限り、最適な料金プランを教えてくれるわけである。つまり、パートナーと同居を始めたり、家族が増えたりして電気の使用量が変われば、その生活環境にベストな料金にチューニングしてくれるだろう。
これまで、付随的なプログラムによる各社の比較を行ってみた。この部分に関しては、明らかにCDエナジーが頭一つどころか、周回以上の差を広げて圧勝しているように思う。
<一人ぐらしデビューに最適な電力会社はどこ?>
冒頭でも書いたが、ライフスタイルや地域、使い方などによって電気料金の良し悪しは大きく異なるので、最終的には「自分がどのような公共料金生活をしているのか?」を確認した上で、選択する必要がある。
それでも本誌では今回、社会人デビューを控えた若い皆さん(=生活資金に余裕がなく、できるだけ節約したい)がいかに固定費削減の選択ができるか、という点に着目し、まずは電気料金のコスパの比較を行った。
そこで今回導き出すことのできた「一番お得な電力会社」は、少なくとも今回比較した主要人気4社においては、圧倒的にCDエナジーが最有力候補であると判断できるだろう。シングルでんきとベーシックでんきBのどちらが良いかは電気の使用量によるとは思うが、ぜひ、参考にしてほしい。
今回は、料金や基本サービスといった、ごく一般的な基準で一人暮らしデビューをしようとする、それほど懐の温かくない読者を想定しているが、こういったことは物価高騰に苦しむすべての日本人に参考にしてほしいと思う。本誌でも引き続き取材や調査を進め、有用な情報提供をしていきたい。
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